- 著者
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齋須 直人
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-25
採用年度2年目は採用1年目から開始した帰一派旧教徒の思想家コンスタンチン・ゴールボフとドストエフスキーとの関係についての研究を継続した。成果は、2019年4月のロシア思想史研究会で報告し、ロシア思想史の専門家の参加者たちから有益なフィードバックを得た。また、それをもとにさらに研究を進め、11月にロシアのサンクトペテルブルグで行われたドストエフスキー学会「ドストエフスキーと世界文化」で発表した。これらをまとめ上げ、博士論文の最後の章とした。12月から3月にかけて博士課程入学時からの成果をロシア語でまとめ上げ、2014年11月から2017年10月まで留学していたゲルツェン名称ロシア国立教育大学博士課程ロシア文学科に、2020年3月に学位論文(タイトルは『1860年代末から1870年代初頭のドストエフスキーの作品における導き手像:ザドンスクのチーホン、コンスタンチン・ゴールボフ』)として提出した。学位論文のテーマと並行して、現在のロシアの学校教育科目である「文学」において、ドストエフスキーがどのように教えられているかについても研究を行った。今に至るまで「文学」の教科書の多くでソ連時代のイデオロギーに沿った歪められたドストエフスキー理解がそのまま残っていること、ドストエフスキーの宗教面についての説明が少ないことなどが指摘されているが、近年のロシアのキリスト教的テーマでのドストエフスキー研究の隆盛との乖離があり、興味深い現象となっている。この研究は6月に東京大学で行われた第10回スラブ・ユーラシア研究東アジア大会で、申請者が組織した二つの共同パネルのうちの一つで発表した。この成果は論文としてまとめ、ドストエフスキー研究の論集(現在、出版のための手続き中)に寄稿した。