著者
小林 龍生
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.7-24, 2019-01-15

ISOやIEC,ITU-Tなどの公的規格(de jure standard)にせよ,W3CやIETFなどの業界規格(de facto standard)にせよ,情報規格の策定過程では,しばしば,国と国,企業と企業,文化と文化の利害が鋭く対立する.ISO/IEC 10646やUnicode Standardなどの符号化文字集合は,標準化の対象が自然言語に用いられる文字であるだけに,特に文化的な利害関係が先鋭化する場合が少なくない.本稿では,(独)情報処理推進機構が中心となり,官民一体で進めてきた文字情報基盤整備事業のうち,日本における行政システムの電子化(eGovernment)に不可欠な人名表記に用いられる漢字や変体仮名の国際標準化を成功に導いた戦略と戦術について論じる.なお,符号化文字集合に関する専門用語が頻出するが,それぞれの用語については煩瑣ともなり,本稿の目的からは逸脱するので,詳説しない.適宜,インターネット等で検索していただくか,文献[2]をご参照いただきたい.また,本文中敬称は省略した.
著者
小林 龍生
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.7-24, 2019-01-15

ISOやIEC,ITU-Tなどの公的規格(de jure standard)にせよ,W3CやIETFなどの業界規格(de facto standard)にせよ,情報規格の策定過程では,しばしば,国と国,企業と企業,文化と文化の利害が鋭く対立する.ISO/IEC 10646やUnicode Standardなどの符号化文字集合は,標準化の対象が自然言語に用いられる文字であるだけに,特に文化的な利害関係が先鋭化する場合が少なくない.本稿では,(独)情報処理推進機構が中心となり,官民一体で進めてきた文字情報基盤整備事業のうち,日本における行政システムの電子化(eGovernment)に不可欠な人名表記に用いられる漢字や変体仮名の国際標準化を成功に導いた戦略と戦術について論じる.なお,符号化文字集合に関する専門用語が頻出するが,それぞれの用語については煩瑣ともなり,本稿の目的からは逸脱するので,詳説しない.適宜,インターネット等で検索していただくか,文献[2]をご参照いただきたい.また,本文中敬称は省略した.
著者
森田 淳 小松 敏 光部 貴士 中村 和洋 川瀬 領治 仲谷 正史 田中 浩也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.434-455, 2020-04-15

従来,3Dプリンタは3次元形状の自由なデザイン性に注目されてきたが,医療分野を初めとした個別化製造への適用実現には,形状だけでなく物理特性の自由度が求められている.また,熟練設計者の勘と経験だけでなく,ユーザの感性を生かした設計が必要とされている.近年では,材料分野で形状によって物理特性を発現するArchitected Materialの研究が進められている.本報では,ウレタンエラストマを用いた周期構造(ラティス)によって3DプリンタによってArchitected Materialを作製し,インソールの形状と硬さを,装着者の感性にしたがって自由に設計するためのプラクティスについて述べる.
著者
鳥海不二夫 篠田孝祐 兼山元太
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.201-208, 2012-07-15

本論文は,東日本大震災時に投稿された数多くの情報の中から,デマ情報を判別する目的で作成されたWEBアプリケーション「でまったー」についてその判定精度分析を行う.これによって,ソーシャルメディアを用いたデマの判定が可能かどうかを明らかにする.判定精度分析には,東日本大震災時にTwitterに投稿された約3億のTweetを利用し,デマ情報と真の情報が正しく分類できたかを確認した.その結果,利用したアルゴリズムによって81.7%の精度でデマ情報を判定可能であることを確認した.
著者
堀場 勝広 中村 遼 鈴木 茂哉 関谷 勇司 村井 純
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.923-944, 2018-10-15

Network Function Virtualization(NFV)を利用したサービスチェイニング(NFV-SC)は,ソフトウェアによる動的なネットワークの構成変更を可能とし,通信事業者の機器や運用のコストを低減することが期待されている.しかし,Interop Tokyo 2014 ShowNetにおいてNFV-SCを実装・運用した結果,Virtual Network Function(VNF)の連結によってパケット転送性能の低下が確認され,スケールアウトに課題が残った.そこで本研究では,スケールアウトとその前提となる相互接続性が実現可能なVNF 構成を検討し,その知見に基づき筆者らが提案しているNFV-SCの方式であるFlowFallを設計・実装するとともに,Interop Tokyo 2015 ShowNetにおいて,実際のネットワーク装置を利用してFlowFallを構築・運用し,商用ネットワークサービスとして20の出展者に対して3日間のNFV-SCを提供した.本稿は,これらの実践から得られたNFV-SCにおける相互接続性とスケールアウトの実現に必要な知見を述べる.
著者
尾根田 倫太郎 秋田 佳記 何 岩彬 竹林 陽 小倉 拓人 鈴木 貴之
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.506-523, 2019-07-15

近年,ブロックチェーン技術に注目が集まっており,EthereumやHyperledger Fabricなどを始めとするさまざまな種類のブロックチェーン基盤ソフトウェア☆1がリリースされている.一方で,それらのソフトウェアがどのような業務特性に適しているかについての情報や,ブロックチェーン技術の課題としてよく挙げられる1秒あたりの取引性能(スループット等)等々の情報について,各ソフトウェアを調査,検証し,比較した論文は少なく,社会に情報が不足していると言える.そこで我々は,さまざま存在するブロックチェーン基盤ソフトウェアについて,どのような業務特性に適しているか,どう使い分ければよいか社内で標準化することを最終目的に,まずは各ソフトウェアの内部アーキテクチャの調査と性能の検証を行った.本稿はその成果を論文として公開するものである.
著者
金子 雄介 田村 浩気 河合 伸浩 田中 俊太郎 岡 知博
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.492-505, 2019-07-15

貿易実務は,正本性の高い書類を多くの取引参加者が扱うため,高い改ざん耐性を持つシステムによる業務効率化が期待されているが,網羅的な解決には至っていない.筆者らは,ブロックチェーンを用い,銀行APIやIoTセンサなども活用した貿易取引ワークフローシステムを構築した.試用の結果,貿易手続きの所要時間が40分の1(現行手続きにおける書類運送時間を除いても4分の1)に短縮できることを確認した.併せて,商用化に向け解決すべき課題を整理した.
著者
岩下 直行
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.441-456, 2019-07-15

本稿では,ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)が社会へ展開していく中で,その情報セキュリティへの脅威と対策を概観することで,情報セキュリティ技術の観点から,今後,ブロックチェーン技術が社会から受容されるための条件について考える.サトシ・ナカモトによるビットコインの提案と実装を契機として,暗号資産は一世を風靡したが,現在は相場も下落し,安全性に対する信頼も損なわれた状態にある.個人のプライバシを守るための匿名の決済手段として提案されながら,当初の構想を逸脱してしまったのは,一般の投資家が秘密鍵を管理できないという現実に対応するためであった.その結果,交換業者がサイバー攻撃の犠牲となり,安全性が損なわれる事態を来した.今後,ブロックチェーン技術が社会に受け入れられていくためには,暗号資産が辿った歴史を踏まえて,利用者サイドにおける秘密鍵管理を含めた情報セキュリティ対策の底辺をしっかり固めていく必要があると考えられる.
著者
髙橋 寛治 糟谷 勇児 真鍋 友則 中野 良則 吉村 皐亮 常樂 諭
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.808-822, 2018-10-15

Sansan(株)はクラウド名刺管理サービスを提供している.現在のデータ化精度は99.9%であり,ビジネスユースに耐え得る名刺読み取り精度を実現している.OCRのみではこの精度を実現できず,クラウドソーシングを活用することで高精度と低コストを実現している.本稿では,高精度かつ低コストなデータ化のためのクラウドソーシングの取り組み事例を紹介する.具体的には,(1)スパムワーカと疑われるワーカに対して,警告文を表示することで入力精度を89.4%から91.1%(入力ワーク時)に向上することができること,(2)報酬を2,3倍にした際の作業量の増加率が,それぞれ13.7%,31.8%(選択ワーク時)と必ずしも2,3倍にはならないことが分かったこと,(3)ワークの完了条件を2人のワーカの結果がマッチした時点と3人のワーカの結果がマッチした時点で変えた際に,入力精度に大きな差が見られなかったことなどを報告する. これらは既存の研究で報告された内容から逸脱するものではないが,実際の事業での応用において具体的な数値を元に報告したものとして有用な事例研究である.
著者
土井 美和子 中野 美由紀
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.56-63, 2017-01-15

ICTが時代とともに進展する中,自身のダイバーシティを糧に情報アクセシビリティの新たな課題解決に向けて技術を深化させようと日々研究に取り組んでいる浅川智恵子さんと,これまでの道のりや,社会的課題をチャンスと捉えて研究を進めていく意義などについて語り合いました.
著者
甲野 佑 田中 一樹 岡田 健 奥村 エルネスト 純
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.351-367, 2019-01-15

複数のプレイヤーからなる対戦ゲームを楽しんでもらう場合,ある1つのアイテムを持っているなどで勝敗が偏ってしまうゲームバランスは好ましくない.そのような極端な事態を招かないため,ゲームバランスについてはリリース前に慎重な検討と調整がなされる.しかしながら近年のゲームは継続的な更新により要素(キャラクター,アイテムなど)が追加され,ルールが随時変化していく.そのため制作者の意図しないゲームバランスの変化を引き起こす可能性が問題になっている.そこで我々はリリース前における正確なゲームバランス評価を目的として深層学習,特に深層強化学習に着目した.ただし近年のゲームに適用する場合,要素の追加にしたがって伸長する入出力ベクトルの大きさの扱いが問題となる.本研究ではアプリ型対戦ゲーム“逆転オセロニア”への適用を目的に,膨大な種類数のキャラクター要素の特徴ベクトルを自然言語処理由来の機械学習手法で表現学習し,深層強化学習に転用してゲームのプレイ戦術を学習する手法を提案した.また,ゲームバランス調整への深層学習応用を目指す中で得られた,他ゲームタイトルでのゲームバランス調整にも共通する知見,課題についてまとめた.
著者
福島 健二 原田 要之助
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.205-213, 2016-04-15

ライフログの利活用は,新たな価値を生み出したり業務の効率性を高めたりする可能性を持っている.ビッグデータという名のもとに利活用の動きが進んでいるが,明らかな成功事例として公表されているものはそれほど多くはない.プライバシー面の問題により利活用業務が頓挫したり,プライバシー面を懸念するあまり,ライフログの利活用に踏み出せない企業も出てきている.本稿では,企業におけるライフログ利活用を成功させるために,ライフログ提供者側の心理面からのアプローチで考察を行った.ライフログ提供者がライフログを提供するという判断に至るためには,「データ提供の対価としての付加価値」,および「データ利活用目的」を示すことが重要であり,ライフログ収集側の企業自体が,ライフログ提供者から不信感を持たれるようなことをなくすことも,ライフログを利活用しようとする企業が,考慮すべき課題であることを明らかにした.
著者
平井 達哉 本川 祐治 佐々木 慎一 丹京 真一
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.627-642, 2018-07-15

近年,ソフトウェアの脆弱性が明らかになってから,その点を突くサイバー攻撃が行われるまでの時間が短くなり,実被害を生じる例が増大している.生じる被害を抑えるために,各事業者では,セキュリティインシデントを未然に防止すること,セキュリティインシデントを生じた場合には迅速に対応することが,急務になってきている.それらを達成できるようにするには,各企業内に設置されているCSIRTが,各地で発生しているサイバー攻撃の動向やソフトウェアの脆弱性の情報,それらへの対策の方法を早期に入手できること,情報システム・機器の管理者や利用者に迅速に対策情報を通知できること,通知を受けた管理者や利用者が各機器に対して迅速に対策を実行できること等が必要である.そのためには,CSIRTがソフトウェア開発企業や国内外の情報収集機関等が発信するソフトウェアの脆弱性やサイバー攻撃,およびそれらへの対策に関する情報を入手し,情報を整理した上で,必要なものを,自事業者内や下位の組織・事業者等に展開できる必要がある.このような背景から,関連する組織,事業者,および人員の間で,情報を共有することを適切に支援するICTシステムが存在することが望まれる.上記観点から,我々はまず,被害を抑制するためにCSIRTが遂行する必要がある作業を分析し,その上でそれらをより迅速にCSIRTが遂行できるようにするためのICTシステムを開発・構築した.現在その有用性について検証を進めている.
著者
八木浩一 林昌仙
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-8, 2012-01-15
被引用文献数
1

2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震など過去の震災時には,国土交通省が通行止め情報を配信するだけでなく,本田技研工業株式会社と研究機関が協力し通行実績情報を提供するなど,被災地支援に重要となる円滑な移動の確保に向けた取り組みが行われてきた.さらに大きな支援効果を生み出すにはこれらの連携が重要であり,これを実現するためには,目的・手段の明確化と,それに適したデータフォーマットの取り決め,さらには運用手順とルールの取り決めなどが求められる.東日本大震災ならびに平成23年台風第12号において,民民,官民が連携して「通行実績・道路規制情報」を初めて共同で作成し配信した.本稿では,経緯と背景,実施内容と効果について具体的な事例を挙げながら紹介する.
著者
松原仁
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.245-245, 2012-10-15
著者
斎藤 彰宏 南 聖二 岡野 一恵 倉前 裕成
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.573-591, 2018-04-15

Software Defined Storage(SDS)は,コモディティサーバを利活用することで,ストレージ機能を実現する新しい技術分野である.市場からの注目度が高く,著しい速度での技術革新が進んでいる.一方で従来のストレージ専用機器と比較してデータ可用性/保護について不十分な点があり,高信頼性が求められる企業の基幹システムへの導入には障壁がある.筆者らはこれまで実業務で多くの試行錯誤を繰り返しており,その中で蓄積された実績と経験を踏まえ,データ複製技術等の適切な活用で不足は補えることを,障害分析(CFIA)と実機での概念実証により確認した.読者の皆様が本稿をSDS導入設計の検討の手引書として利用いただくことにより,SDSの導入を円滑かつ適正に実施いただくための手助けになることを企図している.
著者
坂村 美奈 米澤 拓郎 伊藤 友隆 金子 義之 中澤 仁
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.550-572, 2018-04-15

地方自治体には,多種多様化する住民の要望に対して,迅速な把握・対応をする効率的なまちづくりの実現が期待される.しかし,現状の地方自治体の日常的な行政業務では,情報がデータ化・共有できておらず時間的・人的コストが高い部分が存在する.本研究では,地方自治体の日常的な行政業務において,職員の持つ携帯端末を通してリアルタイムな情報を取得可能とする参加型センシングを適用し,効率的な情報収集・共有を可能とすることを目的とする.本研究で開発した情報収集・共有システム,みなレポにより,地方自治体の日常的な行政業務の効率化だけでなく,地方自治体の職員による専門的知識に基づいた情報収集が実現される.みなレポは2016年10月から藤沢市において実運用されており,道路・ゴミの集積所の管理や,動物の死骸・落書き・不法投棄の発見に関するレポートがこれまで計1,740件以上収集された.本稿では,実運用により得られた知見および課題について報告する.
著者
鳩野 逸生
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.504-526, 2018-04-15

神戸大学では,2009年10月のネットワーク更新(KHAN2009)において全学無線LANシステムを導入した.本稿では,神戸大学全学無線LANシステムの構成を述べるとともに,次期のネットワーク更新に向けて,導入から2016年度までの利用状況を解析した結果を報告する.さらに,アクセスポイントの設置位置,接続時刻,および認証情報を組み合わせて,LC(Learning Commons)の利用状況を調査した事例についても述べる.
著者
中山 貴夫 宮下 健輔
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.527-549, 2018-04-15

大学における情報ネットワーク環境は,可用性の向上やコスト削減や災害対策等の観点から,物理サーバを学内のサーバルームに設置して運用する体制から,仮想化技術やクラウドを利用する形態に変化してきている.このような流れの中,京都女子大学では2012年以降数年間にわたってVMware vSphereによる仮想化基盤を構築した.その上に2005年度より運用していたMac OS Xサーバで提供していたメール,Web,DNSなど主要な学内サービスを提供しているサーバ群やアプライアンス機器で提供していたファイアウォールやロードバランサを仮想化して移行した.本稿では,大学におけるサーバシステム更改の方針を設置場所と提供形態の2つの観点で分類し,方針を決定するための検討事項を整理する.その実践例として本学における一連のシステム導入に関する経緯や構成,導入後の運用状況や現状の問題点などを説明する.このシステム導入によって,本学の情報システムの問題であった老朽化した物理サーバの更改,サーバルーム内のスペース確保,そしてサーバ監視や異常通知の一元化が可能となった.
著者
寺下 薫
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.454-476, 2018-04-15

問題解決力は,日々コンタクトセンタ内で起こる問題を解決するために重要なスキルである.毎日,センタ内で発生する問題と対峙しなければならないスーパーバイザ(SV)にとっては,問題解決力の習得は切実な課題である.にもかかわらず,問題解決力を有するSVは,全体の10%程度しかいない.SVが問題解決の手法について,センタ内で教えてもらえる機会は,ほとんどなく,SVはこれまでの経験のみで物事を判断してしまう傾向がある.このため,根本的な解決ができないで,日々悩んでいるSVは多い.本稿では,筆者が2013年にヤフー(株)で創設したSVの問題解決養成塾「SV研究会」により,多くのSVが問題解決力を身に付け,キャリアアップしていった点に着目する.問題解決力をどのように習得させることができたかについて,SV研究会での取り組みとともに,問題解決力の育て方の実践について述べる.