著者
上里 迅 真栄田 裕行 金城 秀俊 安慶名 信也 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2020

肺癌患者において開胸下の右上葉切除術と,頸部アプローチによる巨大な腺腫様甲状腺腫(AG)摘出術の同時施行例を経験したので報告する。患者は頸部圧迫感を主訴とする70歳の男性。精査の結果,右肺上葉S2区の肺癌と同時に上縦隔におよぶ右甲状腺腫瘤が発見された。甲状腺腫瘤は気道を圧排し,頸部圧迫感の主因であると考えられたため,肺癌と同時に甲状腺腫瘤摘出が計画された。AGは頸部操作のみで摘出可能であった。術後の経過は極めて順調であったが,縦隔炎や膿胸,胸骨骨髄炎など合併症の発症リスクを抑えるため,気管切開を併施せず,気管内挿管による気道管理を選択したことが理由として考えられた。
著者
鈴木 健介 林 隆一 海老原 充 宮崎 眞和 篠崎 剛 富岡 利文 大幸 宏幸 藤井 誠志
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.169-174, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

骨肉腫は骨原発の悪性腫瘍として最も多いが,頭頸部領域に生じる骨肉腫は全体の10%以下と比較的まれである。今回,われわれは下顎骨に発生した骨肉腫を6例経験したので,文献的考察を加えて報告する。治療法は6例全例で手術が施行され,4例は手術療法単独,2例で導入化学療法が併用された。導入化学療法が併用された2例においてはいずれも化学療法の効果は認められなかった。諸家の報告と同様に,初回治療で切除断端陰性の症例では長期生存が得られていた。頭頸部原発骨肉腫の治療の中心は外科的完全切除であるため,手術時期を逸することがないよう,導入化学療法の適応に関しては慎重になる必要があることが示唆された。
著者
朝戸 裕貴
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.303-305, 2017-02-28 (Released:2017-03-07)
参考文献数
3

形成外科的縫合法の基本は,1.繊細な器具で組織を愛護的に扱う,2.組織反応の少ない針付き糸を用いる,3.なるべく細い糸で密に縫合を行う,4.結紮はゆるく,正結紮で偶数回むすぶ,5.瘢痕が目立たない方向を考慮した切開線とする,6.真皮縫合法を活用する,などの点があげられる。縫合痕(suture mark)を残さないために,ゆるく密な皮膚縫合,創部の安静と早めの抜糸,抜糸後の後療法などにも配慮する必要がある。
著者
片岡 真吾 川内 秀之
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2010-10-30 (Released:2010-12-10)
参考文献数
19

小児において頸部腫脹をきたす疾患はリンパ節病変のほか,先天性の嚢胞性疾患や脈管性疾患が多い。われわれが経験した3症例(川崎病,下咽頭梨状陥凹瘻,嚢胞性リンパ管腫)を提示し,診断および治療上の問題点を検討した。川崎病の症例は,抗菌薬投与で改善されず,γグロブリン製剤とステロイド薬の併用投与で治癒した。下咽頭梨状陥凹瘻の症例は,診断の遅れから深頸部感染症を生じてから受診した例であった。嚢胞状リンパ管腫の症例は,他院で手術後再発をきたした症例であり,当科で再手術を行いその後経過良好である。嚢胞状リンパ管腫やがま腫などの嚢胞性疾患は,外科的摘出術だけでなく,近年はOK-432による硬化療法も有効であるとの報告もあり,十分検討のうえ治療法を選択する必要がある。
著者
福永 陽子 隈部 洋平 西村 一成 初川 博厚 北 真一郎 森田 武志 当麻 正直
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.177-182, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

甲状腺未分化癌は極めて治療抵抗性で予後不良な癌であるが,2015年に登場した分子標的薬レンバチニブは,甲状腺未分化癌に対して画期的な抗腫瘍効果を示すことが報告されている。今回,レンバチニブによる頸動脈出血をきたし不幸な転帰をとった甲状腺未分化癌例を経験したので報告する。症例は73歳の女性で,甲状腺未分化癌に対してレンバチニブによる治療を行い短期間で劇的な腫瘍縮小効果を得た。治療開始57日目に食道穿孔および縦隔炎をきたしたため,レンバチニブを休薬したが,休薬後3日目に頸動脈出血をきたした。救命目的に緊急ステントグラフト留置術を施行したが,術中に総頸動脈閉塞をきたし脳梗塞により永眠された。
著者
大久保 淳一 長谷川 翔一 髙橋 梓 竹内 頌子 若杉 哲郎 鈴木 秀明
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.277-282, 2019 (Released:2019-04-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科における過去15年間の咽頭・頸部食道義歯異物症例について検討した。症例は26例で年齢中央値は79.5歳,クラスプ介在部位最深部は食道入口部〜頸部食道11例,下咽頭10例,中咽頭4例,上咽頭1例であった。全身麻酔を要した例は14例,気管切開術を要した例が4例,頸部外切開を要した例が1例,死亡例が1例あった。全身麻酔症例は,食道入口部〜頸部食道介在義歯11例中9例(82%),U型義歯14例中9例(64%)であった。気管切開症例の義歯は全てU型で,この中には死亡した1例が含まれていた。頸部外切開例ではU型義歯が食道入口部に介在していた。以上より,介在部位が食道入口部〜頸部食道の場合やU型義歯では重症化しやすいと考えられた。
著者
金城 秀俊 安慶名 信也 上里 迅 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.67-72, 2020

転移性甲状腺腫瘍は稀であり,特別な画像所見がないため術前に診断をつけることが難しい。われわれは腎細胞癌の甲状腺転移例を経験したので報告する。症例は55歳,女性。当科初診11年前に腎細胞癌により右腎摘出を受けた。受診9年前に膵頭部に再発し同部位を摘出された。受診3-4年前に右甲状腺腫大を認め増大傾向にあった。穿刺吸引細胞診で濾胞性腫瘍疑いの診断を受け,当科を受診した。甲状腺以外に頭頸部領域に腫瘍性病変を認めず,原発性甲状腺悪性腫瘍として葉峡切除術(右葉)+右気管傍郭清術を施行した。術後病理で腎細胞癌の転移と判明した。術後21か月で肺転移を認め追加治療中であるが,頭頸部には明らかな再発を認めていない。
著者
大井 祐太朗 舘野 宏彦 髙倉 大匡 將積 日出夫
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.333-336, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
8

症例は66歳男性。右前額部から眼窩周囲の違和感を主訴に近医総合病院内科を受診し頭部MRI所見で右上顎洞の液体貯留を指摘され慢性副鼻腔炎と診断された。マクロライド療法施行されたが改善なく精査加療目的に当科紹介受診。CTで右篩骨洞内に歯科インプラント体と思われる異物あり,内視鏡下鼻副鼻腔手術で異物を摘出した。 近年QOL向上や高齢者の増加等により歯科インプラント体埋込は増加傾向にある。歯科インプラントの副鼻腔への迷入は増えており,副鼻腔炎の精査の際には詳しい病歴や治療歴なども聴取し,異物も鑑別に精査する必要性があると考えられた。
著者
松尾 美央子 力丸 文秀 檜垣 雄一郎 冨田 吉信
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.153-159, 2010-10-30 (Released:2010-12-10)
参考文献数
20
被引用文献数
7

放射線治療は喉頭・下咽頭癌の治療において喉頭機能温存の点で優れた治療法だが,一方で重篤な局所障害を招く事があり喉頭壊死もその一つである。今回検討した喉頭壊死の発症頻度は2.9%で,臨床所見として咽喉頭粘膜浮腫・壊死,喉頭麻痺,皮膚潰瘍,嚥下障害が認められた。また壊死症例のうち88%が照射終了後18か月以内の発症で,喉頭壊死は晩期障害とはいえ比較的早期に発症する事を認識した。治療は保存的に治癒したのが38%,手術が必要だったのが63%で,壊死症例の喉頭温存率は63%であった。喉頭温存目的の放射線治療が,結果として喉頭機能を失わせる事もあり,今後この合併症をいかに減らすかが課題の一つと思われた。
著者
森本 剛
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.265-267, 2016-02-28 (Released:2016-04-06)
参考文献数
1

論文の基本構造はまず引用文献(Reference)の「他の誰かがやったことや言ったこと」を背景(Introduction)にして,自分たちで実際に研究を行い,その方法(Methods)と結果(Results)を示す。そして「引用文献」と「方法および結果」の2つをもとに「こう考える」という解釈(Discussion)をするのである。医学論文はサイエンスであり,再現性が不可欠である。Methodsはそれを読めば,同じ研究結果が得られるような記載が必要である。ResultsはMethodsと対になっていなければならない。IntroductionやDiscussionも論文全体を通して伝えたい内容(幹)と少々の修飾因子(枝葉)に絞る必要がある。論文全体を通して何を言いたいのか分からないような論文は編集者や査読者に失望を与える結果となる。
著者
松木 崇 三浦 弘規 多田 雄一郎 増淵 達夫 伏見 千宙 岡田 拓朗 丹羽 一友 岡本 伊作
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.53-59, 2017-06-30 (Released:2017-08-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1

当センターにおける副咽頭間隙多形腺腫45例の手術症例に対して検討を行った。患者背景は男性:女性が17:28,年齢の中央値は47歳,すべて茎突前区由来であった。腫瘍最大径に関わらずすべて経頸部法で摘出できた。手術時間は中央値86分,出血量は中央値50mlであり,術後合併症は顔面神経麻痺が12例で大半が一過性の下顎縁枝不全麻痺,first bite syndromeが11例であった。副咽頭間隙多形腺腫は経頸部法でほとんどが永続的な術後合併症なく摘出可能と考えられた。術前FNAを施行できた35例において97.1%でclass IIIまで,71.4%で多形腺腫と診断できており,FNAは有用と思われた。

1 0 0 0 OA アブミ骨手術

著者
熊川 孝三
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.127-132, 2012 (Released:2012-11-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

基本手技を習得した中堅医師を対象に,より高度なアブミ骨手術手技を要する困難症例を中心に,注意点と対応する手技を解説した。難易度が高いものとしては,一側性耳硬化症の適応決定,外耳道狭小例の耳内法手術,顔面神経下垂例,狭小な卵円窓例,蝸牛型耳硬化症で出血が多い例,キヌタ骨壊死例およびloose wire syndromeを取り上げた。これらの困難症例を成功させるのに有用な専用器具の備えの重要性を述べた。キヌタ骨壊死などの合併症を起こしにくいとされる新しいピストンの紹介を行った。
著者
栢野 香里 木下 翔太
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.185-191, 2019 (Released:2020-01-08)
参考文献数
20

甲状舌管囊胞の約1〜2%に癌が発生するが,その多くは壮年期までの発症である。また,遠隔転移の本邦報告例はこれまでにない。今回,骨転移をきたしたと推測された後期高齢者での発症例を報告する。症例は89歳男性。55mm大の前頸部腫瘍と右頸部転移リンパ節に対し,Sistrunk法による腫瘍切除,右頸部郭清,喉頭挙上,気管切開術を施行したが,6か月後に左頸部リンパ節転移と甲状腺右葉内の微小癌が判明し,左頸部郭清,甲状腺右葉切除を施行した。術後,右大腿骨転移が出現したため,放射線外照射を行い,デノスマブを投与中である。甲状舌管癌も甲状腺癌同様,骨転移をきたす。また,高齢者発症例では併存疾患や嚥下機能に考慮した治療選択が必要である。
著者
三代 康雄 北原 糺 山本 佳史 久保 武
出版者
JAPAN SOCIETY FOR HEAD AND NECK SURGERY
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.315-318, 2005-02-05 (Released:2010-07-27)
参考文献数
9

慢性穿孔性中耳炎を伴う内頸動脈鼓室内露出症例について報告する。症例は58歳女性で,右難聴と耳鳴を主訴に当科を紹介受診した。右鼓膜は大穿孔を認め,,鼓室前方に拍動する腫瘤を認めた。内頸動脈鼓室内露出が疑われ,平成13年3月局所麻酔下に耳後部切開の鼓室形成術1型を行った。術前に内頸動脈の露出が確認されていたため,この部位は軟骨板で被覆するのみとし,殆ど出血無く手術を終了した。内頸動脈鼓室内露出はきわめて珍しいが,手術操作などによる大出血で気付いたという症例が大半であり,鼓室内に拍動1生腫瘤を認めた場合は内頸動脈の露出も鑑別に入れるべきである。
著者
梅野 博仁 千年 俊一 前田 明輝 上田 祥久 松田 洋一 栗田 卓 末吉 慎太郎 中島 格
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.95-102, 2010-10-30 (Released:2010-12-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

喉頭外傷新鮮症例56例の検討を行った。医原性喉頭内損傷症例は除外した。性別は男性39例,女性17例,年齢は6歳から77歳までで,中央値は30.5歳であった。喉頭外傷の原因はスポーツ事故15例,交通事故13例,過失11例,自殺企図9例,労働災害7例,喧嘩1例であった。新鮮症例の内訳は開放性損傷8例,鈍的損傷44例,化学熱傷3例,熱傷1例であった。鈍的損傷についてはTroneらの重症度分類の問題点を挙げ,治療指針となる新しい重症度分類を提案した。
著者
桐 広樹 端山 昌樹 前田 陽平 識名 崇 増村 千佐子 岡崎 鈴代 奥野 美香 武田 和也 津田 武 猪原 秀典
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-44, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
12

歯性上顎洞炎は耳鼻咽喉科と歯科の両方で治療が行われており,治療方針も各施設によって異なっている。今回,われわれは歯性上顎洞炎の診断および治療を検証するために,歯性上顎洞炎30例32側を対象に,診断モダリティおよび治療方針について後向きに検討を行った。初期治療として抜歯とESSが行われた9例では再発を認めなかったものの,抜歯だけが行われた12例のうち8例で後にESSが行われた。また歯科用単純X線写真にて原因歯の診断が可能であったのは55%であり,歯性上顎洞炎の診断にはCTでの読影が必要であると考えられた。いずれも後向きの検討であり,今後治療方針を一定にした前向き研究が必要であると考えられた。
著者
黒瀬 誠 近藤 敦 高野 賢一 大國 毅 小幡 和史 山本 圭祐 垣内 晃人 萬 顕 氷見 徹夫
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.239-243, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
12

V-Locは返しが付いた合成吸収糸で無結紮連続縫合による創閉鎖が可能である。今回V-Locを喉頭垂直部分切除手術に使用した。対象は4症例で,全て声門癌放射線治療後の局所再発例である。全例男性,年齢は57歳から79歳(平均65.0歳),手術時間は92分から140分(平均120分),出血量は少量から160ml(平均32.5ml)だった。術後合併症は1例に小瘻孔の形成を認めたが,局所処置のみで改善した。経口摂取までの日数は15日から30日(平均21.8日)で退院までの期間は37日から56日(平均40.6日)だった。過去に行った喉頭垂直切除例(8症例)との比較では術後合併症の増加を認めなかった。
著者
松尾 美央子 力丸 文秀 檜垣 雄一郎 益田 宗幸
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-180, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
17

中咽頭扁平上皮癌43例を対象に,全体の治療成績とともに,ヒト乳頭腫ウイルス(以下HPV)感染の有無とその臨床的特徴の違いや生存率について,retrospectiveな検討を行った。43例のうち,ステージIV症例が74%を占め,31%がHPV陽性で,2年粗生存率は77%であった。HPV陽性症例は陰性症例に比べ,有意に進行症例が多く,重複癌が少ない結果であった。2年粗生存率はHPV陽性症例70%に対し,HPV陰性79%と有意差はなかった。今後はHPV関連中咽頭癌症例について,長期の経過観察の後のさらなる検討が必要と思われた。
著者
佐藤 伸也 森 祐輔 橘 正剛 横井 忠郎 山下 弘幸
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.207-216, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
20
被引用文献数
2

当院での甲状腺内副甲状腺腫の頻度は,原発性副甲状腺機能亢進症手術例319例中10例(3.1%)であった。8例が右葉,2例が左葉と右葉に多く,また下極が6例と下極側に多かった。超音波検査では7例が内部低エコーで,6例でドップラー血流の亢進を認めた。MIBIを7例に施行し,5例で集積を認めたが,同時に存在した腺腫様結節にも集積している症例が1例存在した。CTは腫瘍としての存在を提示できるものの質的診断は困難であった。穿刺PTH測定を6例に施行し,5例でPTHの高値を認め局在診断に有用であった。また1例に両側内頸静脈サンプリングPTH測定を行い,PTHの左右差を認め局在診断に有用であった。