- 著者
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苅田 知則
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.2, pp.140-149, 2004-08-20 (Released:2017-07-24)
- 被引用文献数
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本研究では,幼児が自由遊びの時間に行う「隠れる」行為の動機を,参与観察を通して研究者自身が再体験的に理解し,当該事象における幼児の内的様相を記述的に再構成すること,および再構成によって得られた例示を,公共的に再体験・相互理解可能な仮説として提示することを目的とした。本調査の研究協力者は,幼稚園児(年中児21名,年長児19名)であり,自由遊びの参与観察から,65事例の「隠れる」行為が観察された。それらの事例を,KJ法を用いて仮説生成的に構造化する二つの分析を試みた。分析1では,KJ法を用いて行為の目的と手段に着目した分析を行ったところ,65事例を13の1次カテゴリー,さらにそれらを包括する四つの2次カテゴリーに分類し,最終的に「演劇的行為」と「対人的行為」という二つの3次カテゴリーに集約した。分析2は,幼児が「隠れる」場所と行為の関係性に着目した分析であり,「隠れる」場面では,子ども(主体)と空間(場)および遊びの成員外の第三者(他者)の3要素が織りなす特定の「三者構造」が構成されており,「囲う」「潜る・入る」「隔てる」という3種類がモデルとして浮上した。最終的に,二つのKJ法による分析から得られた結果を,Burke(1952/1982)の劇学的視点を導入して統合し,子どもが「隠れる」2つの動機を提示した。