- 著者
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中井 幹雄
川口 和也
- 出版者
- 一般社団法人 日本機械学会
- 雑誌
- Dynamics & Design Conference 2006 (ISSN:24242993)
- 巻号頁・発行日
- pp._109-1_-_109-6_, 2006-08-06 (Released:2017-06-19)
- 被引用文献数
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ピアノ弦のような曲げ剛性をもつ弦の振動における倍音周波数より高い周波数の系列であるInharmonicityの第1系列と異なる第2の系列について述べる. Inharmonicityの第1系列における第n次の周波数計算では, f_n=nf_0√<1+Bn^2>が一般的に用いられている.ここで, f_0は弦の曲げ剛性を考慮しない場合の固有振動数である.また, Bは非調和度と呼ばれる無次元量である.第1系列と異なる第2の系列では,その非調和度は第1系列の1/4の値となることが経験的にわかっている.打弦および撥弦時のInharmonicityの第2系列の発生機構について実験を行った.周波数スペクトルから各次数のピーク周波数を読み取り,その次数の倍音周波数との差を固有振動数で除し,無次元化した値を各次数について計算する.それらの結果とともに第1系列の周波数値を用いて,和および差の周波数を表す格子線を図A1に示す.実線,点線は第1,2系列を示す.図において,微小なピークはほぼ格子点に一致し,第1系列周波数の和および差の周波数をもつことが明らかとなった.また,この格子線は包絡線をもっており,包絡線周辺は格子点の間隔が狭くなり,数多くのピークが集中することが明らかとなった.この包絡線が,理論的に正確に第1系列の非調和度の1/4の値をもつ曲線となっていることがわかり,第2系列を含むすべての微小なピークの周波数特性が明らかとなった.これらの微小なピークは,弦が大変形するという幾何学的非線形性が原因となって発生すると考えられるので,弦の横振動および縦振動を考慮した次式のような非線形方程式を用いて第2系列について検討した. ρA(∂^2u)/(∂t^2)=EA(∂^2u)/(∂x^2)-(T_0-EA)(∂^2w)/(∂x^2)(∂w)/(∂x) (A1) ρA(∂^2w)/(∂t^2)=T_0(∂^2w)/(∂x^2)-EI(∂^42)/(∂x^4)-C_D(∂w)/(∂t)-(T_0-EA){(∂^2w)/(∂x^2) (∂u)/(∂x)+(∂w)/(∂x) (∂^2u)/(∂x^2)+3/2((∂w)/(∂x))^2(∂^2w)/(∂x^2)} (A2) 図A2(a), (b)は数値計算した横振動と縦振動の変位の周波数分析結果を示す.この図で黒丸が第1系列,白丸が第2系列を示している.この図から,8次モードから第2系列が生じ始めることおよび縦振動のピークと第2系列がほぼ一致していることがわかる.このことは式(A1)におけるwの2次の非線形項が横振動の2つの周波数の和あるいは差をもつ外力として縦振動に作用するとみなすことができることからわかる.さらに,横振動の周波数分析結果に和および差の周波数をもつピークが主に現れることがわかった.しかし,横振動には主に任意の2つの第1系列周波数の和・差の組み合わせ周波数からなる第2系列を含む微小なピークのほかのピークも含まれている.したがって,さらに,横振動については,方程式を検討する必要がある.