著者
遠山緑生 田尻慎太郎 岩月基洋 岡本潤 木幡敬史 白鳥成彦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.129-138, 2015-04-15

本稿では,社会科学系の小規模大学である嘉悦大学において著者らが取り組んできた「デジタルネイティブ世代の学生が,正課の内外共に大学において積極的にICTを使いこなすようになること」を目標とした教育改善の取り組みについて,ICTリテラシー教育のカリキュラム設計とICT利用環境整備の双方の観点から紹介する.ICTリテラシー教育の内容を全面的にアクティブラーニングによる問題解決型のものに刷新するとともに,これを支えるインフラとしてのICT利用環境は,BYODとクラウドサービスの徹底活用を基本方針とし,従来型のPC教室やオンプレミス型サーバを廃止・縮小した環境を整備した.
著者
関堅吾 金子崇之 山下真一
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.110-119, 2014-04-15

2013年10月現在,Twitterはアクティブユーザ数が2億人以上,1日の投稿ツイート数は5億件以上[1]と,最も活発なWebサービスの1つである.(株)NTTデータが運営する「Twitterデータ提供サービス」は,そのような大量の公開ツイートをFirehose APIを通じて収集し,すべての日本語ツイートを,特性の異なる複数のWeb APIによりユーザに提供するサービスである.Firehoseを利用するシステムは,トラフィックの継続的な増加,ツイート数の瞬間的な急増,データの再取得の難しさなど,さまざまな課題に対処する必要がある.本論文では,OSSを全面的に活用し,これらの課題に対応したシステムの事例を紹介する.
著者
イェユンウェン 中小路久美代
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-124, 2011-04-15

組織やグループで現在開発中の,あるいは既に開発したシステムやオープンソースといった大量のソースコードを,その組織の知財として活用が望まれてている。そのようなソースコードに特化して検索するのが,エンタープライズ検索エンジンCodeDepotである.CodeDepotは,ソースコードを構造化された自然言語の文書とみなし,プログラムの構造情報と意味情報を同時に考慮しながら,正規化処理と重複インデキシングを行なう.これにより,ウェブインタフェースを介して数億行以上の大規模ソースコードを瞬時に検索でき,現場での実用に耐えるシステムとなっている.検索クエリ文字列のバリエーションや複雑な条件検索,さらには文字列をトークンに置換することで,コードクローンと呼ばれる構造的に類似するプログラム断片を,インタラクティブに検索できる.現時点で数十のソフトウェア開発組織で,コーディング作法の学習や保守のような開発作業の様々な局面で利用されている.利用した開発者からは,システムの高速性と簡便性が高く評価されている.
著者
真鍋 大度 石橋 素
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.279-287, 2017-10-15

筆者らは2005年ごろよりアートパフォーマンス作品の制作に携わるようになり,2010年ごろからはエンタテインメントの領域でも活動を続けている.主にテクノロジーを用いた舞台・ステージ表現を開発,実践してきたが,それらは映像表現だけによらず,物理的なオブジェクトや装置を伴うところが大きな特徴の1つである.本稿では,過去に筆者らが実践した具体的な事例を,作品に用いた物理的なオブジェクト・装置に着目して「空中移動体」「飛翔体」「地上移動体」「発光体」という4つのカテゴリで総括し,その表現の狙いや,実装手法・制作手法とその工夫点などについて述べる.これらは技術を見せるためのものではなく,新しい演出や表現を支えるものである.そのためには高い安定性・確実性が必要であり,開発したハードウェアの検証,ソフトウェア・シミュレータの機能の充実,人と物・技術の融合した演出の制作環境の整備も積み重ねてきた.
著者
佐藤 彰洋 福田 豊 和田 数字郎 中村 豊
出版者
情報処理学会
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.624-635, 2020-07-15

国立大学法人において,サイバー攻撃によるセキュリティインシデントが多発している.その攻撃に抗するため,我々が属す九州工業大学情報基盤運用室では学外公開アドレス管理システムを構築した.本システムの特徴は,学外公開,すなわち学外から到達可能なIPアドレスを付与した機器に関する情報共有と,それに対する措置として脆弱性改善と通信制御を実現したことにある.その導入により,本学のネットワークにおいて高い堅牢性の実現を確認した.本稿では,学外公開アドレス管理システムの設計と,12カ月にわたるシステムの運用による有効性の評価,そこから得られた知見について報告する.
著者
鬼頭 武嗣
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.539-549, 2019-07-15

本稿は,不動産クラウドファンディングプラットフォームの設立・運営とそれにかかわる制度設計に事業者の立場で4年にわたって取り組んできた中での課題意識とソリューション,そして今後の展望について述べる.
著者
平本健二
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.52-59, 2012-01-15

CIOは,情報システムのガバナンスに留まらず情報活用全般を担当する.様々な情報が集まり,職員がそれをもとに政策の立案,執行するという経済産業省の組織の特性を考えると,CIOチームにとって,情報システムのガバナンス向上やコスト削減はもちろん重要であるが,情報の価値の最大化,人材の価値の最大化は非常に大きなミッションと言える.一方,行政機関を取り巻く環境は大きく変化してきており,オープンガバメントといわれる国民と一緒に取り組みを行う新しい行政スタイルが模索されてきている.さらに,国民本位の行政サービスを実現するため,情報を軸としたマーケティングの視点が非常に重要となってきている.そこで,国民の声を収集し活用するために,国民と共に職員も参加する電子掲示板を活用し,その意見の情報分析を実施し,さらにその分析方法をソーシャルメディアで流れる情報に適用することで,掲示板などに参加しない国民の意見の分析も実施した.本論文では,その検証の結果を整理し,国民の声を活用した新しい行政モデルとCIOの役割について考察する.
著者
西潟 憲策 佐々木 裕之 安藤 寿之 野沢 善浩 中谷 貴子
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.275-283, 2016-07-15

アジャイル開発は,開発プロセスだけでなく,プロジェクト管理の考え方も従来の方法とは大きく異なる.ベンダとして,さまざまなプロジェクトにおいてアジャイル開発を適用し,成功に導くためには,アジャイル開発の経験と実績を積み重ねることが重要である.筆者らは,これまでにもNECグループ内のツール開発やクラウドサービス開発において,積極的にアジャイル開発を採用し,ノウハウを蓄積するようにしてきた.今回,当社の新規ビジネス領域のクラウドサービス開発において,アジャイル開発を適用した.本稿では,当事例について,要件の検討と変更への適用の取り組みを中心に紹介する.
著者
中井俊文 石田浩二 安浦寛人
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-178, 2015-04-15

東日本大震災以降,各自治体で防災計画の見直しが行われている.福岡県糸島市も緊急時防護措置準備区域を抱える自治体である.我々は,糸島市と協力し,有事の際の住民の円滑な広域避難体制の確立を目指し,ICTを利用した避難支援システムを開発し,避難訓練にて実証実験を実施した.その結果,ICTを用いることにより,過去に行ってきた避難訓練の結果を革新的に変え,住民の確認時間を1/4に削減することにより全体の避難時間を1/2とすることが可能となった.加えて,本システムを有効に利用するためには,今後検討しなければならない課題もあることが判明し,その解決法について検討を行った.
著者
小林 茂 水野 祐
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.128-135, 2016-04-15

多様なスキルや視点,経験を持つ人々が新しい製品やサービスを短期間で共創するイベント「ハッカソン」や「メイカソン」における民族誌調査を基に,主催者側および参加者側の双方にとって適切に知的財産を取り扱うことを盛り込んだ参加同意書を作成し,同様のイベントにおいて活用できるよう2014年2月にテンプレートとして公開した.さらに,公開後に行った調査で新たに見つかった課題に対し,イベントの期間中における知的財産の定義および権利化の意思確認を行う終了後の確認書を追加して2015年2月に更新した.2015年9月から12月までに行ったイベント主催者に対する調査結果から,この参加同意書は日本国内のイベント主催者に広く認知され,多くの場合において派生物が利用,または参考にされていることが確認できた.
著者
遠山緑生 田尻慎太郎 岩月基洋 岡本潤 木幡敬史 白鳥成彦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.129-138, 2015-04-15

本稿では,社会科学系の小規模大学である嘉悦大学において著者らが取り組んできた「デジタルネイティブ世代の学生が,正課の内外共に大学において積極的にICTを使いこなすようになること」を目標とした教育改善の取り組みについて,ICTリテラシー教育のカリキュラム設計とICT利用環境整備の双方の観点から紹介する.ICTリテラシー教育の内容を全面的にアクティブラーニングによる問題解決型のものに刷新するとともに,これを支えるインフラとしてのICT利用環境は,BYODとクラウドサービスの徹底活用を基本方針とし,従来型のPC教室やオンプレミス型サーバを廃止・縮小した環境を整備した.
著者
上田浩 中村素典 古村隆明 神智也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.97-104, 2015-04-15

筆者らは大学の情報系センターでの経験から,大学等における情報倫理教育には次の3つの問題:(1)標準化と可視化がなされていない,(2)留学生への教育が困難,(3)持続可能性が低い,があり,これらの問題に対処し,大学等における情報倫理教育を充実させるため「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」に準拠し日英中韓の4カ国語に対応した情報倫理eラーニングコンテンツ「倫倫姫」を開発し運用してきた.2012年11月より「倫倫姫」は,学認連携Moodleにおいて,学認参加機関であれば無償で利用できるようになっている.本稿では「倫倫姫」開発・運用を総括するとともに,複数の大学等に本コンテンツを提供している学認連携Moodleの構築・運用事例とそこから得た知見を報告する.

2 0 0 0 OA 表紙・目次

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, 2015-04-15
著者
中村徹 渡辺龍 清本晋作 高崎晴夫 三宅優
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-20, 2015-01-15

筆者らは2011年より,データ対象者のプライバシーを適切に保護できるパーソナルデータ流通基盤として,Privacy Policy Manager(PPM)の設計と開発を行ってきた.本稿では特にプライバシー保護の観点から必要となる要件定義を中心として,PPMの設計について説明する.次に筆者らがこれまで進めてきたPPMのプロトタイプ開発について紹介する.さらに,2013年に行ったPPMの実証実験,および経産省ベストプラクティス認定について紹介する.

2 0 0 0 OA 表紙・目次

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, 2015-01-15
著者
樋渡仁 吉川美奈子 岩村相哲
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.325-332, 2014-10-15

遠隔拠点にあるクラウドコンピューティング環境(以下,単にクラウド環境)を構築・運用していく上で,装置の故障・障害にどのように対処するかは,運用コストの最小化において重要である.特に,遠隔拠点に作業員が常駐せず定期的に現地を訪問し保守作業する前提では,構築時に系全体に冗長性を持たせ,装置の故障・障害が発生した場合には,遠隔から現用系より待機系に切り替えることで,当該装置の修理・復旧は現地での定期保守時に行う運用が典型的である.このような遠隔クラウド環境の設計では,構築時に系全体が保持する信頼度に対し,定期保守回数を最小化する必要があり,本論文は,クラウド環境の信頼性モデルにより,運用コストが最小化された設計を実現できることを示す.特に,クラウド環境の立ち上げ時には,サーバの故障率が,故障率曲線における初期故障期から偶発故障期へ至る過程で大きく変動するため,本手法の適用においては,定期保守の間隔を初期故障期と偶発故障期で使い分けることが有用であることを示す.
著者
中島康之
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.271-279, 2014-10-15

携帯電話を取りまくネットワーク環境や携帯電話の処理性能,蓄積容量はこの10年で目覚ましい進化を遂げている.また,携帯電話自体も比較的限られたサービスや操作を提供していたフィーチャーフォンから,より直感的な操作と,パソコンと同じようにオープンなサービス・アプリケーション環境のスマートフォンへと大きく変貌してきている.音楽サービスについては,携帯電話の登場初期は着信メロディなど比較的シンプルなサービスでスタートしたが,このような環境変化の中でどのような変化や進化があったか,また今後どのようなことが予想できるのかについて,音楽サービスとして提供している,「LISMO」の例を用いて述べる.
著者
横塚裕志
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.26-33, 2012-01-15

ビジネスに貢献するICTとは,どのようなものだろうか.ビジネス戦略と融合したICTを,CIOはどのように決断しているのだろうか.ビジネス戦略とマッチしていないICTでは,どんなに大きな投資をしたとしても,意味をなさないことは言うまでもない.本稿では,ビジネスとICTの融合をどのように決断していくべきかを実際に経験したプロジェクト(東京海上日動の「抜本改革プロジェクト」)を例にとって,検証をしてみる.その上で,ビジネスとICTを融合する能力とは何かを整理する.そして,その能力を身につけていく人材をどのように育成していけばいいかを考える.ビジネスとICTを融合できる能力は,先端技術を深堀りするような技術力とは大きく違っており,ビジネス戦略の骨格を支える経営能力と考えるべきである.