- 著者
-
宮脇 梨奈
石井 香織
柴田 愛
岡 浩一朗
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.2, pp.85-94, 2017 (Released:2017-03-16)
- 参考文献数
- 44
- 被引用文献数
-
2
目的 主要メディアのひとつである新聞に掲載されたがん予防関連記事の掲載頻度およびその内容について検討することを目的とした。方法 2011年に発行された全国紙 5 紙(読売,朝日,毎日,日本経済,産経新聞)の朝夕刊に掲載されたがん予防関連記事を対象に,掲載紙,掲載月,朝夕刊,情報元を確認した。その上で,予防記事に対しては,人のがんにかかわる要因の記載の有無,そのうち生活習慣関連要因(喫煙,食物・栄養,飲酒,運動・身体活動,肥満)が記載された記事では予防,リスク,推奨基準の記載の有無,および詳細内容を確認した。検診記事に対しては,検診部位,対象者,受診間隔の記載の有無,および受診を促進する内容であるかを確認した。結果 がん予防関連記事は全国 5 紙のべ272件(がん関連記事全体の5.1%)確認され,そのうち予防は208件で取り扱われていた。また,記載された人のがんにかかわる要因では,食物・栄養が56件,持続感染が40件,喫煙が32件と多かった。生活習慣関連要因の中でも飲酒(12件),運動・身体活動(11件),肥満(10件)は少なかった。また,食物・栄養以外では予防よりもリスクの取り扱いが多く,推奨基準の記載はのべ13件であった。一方,検診について取り扱う記事は92件であった。その中では,乳がん検診が31件と最も多く,その他のがん検診は20件に満たなかった。また,検診対象者や受診間隔は7件,検診受診を促進する内容は39件の記事で記載されていた。結論 新聞においてがん予防関連記事は取り上げられているものの十分とは言えず,掲載されていた記事においても取り扱われる生活習慣関連要因や検診部位には偏りがあり,具体的な基準を示す記事は少ないことが明らかとなった。新聞の影響力を考えると,今後はいかに,具体的な予防行動やその基準,検診対象者や受診間隔などを含めた記事の取り扱いを増やしてもらうかを検討する必要性が示唆された。