著者
安彦 智史 長谷川 大 プタシンスキ ミハウ 中村 健二 佐久田 博司
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.41-58, 2018 (Released:2019-06-04)

プライベートチャットアプリケーションのID 交換を目的とした掲示板 (ID 交換掲示板 において違法・有害な情報を含む書き込みが増加傾向にある. ID 交換掲示板では,多様な隠語表現を用いたやり取りが行われており意図的に崩された日本語が多く含まれるため,従来の手法では有害性評価を行うことが困難である.そこで本研究では,ID交換掲示板における隠語表現を分類し,特に表層的な表記揺れが生じる環境下でも有害性判定を行える手法を検討する.
著者
高橋 利枝
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-17, 2019 (Released:2019-06-10)

本論文の目的は,人工知能(AI)やロボットがもたらす社会的インパクトを理論的かつ経験的に捉えることである.まず理論枠組みとして,これまで理論と経験的調査研究との往還運動を通して発展させてきた「コミュニケーションの複雑性モデル」について紹介をする.次に,AIやロボットに関する日本と西欧の差異についてアプローチしていく.両者の差異に関しては,これまで思想や宗教的な観点から主に多く説明されてきた.そのため本稿では,ケンブリッジ大学との共同研究「グローバル・AIナラティブ」プロジェクトから,1920年代以降のAIナラティブについて社会経済的な力学から考察を試みたいと思う.さらに人とAI/ロボットとのエンゲージメントに関する実態について,現在行なっている2つの調査研究—若者とAI調査,高齢者のロボット・エンゲージメントから考察する.最後に今後のAI/ロボット開発において必要な「ヒューマン・ファースト・イノベーション」について提案したいと思う.
著者
安岡 美佳 ニールセン レーネ
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.14-30, 2014 (Released:2017-06-08)

人間中心のシステム開発手法の一つであるペルソナ法は,ユーザの顕在ニーズを汲みとり,非顕在化ニーズを洞察するためのデザイン・ツールとして 欧米を中心に利活用されてきた.近年,日本でもペルソナ法が利用されるようになってきたが,活用方法はもとより作成プロセスに関しても参考になる事例 は限られているようだ.ユーザ群を的確に反映するペルソナ作成はペルソナ手法の利用効果を最大化するためには欠かせない. 特に,利用対象者が多岐に渡り多くの属性への対応が不可欠になってくるITシステム,例えば 電子政府の構築においてペルソナ法を利用する場合は,社会的責任や社会全体に対するインパクトが高いことからも,一層適切なペルソナ構築が重要になる.本論は,ペルソナ活 用段階以前の「ペルソナ作成プロセス」に焦点を当て,大規模公共システムのための効果的かつ実践的なペルソナ構築方法を論じる.事例として,国家規模 の電子化の成功事例として国内外で言及されることが多いデンマーク電子政府のアプリケーション,「電子政府ポータル」を扱い,ペルソナ作成には反復を 前提とした精錬プロセスが不可欠であること,さらに,プロセス全般において,利害関係者の積極的な参加が重要であることを示す.デンマークの電子政府 ポータルで活用された参加型を採用した国民を包括するペルソナ群の構築方法は,今後我が国で増加すると想定される社会的インパクトの強いITシステム のためのペルソナ構築事例として,重要な示唆を与えるものと考える.
著者
中山 義人 森 雅広 成末 義哲 森川 博之
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.26-38, 2018 (Released:2019-06-17)
被引用文献数
1

営業活動における意思決定から,営業担当者個人の経験や直感といった属人的要素を取り除くことにより 営業活動を大幅に効率化するための手段が求められている .筆者らはこの 課題に対し, 機械学習モデルを 用いた 業務意思決定支援システムの構築を試みて いる その構築に際し, 受注確率が高い営業活動の プロセス を学習する必要があるため,営業活動の 意思決定 から 規則性を 抽出するプロセス発見技術が不可欠である. 従来の プロセスマイニング におけるプロセス発見手法では ,定型的な業務プロセスを対象として システム出力されたイベントログに含まれるイベントの実行順序の情報から 業務プロセスの規則性やルールを抽出する しかし 営業活動の意思決定においては ルールが予め分かっていないだけでなく 入力情報が営業日誌などの非構造化データであるために ,従来のプロセス 発見 手法 を 適用する ことは困難である そこで 本稿では 業務意思决定支援システムに向けた 営業活動の 意思決定 の プロセス発見手法に対し 非構造化データに基づいた アクティビティ 推定,および,非定型プロセスにおける規則性を確率的に表現するための プロセス推定を用いた プロセス発 見手法を示す.
著者
伊藤 重光
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.10-19, 2016 (Released:2016-08-03)

情報システム学会のキーワードでもある「人間中心の情報システム 」。情報システムが進歩し、社会の隅々まで浸透する時代となり、技術中心ではなく人間中心の情報システムが求められて来ていることを感じるが、何が人間中心であり、何が人間中心でないのかが判りにくい。システムエンジニアとしてコンサルタントとして、そして経営者として長い間情報システムに携わってきた経験をもとに、人間中心の情報システムにはどんな要件が必要なのかを考えてみた。社会の仕組みそのものを情報システムとして捉える必要が出てきている環境変化の中で、人間中心の情報システムを増やすことに少しでも貢献できれば幸いである。なおこの論文は2015年の情報システム学会第11回全国大会・研究発表大会で発表した論文“人間中心の情報システムの判断基準”[1]を基本とし、事後の評価となりがちな判断基準を要件に改め、さらに事例研究を追加して解説としたものである。