著者
伊藤 頼人
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
no.54, pp.167-189, 2017

Weapons described in the Mahabharata war are sword, spear, club, axe, and supernatural weapons of fantastic image, etc. However, bows and arrows are so often referred. Instead arrows have various kind of name, we don’t know they are different or same definitely. In this paper I focus on a kind of arrow named nārāca. In the Mahabharata arrows are mostly śara or bāṇa. These two words mean “reed” too and some scholars think that these arrows are made of reed. Some arrows in Sanskrit may have shape characteristic and we can distinguish them in form. Some dictionaries teach us that nārāca is an iron arrow. And I will argue following questions. Who use it? To whom it is used? Which kind of words; verbs, nouns and adjectives, are used with it?
著者
高橋 綾子
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
no.55, pp.21-30, 2019-03

本研究の目的は、以前妖怪が果たしていた役割を現代では何が代わりに担っているのかについて社会心理学的手法を用い探索的に検討することである。本論では妖怪を「未知なる奇怪な現象または異様な物体であり、人間に何らかの感情や行動を生じさせ、かつ、固有名詞を持ち、社会的役割を果たすもの」と定義し、社会や人間に対する妖怪の作用を「社会的役割」と呼ぶ。本研究では社会的役割に着目し、妖怪事典の内容分析による代表的な妖怪の類型化(高橋・桐生, 2018)の結果を用い、以前妖怪が果たしていた社会的役割を現代では何が代わりに担っているのかについての探索的な検討を試みた。妖怪の類型化では3つのクラスタが得られ、クラスタごとの特徴や各クラスタに属する妖怪の特性が大まかに把握できたと同時に、妖怪の特性と恐怖喚起、注意喚起といった社会的役割との関連が示唆された。現代における代替物においても同様に3クラスタが得られたが、分布には偏りが見られ、代替物が補完できていない機能がある可能性が示唆された。今後は本結果をもとに現代における社会的役割の置換対象、表出方法、過不足の有無などについてより詳細に検討する。
著者
伊野 連
出版者
東洋大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.117-132, 2017

本稿は脳死と心臓移植に関する輿論とマス・メディア、特に大新聞における科学ジャーナリズムとの相互影響関係について検証する。クリスチャン・バーナードの二度目の心臓移植、いわゆる「ブレイバーグ・移植」は成功であった。フィリップ・ブレイバーグは当時としては最長の594日間生存した。同時期の新聞はブレイバーグこそ深刻な心臓病に苦しむ患者たちの希望であり、将来の医療の星だと報じた。1982年9月、日本移植学会は脳死ドナーからの二つの腎臓移植が同年一月と四月におこなわれていたことを公表した。この声明は脳死移植への既成事実となった。本稿はこの二つの出来事をきわめて重要であるとみなしている。前者は心臓移植の停滞と再考のきっかけとなり、後者は脳死ドナー承認のきっかけとなったわけである。
著者
倉矢 匠
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.121-140, 2017

世間には,心理的な側面における男女の違いを強調した常套句(i.e., ジェンダー常套句)が数多く流布している。本研究の目的は,そのように男女を,心理的特徴の面ではっきりと異なったカテゴリーに分けて捉えることを是認する程度を調査することであった。特に,異性に対する2種類の性差別的態度(敵意的性差別と慈愛的性差別)によりそうした情報の受け入れやすさが予測されるか否かが検証された。女子学生174名を対象に調査を実施した結果,男性に対する慈愛的性差別態度が強い女子学生ほどジェンダー常套句の内容を是認する程度が高いことが示された。さらに,慈愛的差別が強い一方で同時に敵意的差別は弱いという場合には,常套句を是認する程度が高いことが示された。これとは対照的に,慈愛的差別が弱いと同時に敵意的差別も弱いという場合には,常套句を是認しにくいことも示唆された。最後に今後の課題として,社会の中で自らの性別を受容している程度が,男女の心理的違いを強調した情報の受容に影響を与える可能性について議論がなされた。Throughout the world, we find many gender clichés that exaggerate the psychological differences between men and women. In this study, a survey was conducted on the degree to which female students (N = 174) endorse gender clichés that reflect psychological gender dichotomization. In particular, the focus was whether two types of sexism (i.e., hostile sexism [HS] and benevolent sexism [BS]) predicted endorsement. The results showed that the higher they scored on BS toward men, the more they endorsed gender clichés. Moreover, among female students who scored high on BS, those who scored higher on HS endorsed gender clichés weakly compared to those who scored lower on HS. Also, high BS women who scored higher on gender system-justification beliefs endorsed gender clichés strongly. Finally, implications for identification effects with one's own gender or gender self-esteem on endorsement of gender dichotomization and gender cliché were discussed.