著者
田中 一郎 貴戸 武司
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.368-369, 2008-07-25

大豆は縄文時代の遺跡の調査からすでに食品として利用されていたことが分かっている.大豆がどのように調理されていたか知る由もないが,興味のあるところである.想像するに当時でもすでに大豆は栄養価が高いことを評価していたかもしれない.大豆は畑の肉とも言われておりバランスの良い食品である.帯広畜産大学地域共同研究センターと産業クラスターを中心にして,豆腐を利用した新製品を研究開発したのでこの内容を紹介する.
著者
植田 和光
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.473-475, 2008-10-25

動物はさまざまな食べ物を口から摂取し,消化後,必要な栄養素を小腸から吸収して生きている.単糖やアミノ酸など水溶性化合物は脂質二重層を通過できないため,それらを特異的に通過させる膜タンパク質であるトランスポーターを小腸上皮に発現させ体内に吸収している.一方,食物中に含まれるさまざまな脂溶性低分子化合物は自由に脂質二重層を通過し,体内に吸収される.問題は,それらの脂溶性低分子化合物の中に多くの有害物質が含まれていることである.それゆえ,我々の体は有害なものを何らかの方法で見分けて排出する必要が生じる.たとえば,コレステロールと植物ステロールであるシトステロールとの構造の違いはエチル基ひとつだが,シトステロールは我々の体にとって有害である.我々の体はコレステロールとシトステロールを識別しており,食物中のコレステロールは50-60%が小腸上皮から吸収されるのに対して,シトステロールは排出系が働いた結果5%以下しか吸収されない.最近,ABCタンパク質の多くのメンバーが体内での脂質,脂溶性物質の移動を担っていることが明らかになってきた.上記のシトステロール排出はABCG5/ABCG8が担っている.また本稿で述べるように,ABCA1とABCG1はコレステロールを移動させることによって体内のコレステロール恒常性に重要な役割を果たしている.ABCタンパク質の異常は高脂血症,動脈硬化,糖尿病,老人性の失明,新生児呼吸不全,皮膚疾患など多くの疾病と結びついており,ABCタンパク質の発現や機能を調節することができれば,多くの疾病の予防や治療に役立つことが期待される.
著者
松尾 達博 路 暢
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.401-403, 2011-07-25

D-プシコースはD-フルクトースのC-3エピマーであり,自然界に非常に僅かしか存在しない希少糖の一つである.これまでに動物実験やヒト経口糖負荷試験において,D-プシコースの食後血糖値上昇抑制作用が報告されている.本研究では,日常生活条件下におけるD-プシコースの食後血糖値上昇抑制作用について,健康な成人男性15名および成人女性29名を対象として検討した.実験食として予め各被験者に日常的な昼食(男性:636kcal,炭水化物量87.6g,女性:513kcal,炭水化物量18.9g)を設定させた.実験当日,各被験者に実験食とともにD-プシコース6gあるいはD-フルクトース6gを市販無糖紅茶に添加した飲料を摂取させた.摂取前および摂取開始後30,60,90,120分に小型血糖測定器で血糖値を測定した.全体および男女別のいずれの場合でも,被験者の食後血糖値はD-フルクトース飲料を摂取した場合に比べて,D-プシコース飲料を摂取した場合で有意に低値であった.日常的な食事とともにD-プシコース飲料を摂取した場合でも食後血糖値上昇抑制効果が確認されたことから,D-プシコースが2型糖尿病や肥満の予防・解消に有効な機能性食材である可能性が示唆された.
著者
新家 一男
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.453-454, 2008-09-25

就職氷河期が終了し,企業での雇用が広がっています.ポスドク過剰といわれる現状と相まって,現在大学に在籍している学生たちは,進学あるいは博士研究員となるか,それとも企業への就職かという人生の岐路において,おそらく大きく悩んでいることと思います.私は大学の助手(現在の助教)を離れ,現在,基礎研究とも言えるアカデミック研究と,応用研究である企業研究との,ちょうど境界線上にいる立場です.現在推進中の創薬を目指したプロジェクトでは,多くのアカデミック機関および企業の研究者と共同研究を行っています.創薬リード化合物探索研究者としての立場から,本研究を通じて感じているアカデミック機関と企業における研究の相違などについて,現在若手中堅として,企業で活躍している研究者からいただいた意見も織り込ませながら,私見を述べさせていただきます.是非,これから進路を決める学生をはじめとする若手研究者の次のステップアップの参考にしていただければ幸いです.
著者
福田 央 日吉 智 砂川 英之 田中 健太郎 藤田 仁 山根 雄一 若林 三郎
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.299-302, 2001-08-25
被引用文献数
3

清酒もろみの原料利用率の向上を目的とし, セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素といった, いわゆる植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみの並行複発酵に及ぼす影響を検討した.セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素を有する市販酵素剤の添加により, 蒸米の溶解およびアルコール発酵は顕著に促進され, またアルコール収得量も増加し, 原料利用率の向上が得られた.さらに, 麹菌を小麦フスマを基質とした液体振盪培養に供して得られた培養上清液よりアミラーゼ・プロテアーゼを除いた粗酵素液を調製し, もろみ発酵試験に供した.この結果, もろみ発酵・原料利用率ともに顕著に向上し, 酵素剤添加区の最高値に匹敵する結果を得た.調製した粗酵素液は著量のセルロース, キシラン, およびペクチン溶解活性を有することから, これらの植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみでの蒸米の溶解・糖化に対する促進効果を有することが強く示唆された.