著者
並木 育夫 目黒 義隆 青木 茂明 入江 一成 野村 知義 斉藤 一重
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.338-347, 1997-06-25
参考文献数
9
被引用文献数
21

NTTでは, 21世紀のサービスビジョンVI&P (Visual Intelligent and Personal communication service : 新高度情報通信サービス) を実現するため, 広範囲にわたるNTTの技術を結集して, ネットワークとアプリケーションの総合的な機能確認と技術評価を行うVI&P総合実験を研究所で展開している. 高臨場感マルチメディア通信会議システムは, VI&P総合実験の一環として開発したものであり, まるで同じ部屋にいて対話しているような高い臨場感を実現することがねらいである. 本システムでは, お互いの距離を意識することなく, 3地点間の自然で円滑な対話が可能な会議環境を実現する. このために, 110インチの2連超高精細大画面による等身大の自然な人物映像表示, 発話者の位置までわかる音声, 高品質なHDTV映像伝送, および一体感をかもし出す臨場感の高い会議環境の4要素をインテグレートした. この結果, 遠隔地にいる複数の人物が等身大で, あたかも同じテーブルにいるかのような高い臨場感の会議システムを実現することができた. 本システムによって, 人物の高精細かつ等身大表示, 映像と音像の一致, そして一体感のある会議環境が可能となり, 21世紀に向けた「場」の雰囲気の共有を尊重した新しいコンセプトの通信会議を提案した.
著者
大橋 正治 立田 光廣 白木 和之 田嶋 克介 辻川 恭三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.724-735, 1995-12-25
被引用文献数
8

近年,光ファイバアンプの出現により,波長1.5μm帯での長距離大容量伝送実験の報告が多くなされている.このような状況において,更に高度な伝送システムを実現するために,光ファイバの低損失化は従来にも増して重要な課題となってきている.光ファイバの損失を減少させるためには,レイリ-散乱損失,赤外吸収損失および構造不整損失の減少が必要である.レイリ-散乱および赤外吸収は,用いるドーパントによって決まる.一方,構造不整損失は,光ファイバの製造技術のみならず,コアおよびクラッドの粘度特性の影響も受ける.構造不整損失を低減する手段として,コアとクラッド両者の粘度を整合させることが効果的である.しかしながら,これまで粘度整合設計法に関しては明らかにされていない.本論文においては,まず光ファイバ断面内の粘度整合設計法について述べる.つぎに,GeO_2,F,GeO_2とFを添加した石英ガラスの粘度特性およびレイリ-散乱特性を実験的に明らかにする.更に,本設計法を用いて設計,作製した粘度整合光ファイバの諸特性について述べ,その効果を明らかにする.
著者
小野里 好邦 斉藤 美貴 照屋 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.438-443, 1995-10-25

ディジタル衛星通信時代における多元接続方式では,各ユーザのもつ多元性と衛星通信路全体としての統合を調和的に実現することが要求される.スロット付アロハ方式は基本的なランダムアクセス方式であり,時間軸をスロット化し,スロットに従って各地球局はランダムにパケットを送出する.本論文では,まずスロット付アロハ方式の安定条件より,その利用限界を示す.これは,ランダムアクセス方式の基本的な形態における利用可能範囲を与えている.つぎに,ユーザの多様な要求に適合した多元接続が可能なインスタンス競合割当て方式について概説する.これは,ユーザの多様な要求に応えながら同時に衛星通信路としての基本的な要求も満たすことができる方式である.
著者
山崎 恭 小松 尚久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-1, 通信1-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.373-380, 1996-05-25
参考文献数
7
被引用文献数
14

日常的なコミュニケーション手段の要素となる筆跡,音声,顔といった個人の身体的特性に着目し,それらを用いて本人の確認を行う個人認証システムの一構成法を提案する.提案する個人認証システムでは, これまで認証時に必要とされてきた利用者のIDや個人の特徴を記録したICカードを必要とせず,利用者が提示する本人の身体的特性のみで本人確認を行うことが可能であり,従来手法に比べてよりユーザフレンドリなヒューマンインタフェースを提供できる点に特徴がある. また,認証システムの中核をなす個人性の抽出手法に関しては,個人の特徴を反映するパラメータを複数のカテゴリーに分類し,個人の特徴の現れ方に応じてパラメータに重み付けを施す手法を提案しており, これにより身体的特性を多面的にとらえることの可能な信頼性の高い個人認証システムの実現を図っている.更に本論文では,提案する個人認証システムの適用例として,身体的特性の一つである筆跡情報に着目した場合について言及し,筆跡情報からの個人性の抽出手法について述べると共に,実際の筆記データを用いたシミュレーション実験により,提案手法の信頼性を評価した結果について報告する.
著者
小川 耕司 中川 健治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.64-73, 1997-02-25
被引用文献数
11

ATM網では10^<-12>オーダのセル廃棄率の特性を知る必要がある. この特性を一般的なモンテカルロ(MC: Monte Carlo)シミュレーションで得るには膨大な時間を必要とする. インポータンスサンプリング(IS: Importance Sampling)法はMC法の高速化に有効である. ISでは真の分布を変化させたシミュレーション分布でシミュレーションを行う. ISで高速化を図るためにIS推定値の分散が最小となる最適シミュレーション分布を決定することが重要である. ATM網のキューイングにおいて, 定常状態のキュー長Qがある値qを超える確率をP[Q>q]とする. 本論文では, ISの最適シミュレーション分布を用いて高速に10^<-12>オーダのP[Q>q]の推定値を得ることを目的とする. 最適シミュレーション分布を決定する従来の方法では決定に相当の時間を必要とする, 等の問題がある. 本論文では, これらの問題を克服して, マルコフ連鎖の性質とLarge Deviation Theoryを利用して理論的に最適なシミュレーション分布を導出した. そして実際に導出した最適シミュレーション分布でISシミュレーションを行った. その結果, M/D/1, 2状態MMPP/D/1モデルにおいて10^<-12>オーダのP[Q>q]の推定値を高速に得ることを可能にした.
著者
栗田 孝昭 井合 知 北脇 信彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.331-339, 1993-04-25
参考文献数
8
被引用文献数
41

テレビ電話やテレビ会議などのオーディオビジュアル通信を経済的,効率的に提供するため,信号の高能率符号化や通信衛星,ATMなどの技術の通信網への導入が検討されている.これらの技術は信号の伝搬遅延時間を増加させるため,通信品質を劣化させる可能性がある.伝搬遅延が通信品質に及ぼす影響は電話による音声通信において多数検討されているが,オーディオビジュアル通信における検討例は少なく,音声に映像が加わったことによる遅延品質への影響は十分に把握されていない.本論文ではオーディオビジュアル通信における遅延品質規定に資するため,音声通信とオーディオビジュアル通信における遅延品質を主観評価試験により測定し,両通信の品質を比較することにより映像の有無が遅延品質へ及ぼす影響を検討した.その結果,音声と映像の遅延時間が等しい通話では,映像の有無による遅延品質への影響は認められず,遅延品質の支配的な要因は音声の遅延時間であることが明らかになった.また,音声と映像の遅延時間が異なる通話における許容遅延時間を検討した結果,音声の許容遅延時間は音声と映像の遅延時間が等しい通話の許容遅延時間に等しく,かつ音声と映像の遅延差は音声と映像のずれの検知限まで許容されることを明らかにした.
著者
加藤 正美 中村 耕太郎 田坂 修二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.709-719, 1998-11-25
被引用文献数
7

本論文では, 蓄積されたビデオと音声をインターネットプロトコルを適用してPHSで伝送する場合を考える.PHSによるデータ通信では, データリンクレベルのプロトコルとしてPIAFSが適用され, インターネットアクセス時には, トランスポートプロトコルとしてTCPやUDPを利用できる.このような環境下で複数の連続メディアを伝送すると, 再送による遅延の発生がメディア同期を乱す.しかし, PHSによるインターネットアクセスに関するこれまでの研究では, メディア同期性能の定量的な評価はなされていない.そこで, 筆者らは, モバイル端末とダイアルアップルータ間にPIAFSを, モバイル端末とインターネット上のメディアサーバ間にUDPを適用し, モバイル端末において, 受信したビデオと音声を同期・出力する実験システムを構築した.特に, メディア同期制御方式として, 筆者らの既提案のスライド制御方式を一部拡張して実装し, メディア同期性能の評価実験を行った.同期の平均2乗誤差等のシステム性能の測定結果により, その有効性を示す.