著者
神山 美奈子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.31-43, 2019-07-31

本論文は,世界女子キリスト教節制会(World Woman’s Christian Temperance Union)という同じ母体から設立された日本キリスト教婦人矯風会と大韓基督教女子節制会の敗戦後(1945年以降)におけるキリスト教宣教理念を考察する。両団体は朝鮮が日本によって植民地化されていた1939年に合併し敗戦と共に合併を解消させた背景があるが,その後の活動や宣教理念についてはこれまで比較研究されてこなかった。敗戦後に両団体がキリスト教宣教理念においてどのような差異をみせたかについて明らかにする。
著者
吉田 達矢
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.49-58, 2016-07-31

本稿は,20世紀前半における名古屋市および名古屋市の人々と中東各国・地域との関係について考察した。まず,当時の名古屋市の人々が中東出身者を見る機会は少なかった。また,名古屋市における中東に関する啓蒙活動は,大日本回教協会(昭和13年設立)の協力があって昭和15年以降,2回ほど行われたにすぎない。ただし,実業家たちは大正末頃から中東に関心を持ち始め,恐慌の一時期を除いて,太平洋戦争が始まる直前まで貿易先として中東には関心を持ち続けていた。その背景には,名古屋商工会議所と大日本回教協会の積極的な活動があった。ただし,実際には中東からの輸入が行われた時期は短く,いずれの国や地域からの輸入品の量もごく僅かであった。
著者
神山 美奈子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.55-67, 2018-07

1905年に滋賀県近江八幡市に来たW. M. ヴォーリズ(William Merrell Vories,一柳米来留)は,日本で建築事業と宣教事業に携わった。彼は,朝鮮半島にも146の建築作品を残していることが知られているが,それは日本が朝鮮半島を植民地支配している時期の作品であった。本論文は,ヴォーリズが植民地朝鮮をどのように認識していたのかについて残された史料と朝鮮人の弟子,姜沇との関係から究明する。さらに,ヴォーリズがみた植民地朝鮮理解の現代的意味を提示する。
著者
田中 まさ子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.13-32, 2017-01

保育とは,養護と教育の一体的な作用であるとされる。では,この考え方はどのように形成されてきたのか,これを明らかにするのが本研究の目的である。この目的のため,戦後の保育所形成期に着目し,当時の文献から論考した。論考の結果,保育所形成期において児童福祉法,保育要領,児童福祉施設設置基準及びその解説書等を通して,保育が保護と教育の一体的作用であるという認識が浸透していったことが分かった。それはまた,戦前から保育所に対して要望があった「教育的保護」の実現に向かう過程であった。その一方で,この時期に「養護」の語は,児童福祉法において特定の施設の機能を表す語として規定され,学校保健に由来する養護とは別の語概念が生じたことが分かった。
著者
大宮 有博
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-28, 2015-07-31

本論の目的は,コーネル・ウエストがレイシズムについてこれまで論じてきた内容を総括することである。本研究により明らかにするウエストのレイシズム論の要諦は,白人優越主義の萌芽に黒人に対する経済的搾取の意図はなかったということ,また被差別者が背負わされた「ニヒリズム」に向き合うことこそ,レイシズムの解決にあたって不可欠だということである。
著者
鈴木 啓司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.23-41, 2018-01-31

「モノそのもの」であることを表現する言語の構築を目指す新物質主義の思想にのっとり,数学概念のモノ化を目指す。数学は特定の指示対象をもたぬ極めて抽象的な言語であるだけに,逆に人間という「モノそのもの」の内奥から湧き出,それを映し出している言語であると考えるからだ。具体的な対象として,実数,虚数を合わせすべての数を表示する複素平面を取りあげる。認識論的存在論から話を起こし,実数を自己に,虚数を他者になぞらえて解釈する。当初は「あちら」と「こちら」という原始的世界他者意識が,のちに両者が交叉し,中間に「自己」意識を結ぶ。自己とは他者=世界の後付けで生まれたものである。通念とは逆行するこの虚数から実数へという流れを,複素平面のなかに読み込む。こうした観点から,オイラーの公式,さらにはリーマン予想にまで言及する。
著者
文 禎顥
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.145-171, 2019-01

本研究は,古代ギリシャ時代から始まり,修辞学的伝統と哲学的伝統という二つの型を有するリベラルアーツの歴史とその理念を紹介し,キリスト教におけるリベラルアーツの受容の一例,つまりリベラルアーツの一つである修辞学を聖書解釈の道具として用いた古代キリスト教教父アウグスティヌスにおけるリベラルアーツのキリスト教的受容について考察する。そしてこれらの議論に基づいてリベラルアーツ理念と向き合う際,一般教養科目の枠の中に位置づけられているキリスト教必修科目に求められる「アルス」(術)は何なのかについて論じることを目的とする。
著者
神山 美奈子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; HUMANITIES and NATURAL SCIENCES (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.55-67, 2018-07-31

1905年に滋賀県近江八幡市に来たW. M. ヴォーリズ(William Merrell Vories,一柳米来留)は,日本で建築事業と宣教事業に携わった。彼は,朝鮮半島にも146の建築作品を残していることが知られているが,それは日本が朝鮮半島を植民地支配している時期の作品であった。本論文は,ヴォーリズが植民地朝鮮をどのように認識していたのかについて残された史料と朝鮮人の弟子,姜沇との関係から究明する。さらに,ヴォーリズがみた植民地朝鮮理解の現代的意味を提示する。