著者
岡本 伊作 塚原 清彰 佐藤 宏樹 本橋 玲 近藤 貴仁 岡田 拓朗 清水 顕
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.223-229, 2017-10-30 (Released:2017-11-22)
参考文献数
8
被引用文献数
3

頭頸部癌に対する手術の中で,最も重要な術式の一つに頸部郭清術があげられる。では,どのようにこの頸部郭清術を中心とした頭頸部癌に対する手術手技を,安全かつ効率よくトレーニングしていけばよいのかに関しては明確な指標はなく,施設によって異なっている。われわれの施設では,ドライラボで十分にトレーニングを行った初期・後期研修医,若手医師を対象に,cadaverやアニマルラボを用いた手術トレーニングを行っている。しかし,頭頸部領域でアニマルラボトレーニングを行っている報告はない。今回は,過去に施行したアニマルラボトレーニングにおいて,トレーニングの前と後で参加者による自己習熟度評価と,指導医による習熟度評価について検証した。それにより,頭頸部領域におけるアニマルラボトレーニングの有効性を検討した。アニマルラボとレーニングは手技の向上に関して有意に有効な結果であった。技術の向上は医療安全の観点からも非常に有用となると推察された。
著者
福田 宏之
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.119-124, 1993-11-26 (Released:2010-07-27)
参考文献数
7

早期声帯癌に対しては,放射線療法,内視鏡下レーザー治療,声帯切除などが試みられる。いずれも一長一短あり適応を間違えなければそれぞれ優れている面がある。喉頭を切開して患側声帯を切除するのが切除範囲を決めたり,確実に切除するのに適している。しかしこの場合の欠点は残された音声に相当の障害が残ることである。それは声門閉鎖不全のため気息性の強い嗄声となるためである。そこで同側仮声帯の後部を茎とする筋粘膜弁を作成し,声帯を切除した跡地に移動,縫合して新しい声帯を作り声門閉鎖不全を防ぐ再建手術を考案した。声帯切除と同時に行えるので患者は術後一週間程度で会話可能である。
著者
岩村 忍 栗田 宣彦
出版者
JAPAN SOCIETY FOR HEAD AND NECK SURGERY
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-10, 1996
被引用文献数
12

片側麻痺声帯の固定位置が正中線から外側にむかって離れれば離れるほど,音声障害や嚥下障害の程度は増強する。したがって,中間位固定症例の方が正中あるいは副正中位固定例よりも障害は強い。治療法として内視鏡的または経皮的に,麻痺声帯外側にむけてシリコン,テフロン,コラーゲン,脂肪などの注入術がおこなわれ普及をみた。しかし,麻痺声帯の正中移動の程度に限界があり,加えて,麻痺声帯の厚み矯正,張力獲得,前額面における両声帯間のレベル差矯正などが期待できかねた。これらの短所を補う治療法は,恐らく披裂軟骨内転術であろう。この方法の歴史は決して新しくない。披裂軟骨に直接ふれ,これを内転固定させるという思想のもとに,喉頭截開して前方から接近する方法や,甲状軟骨後端から接近する術式が試みられた。術式が複雑である。 われわれは披裂軟骨に附着せし外側輪状披裂筋に着眼した接近法を開発した。生理学的に同筋収縮は声帯の全長にわたる正中移動を招来することが知られているゆえ,同筋をその走行方向に牽引固定すれば,同筋収縮と同じ結果をえられると推定し,38例の片側声帯麻痺に手術した。局所麻酔のもと,甲状軟骨板に在る斜線を一里塚とし,この直前に,小さな窓を開け,甲状軟骨内膜を切除して同窓内に外側輪状披裂筋を直接露出した。同筋に糸をかけ,窓の前下方に牽引固定することにより,好成績をえた。術式と結果を詳述する。
著者
大門 康子 末田 尚之 杉山 喜一 宮城 司道 中川 尚志 竹下 盛重
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.63-68, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Spindle cell carcinoma(sarcomatoid carcinoma)は扁平上皮癌成分と紡錘形細胞を主体とする肉腫様成分とが混在してみられる悪性腫瘍であり,扁平上皮癌の亜型として分類されている。今回,われわれは急速に進行したspindle cell carcinomaの1例を経験したので報告する。症例は58歳男性,急性心筋梗塞にて救急救命センターに搬送され,気管切開術が施行された。抜管後に呼吸困難が出現し,気管支鏡検査により喉頭声門下より気管内に腫瘍性病変が確認された。再気管切開術とともに腫瘍組織検査が施行され,病理組織検査からspindle cell carcinomaと診断された。約3週間後に手術を予定していたが局所の急速な増大とともにリンパ節および遠隔転移が進行し,手術不能と判断される状態になった。診断後2か月で死亡し,不幸な転帰となった。
著者
阪上 雅史
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.133-139, 2012 (Released:2012-11-09)
参考文献数
9

後天性中耳真珠腫の発生機序は未だ不明であるので,術後10年間で20~30%再発する。それ故,再発した場合に再手術が容易な術式かつ世界標準の術式が望まれる。当科では,atticotomy/scutumplasty,canal wall up法,canal wall down法の3つの基本術式で対処している。本稿ではそれぞれの術式の手技と適応,短所・長所を解説した。最近では,仕事にすぐに復帰を希望する方に,短期間で耳内が乾燥し通院回数の少ない術式,atticotomy/scutumplastyやplanned staged canal wall up法を施行している。最後に,いずれの術式においても,5~10年の長期観察が重要であることを述べた。
著者
片岡 真吾 川内 秀之
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.113-117, 2007-10-31 (Released:2010-07-27)
参考文献数
18
被引用文献数
7

神経鞘腫は良性腫瘍であるが,稀に悪性化するとの理由で,神経とともに完全摘出される例が報告されている。しかし,われわれが検索しえた限りでは,神経鞘腫が悪性化した例についての報告例は現在まで29例であった。その中で頸部に発生した例は10例であり極めて稀であった。この結果,神経鞘腫の治療は,臨床経過を考慮したうえで,神経機能を温存し腫瘍を完全摘出する術式(被膜間摘出術)が妥当であると考えられた。
著者
西元 謙吾
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.9-13, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
5

当院で行われた耳鼻咽喉科手術症例で75歳以上の患者295例について術前併存症の有病率や術後合併症の発症について検討した。75歳以上の症例において,術前併存症では循環器疾患の割合が比較的多く,60~64歳の群と比べると,高血圧・冠血管疾患・呼吸器疾患の割合が有意に高かった。高齢者における術前検査の循環器異常は既往に循環器疾患がある例が多かったが,呼吸器異常は既往のない症例の方が多かった。重篤な術後合併症は,術前併存症の状態が悪い上に侵襲の大きい手術を行った2件であったが,年齢的な要因が関与しているとは考えにくいと思われた。