著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2-16, 2018 (Released:2018-04-01)
参考文献数
77

北海道国有林における森林鉄道の導入は、大正10(1921)年に開通した温根湯森林鉄道と置戸森林鉄道に始まるが、これ以降、極めて短期間に主要な路線が開設された。その要因は、大正6(1917)年に生起した山林局国有林への移管問題を契機とした北海道国有林の積極経営への転換にある。従来、殖民政策への寄与を目的として森林の払い下げと殖民予算の確保のための年期特売による立木販売を進めてきた北海道国有林に対し、森林資源の疲弊を危惧する観点から起こった移管問題は、内務省側の抵抗により一旦は回避されたが、北海道国有林では官行斫伐事業の実施とその運材手段である森林鉄道の建設を急速に進めた。また、運材量に応じ高い輸送力を確保する必要性から高規格な路線が主体となった。本研究は北海道の森林鉄道の開設経緯とそれを可能とした経営方針の転換について明らかにしたものである。
著者
石崎 涼子
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.10-23, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
45

2015年7月、ドイツ連邦カルテル庁は、バーデン・ヴュルテンベルク州と私有林所有者、団体有林所有者による木材共同販売が同国の競争制限禁止法の違反行為であるとの決定を下した。この決定は、自由競争の促進を目的とする競争政策の観点から森林政策のあり方について問題提起を行ったものである。本稿では、この決定に至る議論の展開と連邦カルテル庁の見解を把握することにより、競争政策からみた森林政策の論点を明らかにし、考察を加えた。その結果、連邦カルテル庁の判断と見解は、森林を所有する政府が自己所有林以外の森林から生産される木材に関わる情報を得るような業務を行うことに対する懸念、政府による森林所有者支援策に対する民業圧迫の懸念、供給量の制御による価格への影響の懸念を含むものであることが明らかとなり、競争政策の観点から森林政策の必要性に関わる問いを投げかけるものであることが示唆された。
著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-16, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
58

我が国における動力車での牽引を前提とする森林鉄道の嚆矢は、明治42(1909)年に竣工した津軽森林鉄道である。その幹線の延長は67 kmに及び我が国の森林鉄道の中で最長を誇った。我が国最初で最大の森林鉄道が津軽半島に建設された背景は、山林局国有林において、首都圏をはじめとする大都市部で十分な市場評価を受けていなかった青森ヒバの需要拡大が課題とされていた中で、河川流送の脆弱性から国有林に賦存する膨大な青森ヒバの運材が不安定であった状況を解決することだった。このため、津軽、下北両半島から集荷可能な青森市に貯木場が建設され、まずは貯木場から至近であった津軽半島全体の青森ヒバ運材を目的とする津軽森林鉄道が建設された。本論は、津軽森林鉄道が我が国最初の森林鉄道となった背景について、山林局国有林における青森ヒバの置かれた位置及び森林鉄道建設前における青森ヒバの河川流送条件等から明らかにするものである。
著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-16, 2018-07-01

我が国における動力車での牽引を前提とする森林鉄道の嚆矢は、明治42(1909)年に竣工した津軽森林鉄道である。その幹線の延長は67 kmに及び我が国の森林鉄道の中で最長を誇った。我が国最初で最大の森林鉄道が津軽半島に建設された背景は、山林局国有林において、首都圏をはじめとする大都市部で十分な市場評価を受けていなかった青森ヒバの需要拡大が課題とされていた中で、河川流送の脆弱性から国有林に賦存する膨大な青森ヒバの運材が不安定であった状況を解決することだった。このため、津軽、下北両半島から集荷可能な青森市に貯木場が建設され、まずは貯木場から至近であった津軽半島全体の青森ヒバ運材を目的とする津軽森林鉄道が建設された。本論は、津軽森林鉄道が我が国最初の森林鉄道となった背景について、山林局国有林における青森ヒバの置かれた位置及び森林鉄道建設前における青森ヒバの河川流送条件等から明らかにするものである。