著者
土谷 敏雄 新井 敦
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1028, pp.181-191, 1981-04-01

バイオガラスの化学的耐久性と生体組織との結合機構がHenchにより研究された. これらのガラス中に含まれたNa<sub>2</sub>O, CaO, SiO<sub>2</sub>とP<sub>2</sub>O<sub>5</sub>成分はバイオガラスの必須成分と見なされる. しかし, Henchによって研究されたこれらのバイオガラスは, 埋入後時間とともに機械的強度が減少するという重大な欠点を持つため, まだ実用化されでいない.<br>この実験において新成分としてAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>とB<sub>2</sub>O<sub>3</sub>を含むNa<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズ, Na<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズ, Na<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズのガラスの化学的耐久性とビッカース硬度を研究した. これらのガラス中に含まれたAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>とB<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は, 化学的耐久性と機械的強度を増加すると期待される. 化学的耐久性はpH=1.0, pH=3.0, pH=5.0のHCl溶液で測定した.<br>幾つかの興味ある結果がビッカース硬度において得られた. Xシリーズガラスのビッカース硬度はSiO<sub>2</sub>の増加とともに増加した. EとFシリーズガラスのビッカース硬度は, B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>/P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>が1に等しいmol%比で極大を示し, (B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>+Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)/P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>が2に等しいmol%比で極大を示した.<br>これらの性質は組成との関連で決定した.<br>これらの性質の測定から, E 15, A 20, A 30のバイオガラスがHench (45 S 5) ガラスより良いことが示された.
著者
吉井 豊藤丸 村上 義一
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.65, no.737, pp.123-129, 1957-05-01

本報告で, ポルトランドセメントの偽凝結の一原因をセメント中の半水石膏硬化力によるとする観察からその機構を解明してみた. 半水石膏硬化力のみでは偽凝結を完全に解明することは出来なかったけれども, セメント中の半水石膏の硬化時刻を考えに入れること -セメントの偽凝結はある量以上の半水石膏を含み, しかもこの半水石膏がある時間の範囲 (フェデラル規格試験法では混練後1-5分) に硬化する場合にのみ偽凝結としてあらわれる-によって, 今まで説明出来なかった諸現象の一部を解明することが出来た. 結論を以下箇条書に述べると,<br>1) 珪砂に少量の半水石膏を添加し粉砕した粉末試料は, その含有量がSO<sub>3</sub>として0.5%で偽凝結を起し, 1.2%以上では始発も急結を示した. この試料において混練時間を長くするか, 半水石膏の硬化時間を早める二水石膏を添加するか, または湿度の高い状態で風化させ半水石膏の一部を二水物に変えることによりペーストの硬化を進め, 混練により練殺すことにより, この偽凝結を消すことが出来る. 一方これと反対に, 混練時間を短縮するか, 炭酸アルカリのように半水石膏の硬化時間を遅らすものを添加することにより偽凝結性を強くしうる.<br>2) セメントの場合は珪砂, 半水石膏混合粉末ほど単純ではないが, 同様な傾向が認められる. セメント中の半水石膏の硬化時間は半水石膏自身の硬化時間および二水石膏, カルシウムサルホアルミネート, アルカリ塩, 石灰化合物その他により複雑な影響を受けると考えられる.<br>セメント中の半水石膏の硬化時間を実測することは困難である故, その尺度を知るために, 半水石膏とセメントを半々に混合した試料を石膏試験法により, その始発時間を測定することにより目安とすることが出来る.<br>3) 仕上ミルから出たばかりの新鮮セメントの半水石膏硬化時間は非常に早いものが多く (特にオープンサーキュット式のようにミル内に水蒸気が多い場合), ほとんど混練時間中に練殺されるため偽凝結とはならない. したがって, セメント中の石膏含有量と偽凝結の強さは, 新鮮時でぽ直接関係がない. セメントが風化すると, セメント中の石膏硬化時間が遅れてくるため, 練殺されない結果, 偽凝結を起し, 石膏量の多いセメントほど偽凝結が強くなる. フェデラル規格の場合, 混練終了後1-5分間に硬化する石膏量と偽凝結とは密接な関係が認められる.<br>4) 偽凝結セメントに二水石膏を添加した場合, または湿度の高い状態で風化した場合偽凝結が消える理由は, セメント中の半水石膏の硬化時間が早くなるためである. 後者の場合は, 高湿度下の風化のためセメント中の半水石膏が二水物, サルホアルミネート等に変化し, 半水石膏の量が減少すると共に, 生成物が半水右膏の硬化時間を早めるためである.<br>5) セメントを湿度の低い状態で風化させた場合永らく偽凝結状態を保つが, これはこの状態ではセメント中の半水石膏が安定して存在するためであろう.<br>6) クリンカー粉末を湿度の高い状態で風化し, これに半水石膏を加えたセメントは強い偽凝結を示す. またクリンカー粉末を湿度の低い状態で長期間風化したものは半水物, 二水物のいずれを添加しても偽凝結を起す.<br>これらの場合, 偽凝結と半水石膏硬化時間との間には関係が認められない. これらの現象は上述のものとは異なった理由によるものと考えられ, この別種の偽凝結はセメント中の半水石膏の硬化力に起因せず, クリンカー自身の硬化力によるもので, 試験温度が低い場合にはあらわれず, 混練後静止されると直ちに硬化し, 石膏によって, その硬化を防ぐことが出来ない特徴を持っている. これに関しては後日報告する予定である.<br>7) セメント中の半水石膏に起因する偽凝結を防止する方法としては, 防湿袋を使用することにより風化を防ぐこと, 現場コンクリートミキサーで少量の二水石膏粉末を添加混練し, 混練を出来るだけ長くすること, また実際に行うことはなかなか困難であるが, 仕上ミルの温度を下げてセメント中の石膏の一部を二水物として残しておくか, またはセメントを冷却した後二水石膏の粉末をセメント粉砕後添加混合することが考えられる.
著者
神崎 修三 阿部 修実 田端 英世
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1085, pp.159-166, 1986-01-01
被引用文献数
2 1

無添加非晶質窒化ケイ素粉末及びイットリアを10wt%添加した粉末を窒素中, 1200℃から1500℃で1時間結晶化した. 得られた粉末を1750℃, 1時間, 49MPaの条件でホットプレスし, 粉末の特性, 焼結性及び焼結体の機械的性質について検討した.<br>イットリアの添加は, 非晶質窒化ケイ素のα相への結晶化及びα/β転移のいずれも促進する. 無添加で結晶化させた粉末は形や大きさが不規則になるが, イットリアを添加して結晶化させると微細で均一な粒径のα及びβ窒化ケイ素粒子となる. イットリアを添加後仮焼した場合, 焼結体のかさ密度, 室温及び1200℃での抗折強度は仮焼温度とともに増加するが, 窒化ケイ素を結晶化させた後イットリアを添加した場合は密度, 強度とも高温で仮焼するほど低下する. 仮焼した粉末のα相含有率は焼結体の密度及び強度にほとんど影響を及ぼさない. 非晶質窒化ケイ素にイットリアを添加して結晶化した場合, 焼結性, 機械的性質及び微構造を制御する要因は粉末の形態及び窒化ケイ素とイットリアの反応生成相であると考えられた.
著者
倉元 信行 谷口 人文 沼田 吉彦 麻生 功
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1081, pp.517-522, 1985-09-01
被引用文献数
11 34

AlN-Ca(NO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>系を常圧焼結して透光性焼結体ができる過程を調べた. 1800℃で3時間焼結の各過程の試料について密度, Ca濃度, 熱伝導率の測定及び走査型電子顕微鏡観察を行った結果, 焼結は典型的な液相焼結であり, (1) 粒子の再配列 (1300°-1600℃), (2) 溶解-析出によるち密化 (1600°-1800℃), (3) AlNの粒成長 (1800℃) の各過程が観測された. 1800℃で3時間焼結後の透光体試料のCa含有量は120ppmで, 焼結中にアルミン酸カルシウム相の揮散が生じていることが分った. 一方, AlNの熱伝導率に及ぼす酸素含有量及び金属不純物含有量の影響を調べた. 広い酸素含有量の範囲 (0.26-7.3wt%) で熱伝導率は酸素含有量の対数値に反比例し, 熱伝導率の最高値131W/mKは酸素量0.26wt%の常圧焼結体で得られた. またSi, Fe, Mgなどの金属不純物の添加効果を調べ, これらの金属の各々約200ppmの添加によってAlNの熱伝導率の初期値, 140W/mKはそれぞれ105W/mK, 114W/mK, 122W/mKまで急激に低下することが分った. これらの結果から高熱伝導性のAlN焼結体を作製する条件として, 低い酸素含有量と低い金属不純物含有量の両条件が重要であることが明らかになった.
著者
横田 良助
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.65, no.740, pp.C244-C252, 1957-08-01
被引用文献数
1
著者
水野 正雄 山田 豊章 野口 哲男
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.86, no.996, pp.359-364, 1978-08-01
被引用文献数
2 14

ヘリオスタット式太陽炉を用いて試料を溶融後急冷し, その冷却曲線から試料の凝固点を求め, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系の液相線を決定した. 溶融後急冷した試料についてX線回折及び化学分析を行い生成相を調べた.<br>ガーネット構造の3Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・5Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>, ペロブスカイト構造のDyAlO<sub>3</sub>及び単斜型の2Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の単一相は, 1600℃に加熱処理した試料と溶融後急冷した試料のいずれにも観察された.<br>溶融後急冷して得られた3種の化合物の格子定数は, 3Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・5Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>: <i>a</i><sub>0</sub>=12.034Å DyAlO<sub>3</sub>: <i>a</i><sub>0</sub>=5.204Å, <i>b</i><sub>0</sub>=5.308Å, <i>c</i><sub>0</sub>=7.413Å 2Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>: <i>a</i><sub>0</sub>=7.403Å, <i>b</i><sub>0</sub>=10.487Å, <i>c</i><sub>0</sub>=11.143Å β=108.68°であった.<br>これらの化合物は高温X線回析を行った結果, 結晶転移は認められず安定相である.<br>3Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・5Al<sub>3</sub>O<sub>3</sub>, DyAlO<sub>3</sub>及び2Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>・Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の凝固点は, それぞれ1920±20℃, 2000±20℃及び1954±20℃であった.<br>Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系における共晶点は, Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>が18mol% (1760℃), 42mol% (1890℃), 60mol% (1920℃) 及び79mol% (1830℃) 組成で認められた.<br>Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の冷却曲線は, 冷却の過程において凝固点と固相における構造変化を示す4個の発熱ピークが認められた.<br>これらの結果から, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-Dy<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系に対する高温平衡状態図を推定した.
著者
門間 英毅
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1098, pp.284-285, 1987-02-01
被引用文献数
8

Brushite and monetite powders were hardened by hydration in the presence of a "solid pH buffer". The hardening was accompanied by the transformation of the starting calcium phosphates into carbonate-containing hydroxyapatite and/or octacalcium phosphate. The resulting hardened bodies had porosities of 71-81% and diametral tensile strengths of 0.1-1.5MPa. Microstructures of the hardened bodies showed that the hardening was caused by the entanglement of microcrystals.
著者
鈴木 久男 太田 和秀 斎藤 肇
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1098, pp.170-175, 1987-02-01
被引用文献数
9 18

Densification behavior of powder compacts having a cordierite composition prepared by the sol-gel process using metal alkoxides is studied. The calcination of the alkoxy-derived powder at 800°C for 12h gave the best sintering. Densification of the powder compacts occurred from 800° to 900°C. Dense cordierite ceramics with different crystalline phases or properties were obtained by sintering the powder compacts without any sintering aid. The sintering of the powder compact at 1300°C for 12h gave dense α-cordierite ceramics having the flexural strength of 120MPa and the critical stress intensity factor of 2.8MN/m<sup>3/2</sup>.
著者
村上 恵一 花田 光雄 高橋 俊一 宮田 吉郎
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.64, no.718, pp.7-12, 1956-01-01
被引用文献数
1 1 2

The results are summarised as follows:<br>1. The chemical formula of Calcium sulphite was found to be CaSO<sub>2</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O.<br>2. The heat of oxidation of crystalline and amorphous CaSO<sub>3</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O are 60.51 kcal/mol and 62.95 kcal/mol respectively.<br>3. Crystalline calcium magnesium sulphite was discovered and its chemical formula was determined to be CaMg(SO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>⋅7H<sub>2</sub>O.<br>4. The dehydration temperature of crystalline and amorphous CaSO<sub>3</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O are 400°C and 375°C respectively. The compound CaMg(SO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>⋅7H<sub>2</sub>O dehydrates stepwise at 110°C and 200°C.<br>5. The calcium sulphite when suspended in water is easely oxidized with air bubbles to good gypsum crystals.
著者
猪股 吉三
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1045, pp.527-531, 1982-09-01
被引用文献数
4 4

焼結の進行に伴う表面及び粒界のエネルギーの減少と物質移動速度を関連させ, 立方稠密充てんの等容積球体の収縮速度を理論的に導き, 収縮速度への表面及び粒界エネルギーの寄与を検討した. こうして得られた速度式によれば, 粒界エネルギーが表面エネルギーと同程度か, それ以下であって, 粒成長が起こらなければ, 始めて閉気孔が生成するまでの段階は, 次式で表されることが期待される.<br><i>ΔL/L</i><sub>0</sub>∝<i>t<sup>m</sup></i>ここに0.26<<i>m</i><0.58<br>また, 粒界エネルギーが, 表面エネルギーの√3倍以上であると, この系は完全に焼結せず, 開気孔を残した状態で, 収縮の平衡点に到達することを示し, このような場合についても, 前記した概念に基づいて収縮速度を算出した.