著者
雨宮 宏 小山 孝一郎 平尾 邦雄
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.9, pp.p45-61, 1984-03

本報告は磁気共役点からの光電子降下による夜明前の大気光増量現象に関する総合観測を目的として打上げられたK-9M-76号ロケットに塔載された熱的電子エネルギー分布測定器による観測結果に関する。測定にはラングミュアプローブを用い, ドリベステン法を適用した。プローブ特性の二次微分を得るためには最近開発した高速掃引に適した遅延回路を用いた。上昇時は高度140kmから最高高度349kmまで, 下降時は最高高度から200kmまでと, 100kmから87kmにかけてのE層のデータが得られた。100kmから200kmに亘ってはE-F層の谷が存在し, ここでは低エネルギー部分が二つのピークに分れる傾向が見られた。240kmより上部では高エネルギー尾部に若干の凹凸があることと, 非常に低エネルギーの部分 (&lsim;0.15eV) における涸渇を除いてはマクスウェル分布からの大きいずれはなかった。得られた二次微分曲線をプローブ電圧に対しセミログプロットし, 最小二乗近似直線を計算機により決定し, その傾斜から電子温度を求めた結果, 高度90kmから350kmに亘って750°Kから1300°Kに至るまでの高度と共に増加の傾向を得た。また, 二次微分曲線の積分よりプラズマ密度を求めた結果, 100km附近で最大密度1.3×10^4cm^<-3>のE層, 300km附近で最大密度1.5×10^5cm^<-3>のF層, 100-200kmに亘るE-F層の谷が明らかとなった。これらの結果は酸素分子イオンと電子との解離再結合によるO(^1D)の生成率を評価すること, 光電子の直接励起によるO(^1D)生成率との比較を可能にする。資料番号: SA0166646000
著者
雨宮 宏 小山 孝一郎 平尾 邦雄
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.p125-136, 1985-03
被引用文献数
1

本報告は1983年9月16日, 日没時, 中層大気観測器と共にS-310-14号機ロケットに搭載された熱的電子エネルギー分布観測器による測定結果に関する。測定はラングミュアプローブを用いるドリベステン法によっており, 高度90から218kmに亘り正常なデータを得た。観測の結果, 高度90から160kmにかけて高エネルギー尾部に非熱的電子の存在を示す凸部が見られ, その密度は熱的電子の約10_<-2>倍, 熱的電子とのエネルギー間隔は約0.3eVであった。一方, 170km以上(F層)ではその様な凸部は現われなかったが, 分布はマクスウェル分布から若干ずれた形を示した。熱的電子の温度は高度と共にゆるやかな上昇を示しF層で約900°Kとなった。非熱的電子の発生機構として振動励起されたN_2と熱的電子間の非弾性衝突が考えられる。資料番号: SA0166676000
著者
Pignolet Guy
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.43, pp.91-100, 2001-03

SPS2000アタッシュケースモデルとは太陽発電衛星SPS2000の電気機能を模擬する小型のモデルである.これまで合計6台のモデルを製作し,太陽発電衛星の概念を世界の人々に広く知ってもらうために使用してきた.このモデルはフランスの学生教育団体マイクロカンパニーにより,学生の教育活動の一環としてより本格的な開発・製造が行われることになっている.資料番号: SA0200085000
著者
矢島 信之
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.40, pp.19-26, 2000-03

本論文では, ゼロプレッシャ気球とスーパープレッシャー気球を組合せた複合気球システムについて考察する。このシステムでは, ゼロプレッシャー気球がペイロード重量を支え, スーパープレッシャー気球が全体の浮力を制御する。この気球システムは, 単一構成のスーパープレッシャー気球と同様にバラストを捨てずに高度を維持できる。利点は(1)総気球重量が減少する, (2)スーパープレッシャバルーンが小型になる, (3)生産コストが下がる, ことである。他方, 欠点としては, (1)スーパープレッシャー気球は単独のシステムに比べ大きな圧力に耐えなければならず, (2)昼, 夜間で高度が僅かに変化する。こうした特徴を詳しく解析する。一般的には, 利点が欠点を上回る。解析結果は, 観測目的に応じて気球システムを選ぶ際に有効となる。資料番号: SA0167154000
著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2&acd;3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。資料番号: SA0167081000
著者
山中 大学
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.20, pp.p43-59, 1987-08

1986年7月から実行段階に入った日中協同大洋横断気球実験に関連した, 盛夏季東支那海付近の気象学的知見(予測および実際)についてまとめる。鹿児島宇宙空間観測所(内之浦町)付近の地上気象は, 積雲対流や海陸分布に由来すると考えられる複雑な地上風と天候の日変化がある。上部対流圏の風向には大規模波動によると考えられる5-10日周期の時計回り回転がある。成層圏の風には, 東西波長200km 程度の重力波によると考えられる±5m/s 程度の風速変動がどの風向にも存在している。
著者
藤井 良一 福西 浩 国分 征 杉浦 正久 遠山 文雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p113-119, 1990-01

1989年3月13日の大磁気嵐中に, EXOS-Dに搭載されたフラックスゲート磁力計により観測された沿磁力線電流(FAC)の特性について報告する。本磁気嵐は地磁気観測史上有数の磁気嵐であり, その間にEXOS-Dは午前昼間側及び夕方側で大規模なFACを観測した。午前側のFACの特性は, 1)地磁気嵐主相では, 地磁気緯度で50°から80°にも及ぶ広いFAC領域が観測された。2)FACの極性は, 低緯度から上向き, 下向きのFACの他にそれらの高緯度側に上向きの大規模FACが出現した。3)この高緯度側の上向きFAC高緯度境界に狭い緯度巾(1.5°)のペアーのFACが観測された。夕方側のFACの特性は, 1) FACの低緯度側境界はSSCの直後から低緯度側に移動しはじめるが, 高緯度側境界は即座には反応しない。2)磁気嵐の回復期には逆に高緯度境界は直ぐに反応し高緯度側に移動しはじめたが, 低緯度側境界は遅れて反応した。