著者
高田 純 田中 憲一
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前歯からのベータ線計数による骨格のストロンチウムを中心とした、内部被曝線量のその場評価の研究を行った。本研究は、代表者のこれまでの海外核ハザード地域での調査から開発した方法にもとづいている。3年間の実施期間では、核爆発災害のあった楼蘭遺跡周辺のウイグル地域からの在日外国人、韓国人留学生による、日本人の前歯ベータ線計測を行い、結果を、その場で、被験者に説明した。今回の結果は、全員が、検出限界以下のレベルであった。放射線被曝の線量と健康影響を、一般人に理解されやすいように、説明資料を3種作成した。さらに、「ソ連の核兵器開発に学ぶ射線防護」の図書を作成し、刊行した。これらの資料を活用し、国内外でセミナーを行った。2011年3月に福島で発生した核放射線災害に対して、内部被曝その場調査が、実施された。この調査は、福島県民の低線量を効率よく明らかにし、直ぐに、図書「福島嘘と真実」を出版することができた。
著者
高田 純 森 祐二 遠藤 暁 星 正治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、ポータブルスペクトロメータを用いて体内放射能Cs-137および内部被曝線量を迅速にその場評価する方法を開発することを目的とする。このポータブルホールボディーカウンターの開発により、世界のいかなる地域の緊急時対応や、装置の無い地域でも人体放射能汚染の迅速な調査が可能になる。この試みはこれまでになされていない方法であり、土壌、食品そして人体放射能汚染の食物連鎖の調査をこのひとつの検出器で行える特徴がある。直径76.2mm長さ76.2mmのNaI(T1)シンチレーター検出器を製作し、小型マルチチャンネルアナライザー、ノート型コンピューターからなるポータブルホールボディーカウンターの開発に取り組んだ。この検出器を、放射線医学総合研究所のCs-137人体ファントムおよびI-131模擬甲状腺ファントムを利用して、校正した。国内機関におけるCs-137全身量測定の相互比較の結果、バイアスは10%以内と良好であった。ビキニ水爆により汚染したロンゲラップ島の再建工事に従事する労働者、チェルノブイリ原発事故で汚染したベラルーシ・ホイニキライオンの甲状腺ガンになった住民、ロシア・チェリャビンスクの原爆プルトニウム製造施設マヤーク周辺核汚染地に暮らす住民等の体内放射能測定を実施し、本測定システムの試験を行なった。これらにより汚染地のバックグラウンドスペクトルの差し引きなど重要な方法を確立できた。地表、食品などの環境核汚染密度も、本器で測定でき迅速にその場解析ができることを実証した。これらにより、汚染地に暮らす住民へ結果を効果的に知らせることも可能となり、当初の目的を達成できた。
著者
星 正治 山本 政儀 遠藤 暁 高田 純 吉川 勲
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

セミパラチンスク核実験場近郊住民の被曝の影響調査に関して、文部科学省の科学研究費補助金で平成7年度より継続した研究を行ってきた。本研究は平成13年度と14年度にわたって行われた研究である。この研究は平成6年に原医研が改組されその際に研究テーマの一環として組み込まれ、その後平成14年度の改組においても引き続き推進することが認められた。セミパラチンスクでの被曝の特徴は、1.外部と内部被曝をほぼ半分ずつ含むこと、2.線量的にドロン村で1Gyと大きいこと、それから3.数週間から数ヶ月の低線量率被曝であることである。今回の調査では、従来通り、プルトニウム、セシウムなどの土壌汚染の測定、人体の骨や臓器の汚染、人の歯を使った外部被曝線量評価、煉瓦を使った外部被曝線量評価のうち相互比較を進めるための準備を進めてきた。これらから、たとえばドロン村では1Gy相当の被曝があったことを証明した。また人体影響の調査も進め、甲状腺の検診、血液中の甲状腺ホルモンの測定、血液の染色体異常の検出、個人被曝線量の評価のための準備なども進めた。甲状腺の検診では放射線の感受性があるとされている結節を多く検診し、リンパ球については小核と染色体異常を観察している。また平成14年9月にはセミパラチンスクで開催された放射線量評価の国際会議を開催したことが特筆される。主催はセミパラチンスクの放射線医学環境研究所と医学アカデミーであり、ドイツ、ロシア、イギリス、フィンランド、アメリカ、インドなどの代表が参加した。広島大学は会議を主導し、従来の被曝線量評価があまりにも違いが大きいのでこれを国際的に解決する目標を提案し承認された。放射線被曝の線量評価は疫学調査と合わせて低線量率被曝のリスクを求めることにある。したがってこの直接的にリスクに影響する。
著者
中岡 千幸 兒玉 憲一 高田 純
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.11, pp.215-224, 2011

本研究の目的は,援助要請不安,援助要請期待,悩みの程度および援助要請意図の関連を共分散構造分析を用いて,定量的・構造的に明らかにすることであった。悩みの存在が,援助要請不安および援助要請期待に影響を及ぼし,さらに,その2変数が援助要請意図に影響を及ぼすと仮定するモデルを構成し,共分散構造分析による解析を行った。その結果,援助要請不安と援助要請意図との間に直接の関連は見られず,悩みの存在が,援助要請意図に影響を及ぼしていること,悩みの存在が,援助要請期待を誘発し,援助要請意図に影響を及ぼしていること,援助要請不安は,援助要請期待を介して,援助要請意図に影響を及ぼしていることが示唆された。これらの結果から,援助要請期待を高める心理教育が,サービスギャップ克服のために有効であることが示された。
著者
高田 純
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.27, pp.149-159, 1977-05-01 (Released:2009-07-23)

ドイツ観念論倫理学の基本性格は、経験的なものから純化されたアプリオリな理性意志=自由意志をその原理とする点にあるといえよう。カントは、このような理性意志にこそ、万人を結合する道徳法則の根拠、万人の自由な倫理的共同存在にとっての根本原理が求められると考えた。しかし、倫理的共同存在の実現の問題が具体的に問われるためには、カントにおいて捨象されるのに急であった意志主体(人格)相互のあいだの経験的諸規定があらためてとりあげられ、理性意志がどのようにしてこれらをつうじて内在的かつ具体的に確立されるかが把握しかえされなければならないであろう。そしてまた、このような過程をへることによって、理性意志の原理は、経験的なものを外的に規定する形式的原理であることをこえて、経験的なもののなかで作用する生きた内在的形式、活動原理にまで高められることになるであろう。フィヒテを経てヘーゲルに到るドイッ観念論倫理学の歩みは、これらの問題の自覚的追求の過程でもあった。この過程においては、意志相互の具体的な関係と働きかけ(交通)およびその現実的な場としての社会のなかでの意志の理性的形成(理性意志の社会的、間主観的基礎づけ)の問題が論究されるとともに、逆にまた、現実社会がこのような理性意志の実現として理性化、倫理化 (社会の理性的基礎づけ) される方向へと進んでいく。本稿では、ドイツ観念論におけるこのような推移を、とくに、そのさいの考察の結節点としての位置にあると思われる「相互承認Gegenseitiges Anerkennen」概念に着目しつつ、またこの概念を自覚的にとりあげた初期フィヒテとヘーゲルを重点に、概観してみたいと思う。
著者
源 宣之 湯城 正恵 杉山 誠 金城 俊夫 高田 純一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.497-501, 1988-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

DNAおよびRNA型動物ウィルスに対するグルタールアルデヒド (GA) の不活化効果を塩素剤およびヨウ素剤での成績と比較検討した. GAのロタウイルスに対する不活化効果は感作温度の上昇によって強まったが, 22℃と37℃との間では大きな差を認めなかった. また, その効果は蛋白質の存在によって強い影響を受けなかった. GAは用いたすべてのウィルスに対して塩素剤やヨウ素剤と同等またはそれ以上の効果を示し, なかでもロタウイルスを他の2剤より速やかに不活化した. また, 希釈したGAの不活化能は室温解放放置しても75日間にわたり維持された.
著者
高田 純
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.53-60, 2009

本研究の目的は,特別支援教育開始後の小学校教師のバーンアウト傾向の実態を質問紙調査で明らかにし,それに関連する心理学的要因を検討することである。小学校の通常学級を担任する206名の教師に対し,次の項目についての調査が実施された。調査内容は,バーンアウト傾向尺度,職場環境ストレッサー尺度,特別支援教育負担感尺度,自己効力感尺度,障害のある児童(以下,障害児)の有無,基本的属性(性別,教職経験年数)からなる。分析の結果,(a)障害児を担任しているかどうか(以下,障害児の有無)によって,教師のバーンアウト傾向得点に差は認められなかったが,障害児の担任教師(以下,有群)が担任していない教師(以下,無群)よりも「孤立性」が低いことがわかった。(b)性別と障害児の有無によって検討したところ,「生徒指導」において,男性有群が男性無群よりも高いことがわかった。(c)教職経験年数と障害児の有無によって検討したところ,「管理職との葛藤」において,中堅有群が中堅無群よりも低いことがわかり,「生徒指導」において,中堅有群が中堅無群よりも高いことがわかった。(d)小学校教師のバーンアウト傾向に至るモデルを共分散構造分析によって検討したところ,職場環境ストレッサーから直接バーンアウト傾向に至る有意なパス,職場環境ストレッサーから特別支援教育負担感を経由してバーンアウト傾向に至る有意なパスが認められ,職場環境へのネガティブな認知が,特別支援教育への不安や負担に影響している可能性が示唆された。
著者
高田 純
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.466-476, 1976-07-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
57

Many color reaction of organic componnds in Brønsted or Lewis acid medium which have been used for the detection and the determination of biological materials or for organic analyses are well known. In this review, some of the reaction mechanisms of these coloration, the coloration of aromatic aldehyde with electrophilic reagent in sulfuric acid such as the de Fazi reaction and the Molisch reaction, the coloration of cholesterol in strong acid such as the Liebermann-Burchard reaction, the Zak reaction, the Hirschsohn reaction, the Mueller reaction and the reaction of cholesterol with benzoyl peroxide, the coloration of sexual hormone in acid such as the Kober reaction, the Mueller reaction of estrone and the reaction of teststerone, the Carr-Price reaction, and the Marquis reaction, were reviewed. Among them, the most of coloration using sulfuric acid or other protic acid as the reaction medium were ascribed to carbocation formation, while the color in the Molisch reaction and the Marquis reaction might arise from cation-radical, and the colorations in antimonyl trichloride reagent were ascribed to cation-radical formation.