著者
稲田 勤 坂上 可名 掛水 幸代
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-6, 2013-03-31

単語レベルの発話は200程度あるものの,二語文以上の多語発話のない2歳11ヶ月の幼児に対して,VOCA(Voice Output Communication Aid)を用いた二語文,三語文の発話訓練を行った.訓練に先立ち,理解語,表出語を調べるために語彙チェックリストを作成し,表出できる名詞,動詞,形容詞を抽出した.抽出した語から二語文,三語文の文型を決定し,VOCAのオーバーレイに抽出された語をシンボル化して配置した.また,抽出した語の事物(模型,ミニチュア)を準備した.対象児は,見本刺激(事物)とシンボル(VOCA)のpointingによる見本合わせを求められた.訓練効果を測定するために一事例の実験デザインを用いた. 結果,口頭による二語文,三語文の命名率は,ベースライン期ほぼ0%,確認期は,二語文ほぼ100%,動作語課題の三語文は11%程度であったが,その他の三語文課題は89%程度であった.訓練で使用した多語文の日常生活での出現率は,母親からの聞き取りで90%以上であった.
著者
稲田 勤 有田 未来 西森 有紗
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-17, 2013-03-31

発達障害,アスペルガー症候群,視空間認知障害の疑いのある女児について,視空間認知と視覚的推理の訓練を行った.視空間認知訓練は稲田,有田の色積木構成課題を用いた.視覚的推理訓練は,色積木見本の対称図形を構成する課題を作製した.訓練前後の変化の指標として,視空間認知はWISC-4の積木模様の評価点,視覚的推理はWISC-4の行列推理の評価点を選択した.さらに,WISC-4の知覚推理の合成得点も指標とした. 結果,積木模様(視空間認知)は4から7(+3),行列推理(視覚的推理)は7から14(+7),知覚推理の合成得点は76から106(+30)にそれぞれ向上した. WISC-4で,知覚推理の合成得点の変化が+30であったことは,今回実施した視空間認知訓練,視覚的推理訓練の効果が現れたものと考えた.また,積木模様の評価点の変化が+3であったことは,視空間認知訓練の効果があったと判断した.さらに,行列推理の評価点が+7であったことは,視覚的推理訓練の効果があったと考えた.
著者
熊谷 匡紘 片山 訓博 小松 弘典 森国 裕 島崎 翔 三谷 仁也 安藝 愛菜 柏 智之 重島 晃史 稲岡 忠勝
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-54, 2011-03-31

今回,我々は斜め方向ステップを考慮した動的バランス評価法(Modified Four Square Step Test以下,MFSST)を立案した.そして,地域在住の健常な60歳以上の女性29名を対象として,MFSSTの再現性・妥当性について他の静的・動的バランス評価と比較検討した.他のバランス評価としては,片脚立位時間,Functional reach Test(以下,FRT),Timed Up and Go Test(以下,TUG)を採用した.片脚立位時間,FRT,TUG,FSST,MFSSTの測定結果は順に32.2±40.4秒,26.8±6.1cm ,7.9±1.5秒,8.3±3.0秒,8.5±2.3秒であり,FSSTとMFSSTの時間には有意差を認めなかった.各バランステストのIntraclass Correlation Coefficient(以下,ICC)は同様の順に0.967,0.904,0.844,0.822,0.639であった.MFSSTと片脚立位,FRT,TUG,FSST間の相関係数は順に-0.25,-0.44,0.66,0.67であり,動的および複合バランス評価との間に有意な相関関係を認めた.MFSSTは,動的なバランス能力を評価した指標であることが示された.ICCが他のバランス指標と比較して低値を示したことから,測定値の再現性を向上させるための検討が必要なものと考えられた.
著者
塩見 将志 笠井 新一郎 岩本 さき 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.49-54, 2001-03-31

今回,私たちは,2歳児相談において,言語発達を正確に評価し,言語発達障害を有する子どもや「気になる子」を早期発見・早期療育するための語彙チェックリストの作成を目的に保育所に通う2歳前後の幼児を対象とした表出語彙に関する事前調査を実施した.なお,本稿では,その中でも特に動詞に焦点を当てて検討を加えた.調査で用いたチェックリストの項目は,大久保(1984)が作成した2歳児の語彙リストと三省堂「こどもことば絵じてん」を参考に作成した.本稿で取り扱う動詞は452の全語彙中,123語であった.本調査における動詞の特徴として,2歳0ヶ月時で通過する語は123語中,12%であり,2歳6ヶ月時で通過する語は60%となった.このことからも,動詞は2歳0ヶ月から2歳6ヶ月の間に飛躍的に獲得される可能性が示唆された.
著者
大山 幸綱 吉本 好延 浜岡 克伺 吉村 晋 松田 司直 橋本 豊年 佐藤 厚
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.45-50, 2009-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は,自力で外出可能な在宅脳卒中患者の閉じこもりに関連する身体的・心理的・社会的要因を検討することである.対象は,退院後6ヶ月以上経過した自力で外出可能な高齢脳卒中患者27名とした.質問紙を用いたアンケート調査にて,閉じこもりの有無,転倒自己効力感,主観的健康感,老研式活動能力指標,家庭内および地域での役割の有無,親しい友人および親戚の有無など心理的・社会的要因を調査した.また,理学療法診療録より,Brunnstrom Recovery Stage,10m 歩行時間,Barthel Indexなど身体的要因を調査した.統計解析は,閉じこもりの有無と身体的・心理的・社会的要因との関連性について,群間比較およびロジスティック回帰分析を用いて検討した.自力で外出可能な患者27名中,閉じこもりは12名(44.4%)であった.閉じこもり群は,非閉じこもり群より,屋外の転倒自己効力感が有意に低値を認め,親しい友人および親戚がいない患者の割合が有意に高値を認めた.性別,年齢で調整したロジスティック回帰分析の結果,閉じこもりに対する独立した要因として,屋外の転倒自己効力感,親しい友人および親戚の有無が抽出された.自力で外出可能な在宅脳卒中患者の閉じこもりを考慮した場合,身体機能に加えて,転倒自己効力感に着目した評価およびアプローチが重要であると考えられた.
著者
坂上 昇 栗山 裕司 山崎 裕司 大倉 三洋 酒井 寿美 中屋 久長 山本 双一
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-17, 2003-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は,固定用ベルト付きハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)を用いた等尺性足背屈筋力の測定方法を考案し,その測定方法による検者間再現性と検者内再現性について検討することである.対象は,健常成人22名(男性11名,女性11名)である.被検者の肢位は背臥位とした.センサーを足背の中足骨部に付属のマジックテープで固定した.そして,センサーが装着された固定用ベルトを,被検者の足底方向に位置し片膝立ち位となった検者の大腿部に巻き付けて固定した.測定は,各下肢に対して2回実施し,最大値を測定値として採用した.検者間再現性を検討するために,検者Aと検者Bの2名の理学療法士が等尺性足背屈筋力の測定を行った。また,検者内再現性を検討するために,検者Aが1回目の測定の数日後に,同一被検者に対して同一の測定を2回目として実施した.等尺性足背屈筋力値は,検者Aが17.25±3.44kg,検者Bが17.35±2.87kgであって,検者間級内相関係数は0.903と極めて良好であった.検者Aによる等尺性足背屈筋力値の1回目の値は17.25±3.44kg,2回目の値は17.84±2.73kgであって,検者内級内相関係数は0.872と良好であった.固定用ベルト付きHHDを用いた我々が考案した足背屈筋力の測定方法は,センサーの固定性が得られ,足背屈程度の筋力であれば高い再現性のもとで測定できることが示唆された.これにより,等尺性足背屈筋力を定量的に測定することができ,症例に対して有用な情報を即時に提供できるものと考える.