著者
福田 智子 穂満 建等 フクダ トモコ ホマン ケント Fukuda Tomoko Homan Kento
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.10-22, 2015-11

資料紹介同志社大学文化情報学部蔵無名歌集(仮称『いろは和歌集』)は、和歌を句頭の文字によって、いろは順に分類・配列した歌集である。本稿では、歌頭が「の」「く」「や」「ま」「け」「ふ」「こ」「え」「て」の歌、計180首について、『新編国歌大観』を対象に他出歌集を検した。その結果、『古今集』『新古今集』などの勅撰集歌だけでなく、『拾玉集』などの六家集(秋篠月清集・長秋詠藻・山家集・拾玉集・拾遺愚草・壬二抄)に採られている歌が多く見られ、また、『伊勢物語』『源氏物語』の物語和歌が採られているといった、前稿までと同様の傾向が看取された。出典未詳歌は6首ある。そのうち「け」の歌2首は連続しており、また、「え」「て」の歌はそれぞれ歌群末尾に配されている。なお、異文傍書の中には、出典と目される歌集において、当該歌の近くに配されている他の歌の句を、目移りにより誤って記したと推定される箇所がある。異文を記入する際に、出典歌集を参看していた可能性が指摘される。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.27-51, 2013-11

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した伝書である。安永二年(一七七三)の自叙をもつ。菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本は、元文二年(一七三七)頃の成立だが、桐壺香・夢浮橋香がない。そこで、箒木香・梅枝香・玉鬘香・若菜下香について、さらに両者を比較したところ、組香の方法は、蘭之園本に比べ、竹幽本の方が総じて複雑になっていることがわかった。また、物語の内容と合わない箇所が少なくない蘭之園本に対し、竹幽本は、物語に合わせて手直ししていることが認められる。すなわち、蘭之園本は、『源氏小鏡』(第一系統)を参照して作成されているようであるが、竹幽本は、『源氏小鏡』(第二系統)、あるいは『源氏物語』そのものに拠っていると考えられるのである。
著者
Morimoto Ryohei Ossaka Joyo Fukuda Tomoko
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.359-375, 1957-09-25

昭和24年12月26日午前8時18分と26分に於いて起きた地震にともなつて,栃木県上都賀郡今市町[現在今市市]を中心とする大約20km四方の地域に地変を生じたが,そのうちでも火山噴出物起源の洪積層分布地域に生じた地崩れと地辷りが,ことに著しかつた.[地震研究所彙報28号(昭和25年),379-386頁,同29号(昭和26年),349-358頁].この第3報では,その存在が地変を生じた素因の一つとなつた洪積世の火山噴出物の各堆積層-上より(O)表土層・(A)黄色浮石層(鹿沼土層)・(B)赤褐色浮石石(今市土層)・(C)上部ローム層・(D)白粘土層・(E)下部ローム層-の主体をなす火山琉璃の風化生成物である粘土の鉱物組成,化学成分などについて研究を行つた.各試料の微細な部分についてX線分析・示差熱分析・熱減量測定・化学分析を,また原土について粒度分析・比重・含水量・吸水率の測定などの結果を報告した[第I-VIII表].これによると上層の表土層・鹿沼土層・今市土層はまだ再結晶の進まないアロフェンによつて,上部ローム層・白粘土層・下部ローム層などの下部層は再結晶度の低い加水ハロイサイトによつて代表されているが,そのうちでも白粘土層は,とくに多量の加水ハロイサイトを含んでいると考えられる.なおこれらの火山噴出物起源堆積層は,原岩の構造をよく残しているが,火山玻璃の部分は化学的にはきわめて変化が進んでいる.すなわちSiO2はいちぢるしく減少し,これに引きかえてAl2O3の富む結果となり,また1,2の層ではCaOが,いくつかの層ではMgOがわづかにその一部を残して,大部分が失もれ,Na2O,K2Oはほとんど完全に溶脱していた.この結果,鉄の過剰な今市土層を除く他の各層のAl2O3+Fe2O3とSiO2との比はいずれも1:2となつている.とくに加水ハロイサイトを多量に含む白粘土層は,その含水率,吸水能ともに最大の値を示し,地変に際しその地辷り面となつた.