著者
三輪 和久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.782-787, 2014-09-01

現代社会は,あらゆる種類の自動化システムに支えられている.自動化システムに代表されるコンピュータによる作業支援は,作業遂行能力を向上させる一方で,過剰利便性の副作用が起こす課題を意識することも少なくはない.本稿では,過剰利便性の副作用としての課題遂行能力の退化を,人間機械系における過剰支援に伴う「認知的廃用性萎縮」と捉える.「廃用性萎縮」とは,長期にわたる身体動作支援において,特定の身体的機能を使わないことにより,筋肉等の機能が縮退する現象を指す.本稿で議論する過剰利便性の副作用の問題は,これらの萎縮が,身体的機能に限らず,認知的機能においても生じる可能性があることを意味する.本稿では,認知心理学や学習科学,教育心理学の領域で確立されてきた認知負荷理論と達成目標理論という二つの理論に基づき,認知的廃用性萎縮の背後にある人間の認知情報処理の諸特性を明らかにするとともに,その解決へ向かう土台を与える.
著者
内藤 航 上坂 元紀 石井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.144-150, 2015-02-01

福島第一原発の事故に伴い放出された放射性物質により汚染された地域において,外部被ばく線量に対する住民の不安軽減や行政による効果的な被ばく低減対策の検討には,外部被ばく線量がどのように評価されているかを正しく理解し,いつ・どこで・どれくらい被ばくしているかを知ることが重要である.1時間ごとに被ばく線量が記録できる小形個人線量計のデータと空間線量データ,更にGPSや個人の行動情報をGIS上で統合し解析した結果は,適切な放射性物質のリスク管理のあり方の検討において貴重なデータとなる.本稿では,福島県の中通り地区に在住する方々に協力を頂き実施している,効果的な管理・対策のための外部被ばく線量の評価研究の内容を紹介する.
著者
吉瀬 謙二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.758-763, 2014-09-01

計算機アーキテクチャ分野の研究者及び技術者を対象とする新しい試みとして,ハイパフォーマンスプロセッサ設計コンテスト(The 1st IPSJ SIG-ARC High-Performance Processor Design Contest)を企画・実施した.決められたFPGAボードを用いて,性能の高い計算機システムを設計したチームが優勝である.決勝は2014年1月に行われ,予選を通過した11チームによる戦いが繰り広げられた.本稿では,このデザインコンテストの設計と実現について述べる.
著者
大津 繁樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:21882355)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.727-733, 2014-08-01

ブラウザとWebサーバの間をつなぐ次世代のWebプロトコル(HTTP/2)は,IETFにおいて2014年の標準化完了を目指し,現在急ピッチで仕様策定作業が進められている.HTTP/2は,Googleが開発したSPDYプロトコルをベースとして,その無駄な部分を見直し,より効率的で汎用性が高い通信を実現している.2013年8月からプロトタイプを使った相互接続試験が開始され,2014年夏に最終仕様案の候補が提出される予定である.本稿では,HTTP/2のこれまでの歩み,仕様の概要,相互接続試験で見えた現状の課題と今後の展望について述べる.