著者
大久保 英子 岩谷 和子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.40-49, 1965-01-30

1.体重,身長を昭和35年の厚生省値に基づいて,斉藤,船川の分類をすると,一般に「上」が多く,「下」が少なく,平均値でも上位にあり,殊に体重が著しかった.しかし,地域別に比べると,新市内が男児,女児ともに低位であった.2.生下時体重では未熟児9.2%,成熟児74.7%,過熟児1.4%であった.3.K. I.は船川値より新市内の4カ月以内に低位を示し,更に新市内の女児に低位の月令が多かった.栄養法別では優良児は人工栄養に,やせ,栄養失調症は母乳栄養に多い傾向があった.地域別にみると優良児は旧市内に,やせ,栄養失調症は新市内に多い傾向があり,そのうち,母乳栄養法での差は僅かであるが,混合栄養,人工栄養法においての優劣は著しかった.4.栄養法の割合いは,母乳栄養33.3%,混合栄養27.5%,人工栄養39.0%であって,地域別ではそれぞれ,旧市内が,33.1%,24.5%,42.45%であり,新市内では34.0%,36.1%,29.9%であった.5.離乳の開始は6カ月までに63.3%が開始しており,最も多いのは5カ月で,平均5カ月21日であった.栄養法別では混合栄養が最も早く次いで母乳栄養で,人工栄養が僅かに遅い傾向がみられた.なお10カ月以後に開始したものには旧市内1.3%,新市内2.6%あった.6.離乳の完了は12カ月〜16カ月のもので51.8%であり,人工栄養,旧市内に多く,8〜9カ月で完了しているものも旧市内に9例あった.7.歯牙の発生の最高月令は7カ月で,6カ月までに38%の乳児に生歯が認められた.なお,一年以後に萠出をしたものが母乳栄養児に1名あった.8.栄養法別の歯牙発生では6カ月までに萠出した乳児は母乳栄養32.1%,混合栄養33.4%,人工栄養45.7%であり,月令別の最高はそれぞれ母乳栄養と混合栄養7カ月,人工栄養6カ月で,人工栄養児に早く萠出する傾向があった.赤ちゃんコンテストには,比較的めぐまれた保育を受け,発育のよい乳児が参加することが多く,島根でも保育環境のよいと思われる集団において,旧市内と新市内の発育と栄養についての実態を把握することができた.その結果は前述の如く身体発育では身長よりも体重の優れた乳児が多く,栄養も良好で,前報における幼児の場合と反対の傾向を示し,乳児の保育栄養方法等にはかなりの努力が伺われ,殊に人工栄養児がよくなっているものの,地域的にはなお差が著しく,改善の強化が望まれる.この調査にあたり御指導頂きました烏大医学部小児科教室,木村隆夫博士,また資料の作成に御協力頂いた松江市公衆衛生課,岡坂あさの,加村〓子の両保健婦長並びに本学生活専攻尾添和子,黒崎悦子,山崎佑子の諸嬢に対し感謝いたします.
著者
岩井 冨美子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.54-61, 1968-03-01

V・ウルフの処女作「船出」には,彼女の心を示めるさまざまのテーマが散在している。死テーマは,その中でも最も明確な彼女の主題の一つである。これは,作品「船出」において,ウルフの死に関係があると考えられる重要な語句,文章をselectし,これらを大きく14の項目に分類したものである。ウルフの死を論ずるための材料の一部を得ようというのがこの研究の目的である。筆者の最初の意図は,もっと深層部における死テーマをさがしあてて分類するつもりであったが,作品を読んでいくうちに,このように,つたない分類に終ってしまった。これは,筆者の作品鑑賞力の乏しさに加えて,伝統的な形式によって書かれ,未だ本格的にその主題が滲透していないと考えられるこの作品自体にもその一因があるのではなかろうか。ともかく,かかる分類の最初の試みとして,きわめて不充分なものである。テキストは,Hogarth Press 1957年版を使用した。末尾の()内の数字は,上記テキストの頁数を表わす。代名詞のうち,特に必要と思われるものには,指示する対象物を代名詞の直後に指摘した。また,殆どのものを,筆者の独断により,一項目に属せしめたが,止むなく二項目にわたるものには,その旨明記した。テキスト中の引用詩の中には,ウルフの死テーマにきわめて関係深いと思われるものがあるが,これらについては分類を行なわなかった。
著者
阿部 邦子 宇津巻 幸子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.16-22, 1973-03-28

地直しは被服構成の中で無視することの出来ない重要な工程の一つである。能率的で効果の高い地直しの究明を目的としこの研究を行った。婦人用ジャケットの表地として多く用いられる10種の表地を試料とし,無処理布と縮絨店処理,霧吹処理,水浸6時間処理の地直しをした布がドライクリーニング,湿式洗濯,水浸30分操作により如何なる収縮性を現わすか,又この3つの処理が如何なる効果があるかを実験し,2,3の考察を得たので報告する。各地直し後のたての収縮率はフラノ,ギャバジンは,4.5%〜7%で最大,ツィード,ヘリンボーン,オットマン,ジャージが3%前後,アムンゼン2%前後,よこは殆どの物が1.5%以内である。タータンチェック,ハイニット,デニムは0.5%前後で,たてよこ同程度の収縮率である。湿式洗濯に対してはフラノ,ギャバジン,ヘリンボーン,ジャージは処理布でもたて1回目で平均2%〜5%の収縮率を示すので,その服は着用不能になると思われる。たゞしオットマン,アムゼンの処理布及びタータンチェック,ハイニット,デニムでは1〜2回の湿式洗濯ではたてでも収縮率1%以下に止るので,薄色の服でドライクーニングでは汚れが落ちにくい物等は湿式洗濯をしてもそう悪影響はないものと思われる。ドライクリーニングに対して処理布は5回目でも大部分の試料が1.2%以下であるが,無処理布は回を重ねるごとに上昇し2%〜3%にもなるのでやはり何れかの地直しをすることが必要である。同一試料においては3種の地直し後の収縮率とその後の洗濯操作による収縮率との関係は見られないが,各試料間の収縮率は,前者と後者は大体同傾向を示す。問題の多い湿式洗濯のたて地について3種の地直しを比べて見ると霧吹処理は比較的効果は少なく,平均して良いのは縮絨店処理である。今回の水浸処理は6時間にしたが,水縮30分浸せき実験の収縮進行状態を見ると殆どの試験布が1〜2回の操作で急激に収縮し,それ以後は横ばいか極くわずか上昇するだけなので水浸時間は2〜5時間で充分だと思われる。今後の課題として他の地直しの方法や,芯地,裏地の収縮性も合せて研究し,ワンピース,ジャケット等裏付の物を製作する場合の地直しと縫製方法の関係を究明してゆきたいと思っている。この研究にあたり文化女子大学成瀬信子先生の御親切な御指導御助言に深く感謝致します。
著者
野津 哲子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-13, 1977-03-31

7サイズの寸法と4形態の実験衣を設定して製作実験・着用実験を行った結果を要約すると次のようなことがいえる。(1)背中心における頸と衿の離れ寸法についていえることは衿つけぬいこみが浅い場合衿肩あきの形態(1/4,1/3,1/2,2/3)が背中心に近い場合頸についた衿となる。逆に衿肩あき止りからの距離が近くなると頸からやや離れた状態となる。衿つけぬいこみが深くなると衿肩あきの形態にはほとんど関係なく頸から離れた状態となる。たとえば衿つけぬいこみが最大の40mmの場合頸から41mmから44mm離れ最大の値を示している。これは背中央における衿つけ点の位置が低下するためと考えられる。縫製についてみると衿つけぬいこみが浅いと衿肩あき止りの縫いしろが直角に近くなる。また背幅にそって平らになり衿つけが非常に縫製しにくい。衿つけぬいこみが20mm以上になると衿肩あき止りの縫いしろが鈍角に近くなり頸にそって曲線となるため縫製しやすい。衿肩あきの形態については2/3・背ぬいにおける衿つけぬいこみは20mm以上が後衿つけ線に美しさがみられた。着用実験による衿元の美しさからすれば20mm以上の衿つけぬいこみの方が頸にそって良いと思われる。(2)背中央における衿の傾斜角度についてみると衿つけぬいこみが深くなるに従って背中央における衿の傾斜は大きい。すなわち衿つけ点が低下することによって,背のまるみに対する接線が垂直方向に移動するためと考えられる。(3)肩山における衿の上端から頸までの離れ寸法についてみると背中央における衿つけぬいこみが浅いと衿から頸までの距離は大きい。すなわち背中央における衿の角度が大きくなるため,衿の上端は後に引張られ,肩山のあたりで傾斜がゆるやかになり,頸に接近してきたものと思われる。背中央における衿つけぬいこみが深い場合は衿から頸までの距離は小さい。従って肩山の位置におけるボディの厚みと肩山の傾斜に起因するところが大きいものと思われる。(4)ボディの第7頸椎と後衿つけ点との離れ寸法についていえることは衿つけぬいこみが浅いと背中心における衿から頸までの距離は小さい。衿つけぬいこみが深くなると衿から頸までの距離は大きい。すなわち背中心の衿つけ位置が低下するためと思われる。縫製実験・着用実験の結果から衿つけぬいこみについては20mm,衿肩まわりのしるしつけ方については2/3を用いておけば、ほとんど支障がないものと思われる。
著者
長沢 嘉子 小松原 紀子 後藤 純子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.43-48, 1980-03-31

電子レンジを用いて加熱したじゃがいもの調理性や食味について調べ従来の加熱法と比較検討し,二次的調理操作とのつながりをもとに電子レンジの効果的使用法についても考察を加えた。(1)じゃがいもを電子レンジで加熱する場合の形状は加熱時間および食味に関係し,丸のままの加熱が食味良く,形状が細分化されるにつれ加熱時間は短縮されるが食味の低下をまねく。(2)電子レンジ加熱では水煮形式(B)において従来法(A)と同程度の粉ふき状態のものが得られた。しかし塩化ビニリデンフィルム被覆(C)は水分蒸発現象が表面を硬化させ粉ふき状態は著しく劣った。官能検査ではA-C, B-C間に有意差を認めA-B間には差は認められず,(C)は粉ふきいもの前処理としては不適であった。(3)マッシュ操作の難易度をその仕事量(W)で比較すると従来法(A)1に対し,電子レンジ加熱の(B)は1.72,(C)は2.97を要した。(C")の過剰加熱となるとマッシュ操作は更に困難となり残査量も多い。マッシュ時に大きな力が加わると細胞膜の破壊も進み粘性も増大する。(4)マッシュポテトの粘性を懸濁液の沈降体積から推測するとA<B<Cの順に高く,塩化ビニリデンフィルム被覆の電子レンジ加熱が最も高い粘性を示した。(5)マッシュポテトの官能検査では,水っぽさ,色の項目についてA-C, B-C間に有意差が認められ,いずれも水煮形式のものが低い評価となった。総合評価では塩化ビニリデンフィルムで被覆した電子レンジ加熱(C)が最も高く評価された。前記の粘性が食味の上に影響を与えていない結果となったが今回は漉されたままのマッシュポテトを試料としたためと考えられる。マッシュポテトの場合は更につぎの段階で混ぜる,練る,液状にのばす等の調理操作が加わることが多いが,加熱法別のマッシュポテトの調理性を知りこれらの調理条件にあった前処理加熱法を行うことが望まれる。