著者
柳田 直美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.145, pp.13-24, 2010

<p> 日本の多文化化が進む現在,多文化共生社会に向けて,非母語話者の日本語学習への支援は活発だが,身近な非母語話者との意思疎通に困難を抱える母語話者への対応は不十分である。そこで本稿では,母語話者と非母語話者が参加する接触場面において母語話者が情報を提供する場面に着目し,母語話者のコミュニケーション方略に接触経験が及ぼす影響を分析した。分析の結果,(1)接触経験の多い母語話者は,情報の切れ目が明確な文単位の発話を多く用いていること,(2)接触経験の多い母語話者は,理解チェックを用いて,非母語話者に対して躊躇なく理解確認をしていること,(3)接触経験が自己発話の修正の種類に及ぼす影響は少ないが,接触経験の多い母語話者は,非母語話者からの不理解表明がなくても自発的に発話修正を行っていること,の3点が明らかになった。この分析を通して,母語話者に対する非母語話者とのコミュニケーション支援のあり方を示した。</p>
著者
野々口 ちとせ
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.169-180, 2010

<p> 対話的問題提起学習では,言語文化が異なる者たちの間で「社会の共生を阻む自分たちの問題」の本質を見出し,共有することが目指される。本稿では,ある地域日本語教室で実施された日本人と外国人による対話活動で,外国人から提起された問題に対する参加者の認識が変化していく様相を記述し,相互学習としての対話の意義を示した。対話の成立には,他者の枠組みを否定しないで自己の枠組みを省察する姿勢と,他者の発言を支える協働的な言語使用で信頼を表出しながら,一時的な対峙が可能な環境を作り,当事者性を持って自分はどう思うかを率直に述べることが必要である。</p>
著者
清池 恵美子 西口 光一 松本 隆
出版者
日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.127-145, 1986-02

著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。
著者
大島 弥生
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.42-56, 2011

<p> 大規模テストにおける記述テストには,受験者選別の機能に加え,診断的評価の側面,正負の波及効果の側面がある。本稿では,アカデミック・ライティングと社会生活でのライティングについて,これらの側面からJSLの記述テストの新たな可能性を検討する。また,自動採点技術や日本語母語話者にとってのライティングの現状など,近年の技術発展や状況の変化を視野に入れつつ,記述テストの将来像について考察する。</p>