著者
高田 純
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.53-60, 2009

本研究の目的は,特別支援教育開始後の小学校教師のバーンアウト傾向の実態を質問紙調査で明らかにし,それに関連する心理学的要因を検討することである。小学校の通常学級を担任する206名の教師に対し,次の項目についての調査が実施された。調査内容は,バーンアウト傾向尺度,職場環境ストレッサー尺度,特別支援教育負担感尺度,自己効力感尺度,障害のある児童(以下,障害児)の有無,基本的属性(性別,教職経験年数)からなる。分析の結果,(a)障害児を担任しているかどうか(以下,障害児の有無)によって,教師のバーンアウト傾向得点に差は認められなかったが,障害児の担任教師(以下,有群)が担任していない教師(以下,無群)よりも「孤立性」が低いことがわかった。(b)性別と障害児の有無によって検討したところ,「生徒指導」において,男性有群が男性無群よりも高いことがわかった。(c)教職経験年数と障害児の有無によって検討したところ,「管理職との葛藤」において,中堅有群が中堅無群よりも低いことがわかり,「生徒指導」において,中堅有群が中堅無群よりも高いことがわかった。(d)小学校教師のバーンアウト傾向に至るモデルを共分散構造分析によって検討したところ,職場環境ストレッサーから直接バーンアウト傾向に至る有意なパス,職場環境ストレッサーから特別支援教育負担感を経由してバーンアウト傾向に至る有意なパスが認められ,職場環境へのネガティブな認知が,特別支援教育への不安や負担に影響している可能性が示唆された。
著者
永井 智 桑原 千明
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.58-67, 2017

<p>【問題と目的】ストレスや悩みなどに適切に対処するうえで,援助要請は重要な対処方略の1つである。先行研究では様々な要因が援助要請に影響することが明らかになっているが,パーソナリティ要因と援助要請との関連はほとんど検討されていない。そこで本研究では,成人の愛着が友人に対する援助要請意図に与える影響を検討した。</p><p>【方法】455名の大学生が,援助要請意図,愛着における見捨てられ不安と親密性の回避,悩みの経験,抑うつ,友人サポートを測定する質問紙に回答した。</p><p>【結果】共分散構造分析の結果,見捨てられ不安が,援助要請意図に対して有意な直接効果を示さなかったのに対し,親密性の回避は援助要請意図に対して負の影響を示した。また援助要請意図に対し,見捨てられ不安からは,悩みの経験を媒介した正の間接効果が,親密性の回避からは友人サポートを媒介とした負の間接効果が見られた。</p><p>【考察】愛着を用いて援助要請を説明する場合,説明力は先行研究と比べても高くなっていた。そのため,個人の援助要請を理解する上で愛着に着目することの重要性が示された。</p>
著者
吉川 修司
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.40-47, 2016

<p>【問題と目的】精神分析を教育に応用する試みは,エビデンスベースドな風潮の中でほとんど顧みられてこなかった。しかし,近年英国を中心として,教育における精神力動的な見方や,関係性を重視したアプローチが再び注目されるようになってきている。そこで本稿では,精神分析が教育に応用されてきた歴史を振り返ったうえで,クライン(Klein, M.)の「投影同一視(projective identification)」の概念を援用しながら実際の事例を考察し,教師が精神分析的な視点を持つことの可能性について論じた。その結果,精神分析の概念は,事例で起きている現象を理解するのに有効であると考えられた。今後,実際の指導場面で教師が行う生徒理解に,精神分析学をはじめとする深層的な概念や理論を援用する研究が進められることで,より多面的な理解が可能になると思われ,生徒支援の新たな視座が開ける可能性が示唆された。</p>
著者
堀 匡 小林 丈真
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-48, 2010-10-01
被引用文献数
1

本研究は,大学生の愛着スタイルとソーシャルスキル,友人サポート,精神的健康状態との関連について検討することを目的とした。大学生を対象に質問紙調査を実施し,回答に欠損のない650名(男性264名,女性386名)を分析対象とした。分析は,まず,愛着スタイル尺度に関してクラスター分析を行った。その結果,安定群,アンビバレント群,回避群という3つのクラスターが抽出された。その後,各クラスターを独立変数ソーシャルスキル,友人サポート,精神的不健康度を従属変数とする一元配置の分散分析を行った。分散分析の結果, 1)アンビバレント群は,関係開始,主張性,感情統制,関係維持スキル得点が安定群,回避群に比べて有意に低く,解読,記号化スキル得点は安定群に比べて有意に低いこと, 2)回避群は,関係開始,解読,関係維持,記号化スキル得点が安定群に比べて有意に低いこと, 3)回避群は友人サポート得点が,安定群,アンビバレント群に比べて有意に低いこと, 4)アンビバレント群は,安定群,回避群に比べて精神的不健康度が有意に高いことが明らかとなった。以上の結果から,1)アンビバレント群では,主張性,感情統制,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが,2)回避群では,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが心理・社会的適応状態の改善に有効であることが示唆された。
著者
齋藤 暢一朗 福原 俊太郎 川西 智也 細川 直人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.51-58, 2009-09-30

本研究では小学校スクールカウンセラーが実践上感じる困難感とその対処様式から,小学校スクールカウンセラーの課題と可能性について質的方法を用いて検討した。調査の結果,現場に何らかの問題が生じていても,スクールカウンセラーとして期待される役割をスムーズには発揮されない場合があり,様々な関係性の中で実践することの困難状況が浮かび上がった。こうしたスクールカウンセラーが遭遇する多重関係を筆者らは階層的な次元性を想定し,一次関係と二次関係という概念を仮定して検討を行った。その結果,小学校スクールカウンセラーは周囲と非相談的な「一次関係」を基盤として,「二次関係」となる相談関係を周囲と構築することの重要性が示唆された。また,校内外との連携においても「一次関係」の基盤が重要になってくるなど,関係の多重性と階層性が検討され,スクールカウンセラーの実践としての特徴と可能性が考えられた。
著者
岡田 一秀
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.59-62, 2010-10-01
被引用文献数
1