著者
芳野 赳夫 福西 浩
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.84-95, 1985

南極観測が開始されて以来, 昭和基地の運営は常に通信連絡によって支えられ今日に至っている。この間, 基地規模の拡大, 隊員増, 研究内容の充実, 前進基地の設置などに伴っていろいろな問題点が指摘され, また通信の内容も拡大の一途をたどってきた。したがって, 最初は短波によるA1,FAX, PIXが対内地通信の主流であったが, 通信量の増加に伴って必然的に急激な回線量の不足を招き, マリサット経由の衛星通信の実用化, 南極大陸内の通信網の確保と改善, 基地近くの通信の問題, 特に300-500kmの通信の問題点など, 今日解決すべき点が増してきている。本論文では南極通信の現状と将来の解決案などについて述べる。
著者
福西 浩
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.849-854, 1984-10-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
12

南極は宇宙に開かれた窓といわれているが,今日の昭和基地ではオーロラ現象の観測が地上,気球,ロケット,衛星と異なる高度から立体的に実施されてい炉これらの観測は,応用物理学の成果として得られた最新のセンサー,情報処理システム,通信システムを駆使して行なわれている.これらの観測施設の概要と今後の発展方向について述べる.
著者
藤井 良一 福西 浩 国分 征 杉浦 正久 遠山 文雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p113-119, 1990-01

1989年3月13日の大磁気嵐中に, EXOS-Dに搭載されたフラックスゲート磁力計により観測された沿磁力線電流(FAC)の特性について報告する。本磁気嵐は地磁気観測史上有数の磁気嵐であり, その間にEXOS-Dは午前昼間側及び夕方側で大規模なFACを観測した。午前側のFACの特性は, 1)地磁気嵐主相では, 地磁気緯度で50°から80°にも及ぶ広いFAC領域が観測された。2)FACの極性は, 低緯度から上向き, 下向きのFACの他にそれらの高緯度側に上向きの大規模FACが出現した。3)この高緯度側の上向きFAC高緯度境界に狭い緯度巾(1.5°)のペアーのFACが観測された。夕方側のFACの特性は, 1) FACの低緯度側境界はSSCの直後から低緯度側に移動しはじめるが, 高緯度側境界は即座には反応しない。2)磁気嵐の回復期には逆に高緯度境界は直ぐに反応し高緯度側に移動しはじめたが, 低緯度側境界は遅れて反応した。
著者
土岐 剛史 高橋 幸弘 山田 嘉典 福西 浩 中村 卓司 TAYLOR Michal J.
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.83-91, 1998-03

1996年8月に実施されたSEEKキャンペーンにおいて, 地上からの高感度イメージャーによる大気波動の観測が鹿児島県内の内之浦, 山川, 大隅と信楽の計4ヵ所で実施された。キャンペーン期間中の鹿児島地方は天候に優れない日が多かったが, 8月9日から22日の間に, 内之浦, 山川, 大隅でそれぞれ, 4夜, 7夜, 1夜, 大気光イメージデータが取得された。信楽での観測は8夜であった。今回の地上からの大気光観測の主な目的は, レーダーで観測される電離圏における準周期的イレギュラリティーと大気光に見られる中性大気中の重力波の特性を, ロケットによる観測とあわせてそのメカニズムを検討解明することにある。各観測データと比較する上で, 大気光の発光高度を正確に決定することは極めて重要な課題である。我々は鹿児島の3ヵ所の観測から, 三画法を用いてOH大気光の発光高度の推定を計画した。残念ながらロケット打ち上げ時は天候に恵まれず同時観測データは得られなかったが, キャンペーン期間中内之浦と山川に設置された2台の大気光全天イメージャによる同時観測に成功した。8月19日の晩, 2台のイメージャで同時に顕著なOH大気光の波状構造を観測した。これら2地点で同時に取得された画像に, 大気波動構造の発光高度決定としては初めて, FFT及び精密な三角法を用いて解析を行った。その結果, 波状構造の発光高度は89±3kmと求められた。これはロケット観測などによる従来の結果とほぼ一致する。MFレーダーによって, この高度の数km上空で回時に強い南向きの風速シアーが観測されており, 重力波の発生原因の有力な候補と考えられる。
著者
福西 浩
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.93-110, 1983-01

第22次南極地域観測隊の夏期行動の概要を述べる。吉田栄夫隊長以下隊員44名と約450tの観測隊物資を搭載した砕氷船「ふじ」は, 1980年11月25日東京港を出航した。「ふじ」は12月31日に昭和基地より約200海里の氷縁に着き, パックアイス帯, 定着氷域を一気に進み1月1日昭和基地より21海里の第1空輸拠点に到達した。その後輸送, 建設作業, 野外調査とも当初計画通りきわめて順調に進行した。本格輸送は1月3日より開始され, 15日までには油以外の物資の輸送はほぼ終了した。そして28日までにすべての物資が輸送された。情報処理棟, 海事衛星地球局, 西オングル島超高層無人観測所, 大型ロンビック短波受信アンテナ等の建設作業も2月3日までにすべて終了した。野外活動では, 昭和基地周辺で生物潜水調査を15回実施した他, プリンスオラフ海岸の天文台岩, あけぼの岩, 新南岩の測地・地質調査, また大陸上での人工地震実験, 気水圏みずほ旅行等を予定通り実施した。2月6日「ふじ」は昭和基地をあとにし, 2月10日から13日の間, 日・ソ超高層共同観測のためマラジョージナヤ基地を訪問した。そして2月19日氷縁を離れ, ポートルイスまでの間, 13ヵ所で海洋物理・化学・生物の停船観測を実施し, 1981年4月20日東京港に帰着した。
著者
佐藤 夏雄 鮎川 勝 福西 浩
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.181-202, 1980-02

昭和基地のほぼ地磁気共役点にあたる,アイスランドのHusafelにおいて,1977年7月29日から約50日間,ELF-VLF放射の共役点観測を行った.共役性についていえば,(1)昼間出現するポーラコーラス,準周期的(QP)放射の共役性は良い,(2)バーストタイプのティスクリート放射,オーロラコーラスの共役性は悪く,おもに北半球側が強い,(3)オーロラヒスの共役性は悪く,南半球(冬半球)側が圧倒的に強い.これらの観測結果から共役性の良いポーラコーラス,QP放射は磁気圏内の赤道面付近で発生し,磁力線に沿って伝搬しているものと理解できる.またオーロラヒス,バーストタイプ放射の非共役性は,電離層内の電子密度,磁場強度,磁力線の伏角等の南北半球での非対称およびこれらの放射の発生領域に依存すると思われる.
著者
吉田 純 高橋 幸弘 福西 浩 堤 雅基 牛尾 知雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-54, 2005-03

現在,金星大気超回転の解明を主目的とした金星気象衛星(VCO:Venus Climate Orbiter)を打ち上げるPlanet-Cミッションが宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部を中心として進行中である.我々はVCOに搭載する雷・大気光カメラ(LAC:Lightning and Airglow Camera)の開発を行っている.LACは金星夜面における雷放電発光・大気光を2次元で高速イメージングする観測器である.雷放電観測では,まずこの現象の存在の決定的な証拠を得て,長年の論争を収束させることを目標とする.さらに,その電荷生成・分離メカニズムの解明や硫酸雲物理学の理解,惑星メソスケール気象学の発展,金星大気中における熱的・化学的寄与の見積もりなど,様々な分野に貢献することが期待される.大気光観測では,発光強度の緯度・経度分布から金星超高層大気の運動を継続的にモニターし,さらに波状構造をイメージングすることで,金星下部熱圏と下層大気の力学的結合過程の解明,金星熱圏大気大循環メカニズムの理解の進展が期待される.さらに近年,地上望遠鏡で発見された558nm[OI]の連続観測も実施し,その発光強度分布や時間変動を捉え,オーロラとも解釈できるこの発光現象の解明を目指す.LACのセンサーとしては,高感度を有し,かつ高速サンプリングが可能なものが要求される.また本観測器は,雷放電発光観測用に波長777nm[OI]の干渉フィルタを採用し,50kHzプレトリガーサンプリングでデータを取得する.一方,大気光観測時には波長551nm[O_2Herzberg II],558nm[OI]で連続サンプリングを行い,積分時間10secで1枚の画像を作成する.VCOは金星低緯度を周回する長楕円軌道をとるが,LACはこのうち近金点(高度300km)付近から金星より3Rv離れた地点までの高度範囲で運用する.その際,雷放電発光観測に関しては距離3Rvの地点から地球の平均的発光強度のものを,1000kmの高度からはその1/100レベルのものまでを検出することを目標とする.一方,大気光に関しては発光強度100Rのものを,SN比=10を確保して検出することを目標とする.上記の性能を達成するため,我々は第一に,LACのセンサーとして光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)とアバランシェ・フォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)の2つを検討した.いずれも8×8の2次元配列素子である.絶対感度校正実験から得られた出力電流値と,暗電流測定試験から得られた暗電流値から,本観測器で100Raylieghの光源を観測した場合の暗電流統計揺らぎによるSN比が10以上であることを確認した.しかしながらAPDについてはバックグラウンドレベルの温度安定性が低く,光量の小さい大気光観測は適さないことがわかった.またPMTに関しては波長777nmにおける量子効率がAPDに比べて小さく,雷放電発光観測は困難であることが判明した.第二に,金星夜面観測の際に視野内に混入することが予想される迷光(太陽直達光,金星昼面光)の量を見積もり,迷光減衰要求量11桁を達成する高い遮光技術を有する光学系の設計・開発を行った.衛星側面に設置し片側を宇宙空間に暴露させ,対物側に4枚の遮光板(vane)と1段バッフルを取り付けた光学系を設計した.本光学系を採用する際,衛星表面を覆う金色のサーマルブランケットや設置面上にある突起物を介して,迷光が観測視野内に混入することが懸念されるため,我々は暗室内で精密な模型実験を行った.その結果,衛星突起物がベーン陰影内にある場合,その迷光量はカメラ部の1段バッフルから検出器間の遮光対策で十分減衰可能な量であることを定量的に示した.第三に,高速サンプリング時におけるデータ取得方法の考案・検討を実施した.忘却係数という概念を用いてトリガーサンプリング方法を考案し,地上フォトメータで捉えられた地球雷放電発光の波形で試験した結果,ノイズと分離して信号を検出することに成功した.本研究成果により,LAC開発に必要不可欠な基礎技術の活用に見通しを立てることができた.