15 0 0 0 OA 座位行動の科学

著者
岡 浩一朗 杉山 岳巳 井上 茂 柴田 愛 石井 香織 OWEN Neville
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.142-153, 2013 (Released:2014-06-11)
参考文献数
62
被引用文献数
6

背景:現代社会では,移動や職場,自宅などの様々な生活場面において長時間の座位行動が蔓延している.日常生活における座位時間の多寡が,心血管代謝性疾患のバイオマーカーや2型糖尿病,ある種のがん,早世のような健康アウトカムと関連があるという証拠が急速に蓄積されつつある.重要なのは,これらの関連が身体活動に費やす時間の影響を調整した後でも認められることである.本稿では,成人を対象にした座位行動研究に関する今後の方向性を明らかにするため,近年の研究動向を行動疫学の枠組みを応用することによって概観した.内容:このレビューには,座位行動(座り過ぎ)と健康リスク指標との関連についてのエビデンス,自己報告および機器を用いた座位行動の測度,鍵となる座位行動の分布およびトレンド,座位行動のエコロジカルモデルおよび環境的関連要因,座位時間を減らすための介入の有効性,座位時間を減らすことや中断することに関する公衆衛生勧告の概要を含めた.結論:今後行うべき座位行動研究として,座位時間が健康アウトカムに及ぼす影響を明確に理解するための機器を活用した測度による地域住民を対象にした前向き研究,様々な行動場面における長時間にわたる座位行動の多水準の決定要因を解明するための前向き研究,自宅や職場,移動環境における座位行動を減少および中断させる更なる介入研究,日常生活において座位時間を減らすことに関するメッセージを広めるためのトランスレーショナルリサーチ(マスメディアキャンペーンなど),発症機序および量反応関係を解明するための実験研究などが挙げられる.
著者
安永 明智 柴田 愛 クサリ ジャヴァッド 岡 浩一朗
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.21-27, 2021 (Released:2022-05-14)
参考文献数
47

This study reviewed previous studies and discussed the relationship between sedentary behaviour and mental health in older adults. We also discussed the impact of the COVID-19 pandemic on sedentary behaviour and mental health in older people. The findings suggest that longer sedentary time may have a negative impact on mental health. Especially, previous studies consistently reported that mentally-passive sedentary behaviour, such as television viewing, is associated with poorer mental health in older adults. The COVID-19 pandemic has affected people of all ages, including the older population, by decreasing their physical activity and increasing their sedentary time. These changes in activity have led to deterioration in mental health. Therefore, it is essential to send public health messages to people encouraging them to reduce sedentary time in their daily lives and be physically active to maintain and improve their health, including their mental health, even in the COVID-19 pandemic. It is crucial to reduce mentally-passive sedentary behaviour, such as television viewing, to maintain mental health in older people.
著者
柴田 愛子 曽山 典子 岡村 誠 森 徹
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

我々の研究は、法や規則やモラルに反した行為、例えば、いじめが行われている状態を考える。この違反行為を知りながら傍観する傍観者達の行動を進化的非協力ゲームとしてモデル化し、実験で検証した。この理論によれば傍観者が(1)いじめを報告する(2)報告しない(3)確率p^*で報告するの3つの状況はNash均衡である。しかし、3番目の均衡は進化的不安定な均衡(evolutionarily unstable equilibrium)である。そして、日本人大学生を対象とした8回の実験結果から、いじめを排除するサービスは公共財であり、傍観者の生徒からのいじめについての報告が増える条件は、(1)いじめを報告したときの費用(仕返し等)が小さい。(2)生徒がいじめを傍観することから受ける不効用が大きい(3)教師がいじめを取り上げるのに至る必要な最小報告生徒数が少ないことなどが判明した。しかし、最も重要な結論は、(4)クラスの規模が小さくなれば、協力的行動が増え傍観者が減る結果である。この結論は学校のクラスの小人数化政策を支持する。3回の国際学会で報告され、カルフォルニア大学のDaniel Friedmanとイエール大学のShyam Sunderが高く評価した。(論文は英文で投稿中)これらの結果が、日本人に特有なものか否かを調べる為に、現在までに3回の国際混合実験が行なわれた。実験1は関西学院大学(1998.9.24)で、日本とドイツの大学生10名ずつ、実験2はドイツAugsburg大学(1999.9.6)で、日本人大学生10名、ドイツ人大学生8名日本人留学生2名、実験3が天理大学(2000.11.8)で日本、中国、台湾の大学生を40人集めて実施された。その結果、事前協議効果は同国人と外国人に関係なく存在する。また、異なる国籍のメンバーが同一グループを形成する場合、信頼感が薄くなることが判明した。
著者
柴田 愛子 森 徹 曽山 典子 岡村 誠
出版者
公共選択学会
雑誌
公共選択の研究 (ISSN:02869624)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.34, pp.43-59, 2000-06-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
18

Bullying in school is a serious problem in Japan as well as in most other countries. Bystanders rarely report instances of bullying to teachers, parents and other authorities. In this paper, we model bystander behavior by utilizing the theory of non-cooperative games, which assumes that bullying acts are stopped by a classroom teacher only when more than a certain number of students report the instances. Every bystander stands to gain from the resolution of bullying activity. But when a bystander reports this activity, she will have to deal with psychological and/or physical costs if the total number of reports falls below the required minimum. Under this structure of payoffs in our “bullying game” it can be shown that if all bystanders maximize their expected payoffs, there are two stable symmetric Nash equilibria. At one equilibrium, all bystanders report the instances of bullying to their teacher, and at the other equilibrium, no one reports. We conducted a series of experiments in which subjects played our “bullying game” under various values of parameters. The results of our experiments support the expected payoff-maximizing behavior of bystanders. Based on this verification of expected-payoff maximizing behavior through experiments, we develop guidelines for policies which could serve to increase reporting activity of bystanders and dissolve bullying activity. These include reducing the threshold number for reporting from students, increasing the disutility of students' observing bullying behavior, mitigating the psychological and/or physical costs for the reporting of bullying, and scale down of class size. The effectiveness of each policy is then analyzed theoretically and compared with the other alternatives.
著者
光武 誠吾 柴田 愛 石井 香織 岡崎 勘造 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.361-371, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
26
被引用文献数
3

目的 インターネット上の健康情報を有効に活用するためには,適切に健康情報を検索し,評価し,活用していく能力(e ヘルスリテラシー)が必要であるが,我が国では e ヘルスリテラシーを測る尺度すらないのが現状である。本研究では,欧米で開発された eHealth Literacy Scale (eHEALS)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性を検討するとともに,e ヘルスリテラシーと社会人口統計学的特性およびインターネット上の健康情報に対する利用状況との関連を検討した。方法 社会調査会社にモニター登録している3,000人(男性:50.0%,年齢:39.6±10.9歳)にインターネット調査を実施した。eHEALS 日本語版 8 項目,社会人口統計学的特性 6 項目,インターネット上での健康情報に関する変数 2 項目を調査した。探索的因子分析による項目選定後,構成概念妥当性は,確証的因子分析による適合度の確認,基準関連妥当性は,相互作用的•批判的ヘルスリテラシー尺度との相関により検討した。また,内部一貫性(クロンバックの α 係数)および再検査による尺度得点の相関により信頼性を検証した。さらに eHEALS 得点と社会人口統計学的およびインターネット上での健康情報に関する変数との関連の検討には,t 検定,一元配置分散分析,χ2 検定を用いた。結果 eHEALS 日本語版は 1 因子構造であり,確証的因子分析では一部修正したモデルで GFI=.988, CFI=.993, RMSEA=.056と良好な適合値が得られた。また,eHEALS 日本語版得点は,相互作用的•批判的ヘルスリテラシー尺度得点と正の相関を示した(r=.54, P<.01)。信頼性については,クロンバックの α 係数は.93であり,再調査による尺度得点の相関係数は r=.63 (P<.01)であった。eHEALS 日本語版得点は男性より女性,20代よりも40, 50代,低収入世帯よりも高収入世帯,インターネットでの情報検索頻度が少ない者より多い者で有意に高かった。また,eHEALS 日本語版得点の高い者は,健康情報を得るために多くの情報源を利用しており,その中でも特にインターネットを活用し,インターネットから取得している健康情報の内容も多様であった。結論 eHEALS 日本語版は我が国における成人の e ヘルスリテラシーを評価するために十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。今後も増加するインターネット上の健康情報を個人が適切に活用するためには e ヘルスリテラシーが重要であることが示唆された。
著者
柴田 愛 石井 香織 安永 明智 宮脇 梨奈 小﨑 恵生 クサリ・ ジャヴァッド 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2202, (Released:2023-03-31)

目的:本研究は,世界各国で策定された座位行動指針について概観し,その内容や特徴,策定背景を整理し,日本の成人(高齢者を含む)および子ども・青少年を対象にした座位行動指針策定に向けた基礎資料を得ることを目的とした。 方法:概観した座位行動指針は,身体活動・座位行動研究が格段に進展しており,十分な研究成果に基づいて指針が策定されているオーストラリア,アメリカ,イギリス,カナダ,WHOの5つの国・機関とした。 結果:成人に対する座位行動指針として,「長時間にわたる座位行動をできるだけ少なくすること」や「できるだけ頻繁に座位行動を中断すること」といった内容が,文章表現はわずかに異なるものの,すべての国・機関において共通して言及されていた。一方,子ども・青少年のための座位行動指針では,「余暇におけるスクリーンタイムを2時間までにすること」や「長時間の座りっぱなしを中断すること」に注目した内容が示されていた。 結論:日本の成人および子ども・青少年に対する座位行動指針を策定する際には,座位行動が種々の健康アウトカムに及ぼす影響について,諸外国および日本における研究の動向を整理し,それらの成果を踏まえた上で,日本の成人に対する座位行動指針策定の際に閾値の設定を行うかどうか十分に議論することが重要である。
著者
柴田 愛 渡邊 和彦 吉尾 政信 石井 実
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.59-69, 2002-09-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
44

モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora Boisduval)の成虫の日周活動を25〜28℃14L-10Dの実験空間(290×320×高さ240cm)において観察した.天井には40Wの白色蛍光灯32本を設置し, 床面中央の照度を約2, 000lxに保った.床面には人工芝を敷き, 蜜源や休息のための植物, キャベツなどを配置した.実験は3シリーズ行ない, それぞれ雌10個体(雌区), 雄10個体(雄区), 雌雄各5個体(雌雄区)を放飼して3日間ずつ行動を観察した.(1) 飛翔および吸蜜活動については, すべての区で明期開始から約2時間は活性が低く, 5〜9時間目に高まり, 明期終了前約2時間は活性が再び低くなる活動リズムが観察された.(2) 飛翔に費やす時間は雄区で最も長く, 雄区・雌雄区ともに雄の探雌飛翔は明期の前半に長い傾向が認められた.(3) 雌区では明期を通じて植物に静止している個体が多く, 雌雄区の雌は短い飛翔を繰り返した.(4) 産卵活動は明期の前半に多く見られたが, 雌雄区の雌では, 明期終了直前にも産卵と吸蜜活動に小ピークが見られた.(5) 「はばたき反応」は, 雄区では明期後半に多く見られたが, 雌雄区の雄ではほとんど見られなかった.(6) すべての区において, 雌雄ともに明期終了前に植物に静止する行動が見られたが, これは植物を寝場所とするためと考えられた.(7) これらの結果から, モンシロチョウ成虫の活動は, 温度や光周条件などさまざまな環境条件が保たれた空間でも一定の日周性を示すが, 同性間, 異性間の個体間干渉によって変化することが示唆された.
著者
黒澤 彩 柴田 愛 石井 香織 澤田 亨 樋口 満 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-19, 2019-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
52
被引用文献数
1

目的:座位行動や身体活動の日内パターンの解明を主目的とした研究についてシステマティックレビューを行い,これまでの知見を整理し,今後の課題を明らかにすることを目的とした。方法:5つの文献データベースで検索した論文について,採択基準(成人,時間帯別の座位行動または身体活動に関する内容を含むなど)を基に該当論文を選定し,1)座位行動および身体活動の日内パターンの分布・傾向,2)座位行動および身体活動の日内パターンに関連する要因,3)座位行動および身体活動の日内パターンと健康アウトカムの関連という3つの観点から整理した。結果:採択論文27編のうち,2015年以降欧米や豪州の高齢者層を中心に,加速度計法で評価した座位行動や身体活動を1時間ごと,あるいは1日を3つに区分して検討した研究が主流であった。分布・傾向を検討した12編の主な傾向として,日内の遅い時間帯で座位行動レベルの上昇と身体活動レベルの低下がみられた。また,関連要因を検討した21編の多くで,性別や年齢,肥満度と座位行動や身体活動パターンに関連がみられた。健康アウトカムとの関連を検討した研究は1編のみであった。結論:座位行動や身体活動の日内パターンを検討した論文は少なく,対象者の居住地域や年齢,扱われた関連要因や健康アウトカムに偏りがあった。 セグメント化した介入のため,今後は対象者の特性別,特に我が国の壮年・中年層を含めた研究成果の蓄積が必要である。
著者
宮脇 梨奈 石井 香織 柴田 愛 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.85-94, 2017 (Released:2017-03-16)
参考文献数
44
被引用文献数
2

目的 主要メディアのひとつである新聞に掲載されたがん予防関連記事の掲載頻度およびその内容について検討することを目的とした。方法 2011年に発行された全国紙 5 紙(読売,朝日,毎日,日本経済,産経新聞)の朝夕刊に掲載されたがん予防関連記事を対象に,掲載紙,掲載月,朝夕刊,情報元を確認した。その上で,予防記事に対しては,人のがんにかかわる要因の記載の有無,そのうち生活習慣関連要因(喫煙,食物・栄養,飲酒,運動・身体活動,肥満)が記載された記事では予防,リスク,推奨基準の記載の有無,および詳細内容を確認した。検診記事に対しては,検診部位,対象者,受診間隔の記載の有無,および受診を促進する内容であるかを確認した。結果 がん予防関連記事は全国 5 紙のべ272件(がん関連記事全体の5.1%)確認され,そのうち予防は208件で取り扱われていた。また,記載された人のがんにかかわる要因では,食物・栄養が56件,持続感染が40件,喫煙が32件と多かった。生活習慣関連要因の中でも飲酒(12件),運動・身体活動(11件),肥満(10件)は少なかった。また,食物・栄養以外では予防よりもリスクの取り扱いが多く,推奨基準の記載はのべ13件であった。一方,検診について取り扱う記事は92件であった。その中では,乳がん検診が31件と最も多く,その他のがん検診は20件に満たなかった。また,検診対象者や受診間隔は7件,検診受診を促進する内容は39件の記事で記載されていた。結論 新聞においてがん予防関連記事は取り上げられているものの十分とは言えず,掲載されていた記事においても取り扱われる生活習慣関連要因や検診部位には偏りがあり,具体的な基準を示す記事は少ないことが明らかとなった。新聞の影響力を考えると,今後はいかに,具体的な予防行動やその基準,検診対象者や受診間隔などを含めた記事の取り扱いを増やしてもらうかを検討する必要性が示唆された。
著者
柴田 愛子 坂井 優
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.96-104, 2002-02-15

分析の目的: 中央政府から地方政府への移転支出の配分構造を公正と効率及び政治的影響の視点から分析する。中央政府から地方政府への移転支出は、地方交付税交付金、地方譲与税、国庫支出金からなり、地方交付税交付金は多額で国家予算の2割を超える。その財源は、国税3税(所得税、法人税および酒税)の32%に平成元年より消費税の24%、たばこ税の25%が追加された。移転支出はナショナルミニマムの達成を目指すとされる。つまり公平性の観点からの所得再分配である。しかし、ナショナルミニマムの達成を超えた移転が行われている可能性も示唆される。つまり、移転支出は人口、面積等の客観的指標の他に、政治的要因も影響を与えているといわれる。また、長年そうした移転支出が行われていれば、公共投資の生産性の面で非効率な公共投資も行われるであろう。そこで、公平と効率の面、および、政治的影響の視点から移転支出を分析しようとする。分析手法:モデルを構築し、自己組織化マップ(SOM)と統計的手法を併用する。(SOMについてはAppendixを参照)次のようなモデルを導入する。Y=a+bx+e Yは移転支出で、Xは以下に示す変数であり、eは誤差項である。Xには人口と面積という客観的指標に、県民実質所得と政治的要因を加えた。そして、生産力の指標と地方債現在高の要因も付加した。A.まず、1991年の都道府県別クロスセクションデータを用いて分析する。1991年の単年度データを分析した理由は、自民党単独政権最後の第39回衆議院選挙(1990年)の結果を政治的要因の指標とした為である。いわゆる「55年体制」が終わり連立政権が成立したのは1993年の第40回衆議院選挙である。単年度分析では、回帰分析した後、自己組織化により作られたクラスタ内のノードを利用して、都道府県のクラスタ分析をした。B.さらに、この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の時系列データの統計分析とクラスタ分析について検討する。分析結果:A.1991年の単年度分析の結果は、いくつかの政治的要因変数は有意ではないが、しかし、ほとんどの変数は5%水準で有意である。また調整済みの決定係数は0.975と非常に高く、モデルの当てはまりはよい。上記結果は都道府県を総括した結果である。しかし、地方により経済、社会、文化の事情は異なる。そこで、データを細分化して類似した都道府県をクラスタにまとめ、そのクラスタごとの分析を試みた。都道府県のデータ(上記説明の10要素)を入力データとし、自己組織化マップ(SOM)を使い図を描き、ノード数の大きなクラスタを第1、第2クラスタとして選択した。そして、移転支出の公平性と効率性についてみれば、全国データとクラスタデータでは、違いが見られた。また、政治的要因については、全国データの分析をよりわかりやすく理解できる結果を得た。B.この分析結果を踏まえ、1977年から1995年の都道府県パネルデータの統計分析とクラスタ分析について検討する。統計分析(固定効果モデル)は所得以外の仮説を支持した。さらにSOMによるクラスタ分析は公平性の仮説、つまり、所得が減れば、移転支出が増加するを支持した。分析の独創性:1991年の都道府県のクロスセクション分析において、SOMのクラスタ手法が利用され、結論が導かれた。幾つかのクラスラリングの手法はある。しかし、問題は都道府県別の限られたデータをさらにクラスタに分けるとデータ数が減ってしまう。そして、クラスタごとの統計分析をするのに問題が生じる。そこで、SOMという新しい手法によるクラスタリングを試みた。SOMでは、入力データに類似したデータを自己組織化で作るという特徴がある。SOMでクラスタリングマップを作った場合は、データ数が不足するという問題をある程度解決できる。さらに、パネルデータをクラスタに分け自己組織化マップで分析し、統計手法を併用することで、仮説を新たな角度から検討することができる。結論:SOMは特にクラスタリングに優れ、可視的な手法が、評価される。例えば、パネルデータの都道府県の自己組織化マップ上の動きは、今後の研究方向を示唆する。そして、自己組織化マップは、これからの研究開発が期待される手法である。
著者
岡崎 勘造 柴田 愛 石井 香織 助友 裕子 河村 洋子 今井 (武田) 富士美 守屋 希伊子 岡 浩一朗
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.235-244, 2011 (Released:2011-11-23)
参考文献数
24

The present case study evaluated an environment-focused project for promoting walking, which included the development of walking courses (using public spaces, parks, roads) with stations for smart cards in the community and an interfaced internet-based self-monitoring system. The project was started in 2008 in Misato City of Saitama Prefecture. In this project, individuals can participate by paying a registration fee (500 yen) and obtaining their own cards. If registrants walk the course, holding their cards over a scanner at 3-4 stations, the smart card records their data (e.g. distance and time spent in walking) from one to the other station and transfers these to a self-monitoring system. As a result, registrants could check their data online. From June 2008 to November 2009, a total of 631 individuals (62% female) who obtained the information from newspaper, magazines, website, or some local events, registered for this project. From walking data collected automatically in the database through the self-monitoring system, it was found that 445 registrants (63% female) used this system at least once, and most of the registrants were 40 years old or more. This suggests that the project in this study might have been effective in promoting walking only among older people. Also, most of the registrants lived around the courses. In particular, the courses in the area surrounded by beautiful nature and residential areas were often used. To expand this idea to other age groups, new attempts, including a point supplying system based on the distance of walking are under development.
著者
柴田 愛子 森 徹 曽山 典子 岡村 誠
出版者
関西学院大学
雑誌
Working papers series. Working paper
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1_a-15, 1999-10

Bullying in school which would be detrimental to the development of human resources is a serious problem in Japan as well as in other countries. Bystanders rarely report instances of bullying to teachers, parents and other authorities. In our study, bystander behavior is modeled as a non-cooperative game by assuming that bullying can be stopped by a teacher only when more than a certain number of students report the instances. Every bystander stands to gain from the resolution of bullying activity (i.e. the consumption of public goods). But when a bystander reports this activity, that bystander will have to deal with psychological and / or physical costs (i.e. the private costs) if the total number of reports falls below the required minimum. We see that one of the two stable symmetric Nash equilibria is reached, depending on the threshold numbers, payoffs and the costs of reporting. At one equilibrium, all bystanders report the instances of bullying to their teacher. and at the other equilibrium, no one reports. The results of our experiments support our model and the expected payoff-maximizing behavior of bystanders. From this the major policy implication reached is that by lowering the number of students in a classroom, reporting activities of bystanders would increase. Other policy suggestions which could serve to increase reporting activity of bystanders include reducing the threshold number for reporting from students, increasing the disutility of students' observing bullying behavior, and mitigating the psychological and / or physical costs for the reporting of bullying.