著者
望月 哲男 沼野 充義 宇佐見 森吉 井桁 貞義 亀山 郁夫 貝澤 哉 浦 雅春
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

散文、詩、批評、演劇、美術、思想といった様々な分野における現代ロシア・ポストモダニズム作品を対象に、以下のような観点から分析・性格付けを行った。1)ポストモダニズムの思想や創作方法は、今日のロシア文芸界でどの程度優勢なものとなっているか。2)他地域のケースと比較して、ロシアのポストモダニズムにはどのような特徴があるか。3)現代ロシア文化は、革命前のロシア文化および革命後のソ連文化とどのような関係にあるか。4)ポストモダニズムはロシアの文化的自意識の表現にとってどのような役割を背負っているか。結論として、ロシア・ポストモダニズムと総称されている現象は、決して単なる欧米の文化潮流の模倣ではなく、ロシア・ソ連の文化的な過去に深く根ざしたものであることが確認された。またそれ故に、ポストモダニズムが単にソ連文化や共産主義文化への反動としてのみでなく、ロシア近代の様々な文化潮流を緩やかに総合する仲介者としての役割を果たしていることも認識された。本研究の一環として、北大スラブ研究センター国際シンポジウム『ロシア文化:新世紀の戸口に立って』(2000年7月)を行い、現代ロシア文化の特徴を多角的な観点から研究すると同時に、ロシアを含めた世界各国の学者・文化人による現代ロシア文化観を比較検討した。研究の中間成果は『現代ロシア文化』(望月他著、国書刊行会、2000)、『現代文芸研究のフロンティア(I)』(望月編、北大スラブ研究センター、2000)『現代文芸研究のフロンティア(II)』(望月編、北大スラブ研究センター、2001)、T.Mochizuki(ed.),Russian Culture on the Threshold of a New Century,Slavic Research Center,2001,『現代ロシア文学作品データベース』(望月編、北大スラブ研究センターホームページ)(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/literature/literature-list.html),『Modern Russian Writers』(T.Mochizuki,E.Vlasov,B.Lanin(eds)(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/Writer/windex-e.html)などに発表された。
著者
亀山 郁夫
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.30, pp.40-54, 2001 (Released:2010-05-31)
参考文献数
29

This paper aims to trace the descent of ‘enthusiasm’ in the twentieth century Russian cultural history as well as understand the Totalitarianism under the Stalinist authority and its consequences in the late twentieth century. In doing so, we started by categorizing the concept of ‘enthusiasm’ into the ‘earth-grounded type’ and the ‘authority-oriented type’.The mainstream symbolist movement in the early twentieth century Russian culture obtained an eschatological tendency under the influence of Sorov'yov's school. Later, Ivanov opened up a way to the Primitivist movement by recognizing the role of ‘symbol’ within the Dionysian integration. Such is an example of the ‘grounded’ type of enthusiasm.Nourishing on such enthusiasm, the Russian avant-garde art movement blossomed. After the Russian revolution, the Russian avant-garde art, through artist such as Mayakovsky and Meierhold, realised the enthusiasm in both directions. On the other hand, there were artists such as Eisenstein who attempted to integrate to the Stalinist authority by deploying an anthoropological imagination, even though tending towards the ‘earth-grounded’ enthusiasm.The era of the ‘Thaw’ was also the era in which the spirit of integration (sobornost') originated in the Russian Orthodox tradition flourished. But since Stalin's death the centripetal force of enthusiasm was lost. The process of anti-Stalinism failed to realise the regression towards world history, and caused the new era of closure called ‘the post-Utopean era’. The characteristic of ‘informal culture’ which existed between the ‘Thaw’ and the Breshnev era is understood as the movement attempting to overcome the Stalinist influence through intense sophistication of the concept of ‘distance’.Even though the Soviet socialist declined through the influence of high-tech revolution in the Western Europe, the recent Postmodernists devise Russian history with the concept of ‘emptiness (pustota) ’, identifying Russia as the state of simulation without reference. Such Postmodernists attempt to harmonize with the Totalitarianism, but at the same time seek for a way to overcome Stalinism as they skillfully attempt to secretly innovate the rigid dichotomous framework.
著者
亀山 郁夫 白井 史人 林 良児 沼野 充義 甲斐 清高 野谷 文昭 梅垣 昌子 藤井 省三 高橋 健一郎 齋須 直人 望月 哲男 番場 俊 越野 剛
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの文学のもつ世界的意義について、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンをキー概念としつつ、主に2つの観点から解明する。Ⅰ、アレクサンドル二世暗殺を頂点とする19世紀ロシアの社会と人間が陥った危機の諸相とドストエフスキー文学の関連性を、歴史、宗教、文学、人間の観点から明らかにし、Ⅱ、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンが、世界諸地域の文学及び表象文化(映画、演劇、美術ほか)にどう受け継がれ、再生産されたかを明らかにする。後者の研究においては、「世界のドストエフスキー表象」と題するデータベース化を目指している。
著者
亀山 郁夫
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、スターリン時代における検閲システムを、主として権力の側から考察するものである。研究のテーマそのものは、ソ連崩壊後、にわかに浮上してきたトピックで、ロシア国内および国外でも地道な研究が続けられている。それらの実績にかんがみ、この3年間にわたって、主として2004年に没後50年をむかえたセルゲイ・プロコフィエフ、2006年に生誕100年を迎えるドミートリー・ショスタコーヴィチとスターリン権力との相互関係について調べ、さらに私がいま試みているスターリン学(stalinology)の構築に向けて、次のような論文を発表した。なお、現在、私は、ここに掲げる論文とは別個に、本科研費の助成による成果として、『大検閲官スターリン-20世紀ロシアにおける文化と政治権力のカコフォニー』と題する著作を準備しており、2005年10月に小学館から刊行される予定である。1 プロコフィエフとスターリン権力を扱った論文では、約15年にわたった異国放浪の末に、1936年にソビエトへの帰還を決意した理由と動機を明らかにし、その後、約3年間において作曲されたソビエト礼賛ないしスターリン礼賛の音楽の政治的意味と、それに対する、実質的には当時のソビエト最高の検閲機関の対応を歴史的に意味づけ、そのなかで純粋に芸術的な営みとしてどう成り立っているかを分析した。2 ドミートリー・ショスタコーヴィチの1920年代の作品における音楽的実験が、スターリン体制の確立のもとでどのような変貌を強いられるかを考察した(ただしこの論文は未完である)。3 遺伝学者ルイセンコおよび言語学者マルの二人とスターリン権力との関係を扱った論文では、従来の彼らに対する評価をあらため、ロシア・アヴァンギャルド運動および詩学、世界観との観点から新たな照明を当てることによって、その現代的な意味を浮かびあがらせた。4 メイエルホリドとスターリン権力との関係を扱った論文では、これまであまり知られることのなかった最晩年の彼の伝記上の謎、とりわけその死の真相をめぐって、最新の資料を用いながら明らかにした。5 ボリス・パステルナークにおけるスターリン崇拝の現実と、彼の代表作『ドクトル・ジバゴ』の時代設定の問題の相関性について考察し、彼がスターリンへの傾斜を強める1929年以降の時代がこの小説の時代の枠組みには入ることが不可能だった理由を明らかにした。
著者
浅井 寿生 石田 聖子 磯村 昌彦 伊藤 達也 今泉 景子 大岩 昌子 小野 展克 亀山 郁夫 後藤 希望 佐藤 雄大 白井 史人 高橋 直子 新居 明子 沼野 充義 根無 一信 濱嶋 聡 林 良児 福田 眞人 堀部 純子 真崎 翔 ムーディ 美穂 室 淳子 安井 朱美 吉見 かおる Marceau Etienne HIRATA Eric Paccoud Jérôme CRANE Paul Allen KENNY Tom Annequin Laurent
出版者
名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター
雑誌
Artes MUNDI (ISSN:24321125)
巻号頁・発行日
no.6, pp.191-207, 2021-03-31

豊かさの追求 / 浅井寿生観るよろこびのために / 石田聖子『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 / 磯村昌彦ヴィム・ヴェンダース監督『パリ、テキサス』(一九八四年) / 伊藤達也二十年ぶりのタイタニック / 今泉景子「蝶の舌」に込められた想い / 大岩昌子逆行する時間が描く世界の不確かさと不安 / 小野展克ベルイマン『沈黙』をめぐるメモランダム / 亀山郁夫衝撃のラストシーン『レ・ミゼラブル』 / 後藤希望映画『あん』 / 佐藤雄大冬の神田川で / 白井史人『A Beautiful Mind』から学ぶこと / 高橋直子オオカミ少年の瞳 / 新居明子亡命ソ連人監督が描くビザールなアメリカ / 沼野充義人生を変えた我が師について ― 植村直己物語 / 根無一信「SALUTE」メキシコ五輪表彰台での差別抗議 / 濱嶋 聡映画ファンと言える日のために / 林 良児映画狂時代 / 福田眞人「世界の破滅まで百秒」の時代に考える名作 / 堀部純子人生の灯台となった映画 / 真崎 翔名も無きソ連の映画 / ムーディ 美穂ドラえもん世代 / 室 淳子『コースト・ガード』に見る境界線 / 安井朱美人間の心、神秘が宿るところ / 吉見かおるRelevant Now More Than Ever / Étienne MarceauGrowing Through Relationships / Eric HirataThe freedom everyone needs / Jérôme PaccoudA Movie for Teaching Language and Cultural Understanding: "Fried Green Tomatoes" / Paul Allen CraneStagecoach / Tom KennyHunger où l'art de déranger / Laurent Annequin
著者
望月 哲男 亀山 郁夫 松里 公孝 三谷 惠子 楯岡 求美 沼野 充義 貝澤 哉 杉浦 秀一 岩本 和久 鴻野 わか菜 宇山 智彦 前田 弘毅 中村 唯史 坂井 弘紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ロシア、中央アジア、コーカサス地域など旧ソ連圏スラブ・ユーラシアの文化的アイデンティティの問題を、東西文化の対話と対抗という位相で性格づけるため、フィールドワークと文献研究の手法を併用して研究を行った。その結果、この地域の文化意識のダイナミズム、帝国イメージやオリエンタリズム現象の独自性、複数の社会統合イデオロギー間の相互関係、国家の空間イメージの重要性、歴史伝統と現代の表現文化との複雑な関係などに関して、豊かな認識を得ることが出来た。