- 著者
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三輪 和久
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
- 巻号頁・発行日
- vol.97, no.9, pp.782-787, 2014-09-01
現代社会は,あらゆる種類の自動化システムに支えられている.自動化システムに代表されるコンピュータによる作業支援は,作業遂行能力を向上させる一方で,過剰利便性の副作用が起こす課題を意識することも少なくはない.本稿では,過剰利便性の副作用としての課題遂行能力の退化を,人間機械系における過剰支援に伴う「認知的廃用性萎縮」と捉える.「廃用性萎縮」とは,長期にわたる身体動作支援において,特定の身体的機能を使わないことにより,筋肉等の機能が縮退する現象を指す.本稿で議論する過剰利便性の副作用の問題は,これらの萎縮が,身体的機能に限らず,認知的機能においても生じる可能性があることを意味する.本稿では,認知心理学や学習科学,教育心理学の領域で確立されてきた認知負荷理論と達成目標理論という二つの理論に基づき,認知的廃用性萎縮の背後にある人間の認知情報処理の諸特性を明らかにするとともに,その解決へ向かう土台を与える.