著者
鶴田 文憲
出版者
筑波大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2017

新生児期の脳は、時期領域特異的に精密なRNA代謝が行われている。近年、このプロセスが破綻すると発達障害につながることが示唆されている。これまでに我々は、脱ユビキチン化酵素USP15の機能が破綻すると、スプライソソームの機能低下につながり、グローバルなスプライシングエラーを引き起こすことを見出してきた。本課題では、USP15破綻によって産生されるSparcl1変異体の解析を行い、Sparcl1異常と小胞体ストレスの関連性を発見した。USP15やSparcl1は自閉症の責任遺伝子としても報告されていることから、本研究成果は、RNA代謝のみならず発達障害のメカニズム解明にもつながると期待している。
著者
高橋 裕介
出版者
北海道大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2018

大気再突入時に高温プラズマに包まれた宇宙機が、地上局やデータ中継衛星との通信途絶現象(通信ブラックアウト)に陥ることは大きな問題である。その一方で、再突入機近傍のプラズマ諸量分布や電磁波挙動の正確な予測が難しく、通信ブラックアウト低減に繋がる知見の探索が困難な状況である。したがって、この問題を回避・緩和するために通信ブラックアウト低減化技術は必要である。いま表面触媒性を用いた宇宙機後流プラズマ密度低下を利用することによる通信ブラックアウト低減が提案されている。本研究では表面効果による通信ブラックアウト低減化メカニズムおよび低減化技術の指針を見出すことを目的とする。本年度では、ドイツ航空宇宙センター(DLR)に滞在し通信ブラックアウト低減化の研究を実施した。DLR研究者との議論の中で、これまで取り組んできた表面触媒性とは別のメカニズムを利用した新しい通信ブラックアウト低減化手法を提案した。これは冷却ガスを再突入機表面から噴出して空力加熱低減する技術(フィルムクーリング)を応用したものである。とくにここではフィルムクーリングによる低減化の実現可能性を数値解析的手法によって調べた。本課題の基課題となる研究課題 (若手研究B17K14871)では表面触媒性による通信ブラックアウト低減化の実験的実証を行った。このメカニズムを本研究課題では数値解析的手法によって次の通り明らかにした:(1)表面触媒によって生じる分子が再突入機後流に流出する。(2)後流において分子の増加が原子種の不足を招く。(3)原子種を補う方向に電子の再結合反応が促進することで、電子が低減する。(4)電子の低減によって通信電波の伝播が緩和される。
著者
黒木 伸一郎 Zetterling Carl-Mikael Östling Mikael
出版者
広島大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2016

現在福島第一原発の廃炉活動が進められているが、その廃炉工程には高放射線環境での作業が必要であり、ロボットの投入による速やかな廃炉活動が求められている。しかし通常ロボットの頭脳であるシリコン半導体集積回路は、放射線耐性が低く、高い放射線環境下では破損する。そのためシリコンとは違う半導体による耐放射線集積回路の構築が求められている。本研究では4H-SiC半導体による放射線耐性に優れたCMOS集積回路のための研究を行い、デバイス・小規模回路の研究、デバイス高性能化の研究、極限環境応用のための研究を国際共同研究として推進した。
著者
山内 裕
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2016

本基金を利用して滞在したコペンハーゲンビジネススクールの研究者との共同研究が進んでいる。まず、代表者のこれまでの鮨屋の研究を発展させ、教授の一人と工芸についての研究を始め、日本とヨーロッパの国際比較を行うと同時に、初期的な結果を本の1章として発表することが決まっている。またもう一人の教授とは料理のデザインに関する研究で協業しており、5月の国際会議で発表すると共に、ジャーナルに投稿すべく準備を行っている。また、これらの研究者との連携がより強化され、2017年度には2度日本に滞在し、今後も交流が計画されている。さらに共同で申請したデンマークの研究費を利用して、コペンハーゲンビジネススクールと京都大学の共同ワークショップを、6月に京都で9月にコペンハーゲンで実施した。またこの連携により、代表者の指導する博士課程の学生がコペンハーゲンビジネススクールに長期滞在し研究指導をうけるなど、その成果は着実に広がりつつある。南洋理工大学の研究者との連携も進み、2月に来日しワークショップを実施した。フランスの研究者との連携も拡大し、11月には新しい研究費を利用して、リヨン郊外のレストランでデータを収集することに成功した。このように、本基金での活動が国際共同研究のネットワークの拡大に大きく寄与している。米国滞在で進めたネットワーキングを利用し、これまで日本語で発表してきた独自の理論を、英語で発表する準備をすることができた。サービス科学の中心的なHandbookの一つのチャプターとして収録されることが決まっており、すでに最終稿を提出している。また、この研究の成果を組込む形で、従来から配信していたMOOC(大規模オープンオンライン授業)を大幅に改訂し配信している。