著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部教科教育研究紀要 (ISSN:09129006)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-16, 1998-12

長崎開港前の長崎周辺のありさまを,当地に伝えられた神功皇后伝説から考えると,当地は船住まい(-家船)の人々の活躍する世界であったことがわかる。彼らは潜水漁業を行う専業漁民であるが,同時に水軍や倭蓮とも関連があり,海運業・商業への転身もあったと思われる。南蛮貿易港には「貯」などの形で水上交通・荷役業を行う「キリシタン家船」の存在が想定され,長崎の開港は彼らの陸上がりの結果なのである。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部教科教育研究紀要 (ISSN:09129006)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-11, 1998-03

高谷好一は「汀線はコスモポリタン的世界で,内陸とは全く異質なコミュニタス的世界である」と述べている。しかし桜井由窮雄の批判するように,この「汀線」は「港市」に置き換えるべきであろう。こうして出来た言葉を導きの星として,この論考は進められた。赤道アフリカのカメルーンやスワヒリ世界はピジンやクレオールの世界である。これに対して,同じ赤道直下の東南アジア海域世界は,商業語であるマレー語の世界で,川喜田二郎の云う「重層化」の社会である。この違いは,それぞれの地域の港市成立の事情と密接な関わりを持ち,東南アジアの港市には外来民に対する原地民の強い主体性が認められるのである。また藤本強の云う「≪ポカシ≫の地帯」とは,海上交易路の結節点で港市の存在する海域世界であるとした。