著者
谷村 要 Kaname TANIMURA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.63-80, 2022-07-31

近年のコンテンツツーリズム研究では、物理的場所をメディアとみなし、メディア形式を横断した「コンテンツ化」=コンテンツの「物語世界の展開・拡張プロセス」の事象としてコンテンツツーリズムの場(「聖地」)を捉える議論がある。本稿では、この議論を踏まえ、なぜ/どのように「コンテンツ化」が発動するのか、という問いからメディアミックスやキャラクターに関する先行研究を検討し、「コンテンツ化」を駆動させるリアリティの源泉として、「キャラ」の集合知の存在を指摘する。「キャラ」の集合知は、多様なメディア参加者によるコンテンツの受容・解釈・共有・編集・創造によって更新される。これらのメディア実践と集合知の同期がコンテンツツーリズムおよび「コンテンツ化」のダイナミズムを支えている。
著者
盛田 帝子
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.259-329, 2021-03-31

本稿は「光格天皇主催御会和歌年表―享和期・文化期編」(『大手前大学論集』第19号」)の続編として、文化15年(文政元年)(1818)~文政13年(天保元年)(1830)までに光格上皇が主催した仙洞御会での光格上皇の御製、および仁孝天皇が主催した内裏御会での光格上皇の御製・仁孝天皇の御製を年表形式で提示したものである。底本には、国立国会図書館所蔵『内裏和歌御会』(請求記号:124-202)・同所蔵『仙洞和歌御会』(124-202)を用いた。また代々御所伝受の保持者を輩出した有栖川宮家伝来の宮内庁書陵部所蔵『御会和歌留』(請求記号:有栖-5081)によって校訂した。文政期は、光格上皇の歌人としての面に光をあてれば、仙洞御会を営みながら、仁孝天皇の歌道教育に力を注いだ時期であり、対面しての和歌指導を行い、仁孝天皇歌壇を支える事になる廷臣達をも含め、次々に御所伝受を相伝している。また在位中に引き続き、中宮欣子内親王の重用や女房歌人達の活躍なども見られる。その他の文化面に光をあてれば、管絃に力を入れながら、修学院離宮への御幸の再興や、中務卿韶仁親王への入木道御伝受の相伝、また、前権大納言四辻公萬から蘇合香、筝を相伝されるなどの事がある。『光格天皇実録』(ゆまに書房、2006年)等から出典を示して事項を記し、それらの事柄と御会の運営状況との関係性、文政期の光格上皇の動向を立体的に提示することを試みた。
著者
石毛 弓 野波 侑里 本田 直也 淺谷 豊 藤森 圭子 ISHIGE Yumi NONAMI Yuri HONDA Naoya ASATANI Yutaka FUJIMORI Keiko
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.149-167, 2022-07-31

大手前大学学修サポートセンターに対する学生の動向を知り、かつ利用学生への学修効果を調べる目的でアンケート調査を実施することとなった。そのために、まず2021年度春学期にパイロット調査を実施した。本論ではその結果について考察する。なお当該調査を実施するに至った大きな要因に、2021年度からいたみ稲野キャンパスが閉鎖され、同キャンパスに通学していた学生がすべてさくら夙川キャンパスに所属したことが挙げられる。両キャンパスの学生がひとつの場所で学修支援を受けるのは大手前大学にとって初めてのことである。この統合を受けて、学修サポートセンターもまた大きく変容することとなった。これをきっかけとして、変化のあった2021年度を起点に継続的なアンケート調査を開始するべきだという機運が高まったのである。本論では、最初に授業外学修へのサポートの必要性を検証したのち、大手前大学における学修サポートセンターの概要を述べ、パイロット調査の結果について分析する。考察として、学生の動向については、利用回数と考え方や行動の変化に関連があること、また学修における自律性が弱いといった特徴がみえたことが挙げられる。またパイロット調査として、設問の妥当性や今後の課題について有用なデータを得ることができた。
著者
于 亜
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-17, 2021-03-31

中国東北地方の黒龍江省の大部分は、山東省、河北省、河南省などの華北農村からの移住者によって清代以降に開拓された。本研究では、主に1950~60年代における黒龍江省に移住した山東移住者の食文化についてその継承と変容に注目したい。中華人民共和国建国後、黒龍江省の本格的な開拓から70年が経過し、世代交代が進む中、出身県や母村への帰属意識は希薄になってきている。食文化からみると、母村の食習慣が維持されながらも、移住地の食習慣を取り入れていることがうかがえる。加えて、改革開放の1980年代以降の社会変動は、中国のそれまでの伝統的な食文化に大きな影響を与えた。現在、移住者世代および彼らの子孫の食生活にどのような変化がみられるのか、また彼らにとって伝統食はどのような存在であるのか、その地域に表出している食文化の要素を観察しながら、餃子を事例として、文化地理学的視点から黒龍江省に移住した山東移住者および彼らの子孫の食文化の継承と変容を明らかにすることが本稿の目的である。