著者
道上 達広 長谷川 直 春山 純一
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.225-232, 2015-09-25 (Released:2017-08-25)

月や火星には深さ・直径共に数10mから100mにおよぶ縦孔が近年,探査機によって多数観測されるようになった.また縦孔の中には,地下空洞に開いた「天窓」であることが確実なものもある.こうした縦孔は,科学的に多くの興味があるとともに将来的に人類が月や火星に進出したとき,長期滞在に適する基地として有望な場所でもある.月の大きな縦孔については,地下空洞の天井に隕石衝突が引き金となって形成された可能性が示唆されている.本研究では,月に見られる楕円形の大きな縦孔が,隕石の斜め衝突によって形成された可能性を,実験的研究によって明らかにした.
著者
春山 純一 橋爪 光 鹿山 雅裕 長岡 央 仲内 悠祐 Haruyama Junichi Hashizume Ko Kayama Masahiro Nagaoka Hiroshi Nakauchi Yusuke
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-18-001, pp.1-8, 2018-06-20

将来の有人月面活動を目指した探査の重要課題の一つとして, 「月の極の水氷」の存否, その量の調査が挙げられる. 月の極に水氷が期待されるのは, 月に対して, いくつかの水の供給源が存在する可能性があり, 月面に供給された水が, 濃集し, かつまたは安定的に存在できる可能性が, 極低温域となる永久陰にあるからである. しかし, 隕石や彗星の落下衝突した際の衝撃加熱で失われることもあるだろう. 更に, 現在の永久陰は過去においては永久陰でなかった可能性が指摘されており, 地質学的に長期間永久陰となっていて水氷を集積できる場所は無いとも言われる. 実際, これまでの探査機による観測では, 水氷発見を報告するものがあるが, 月の極の水氷の存在について決定的証拠を出したといえるものがない. データや解釈を整理してみると, 数%もの「水氷」の存在というデータの解釈には多くの難点があるともいえる. 一方で, 太陽風起源の水素が月極域に打ち込まれ留まっている可能性もある. 最新の中性子分光計による計測結果だと, 最も濃集しているところ(40K以下の永久陰など)で470ppm程度と報告されているが, この水素濃集見積もりは(水の形を取るにしても)妥当なところではないかと思われる. 月は, 人類が宇宙へと活動の場を拡げていくときの橋頭堡で有り, その探査は重要不可欠である. だからこそ, 今後, 有人月面活動を目指した探査について議論, 企画していくうえで, 最新の科学的知見を十分に加味, 考慮した上で進めていくことが必要である.
著者
春山 純一 本田 親寿 本田 親寿 横田 康弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本件研究課題では、日本の月探査機SELENE(かぐや)の大量のカメラデータを用いて、これまで推定されてきたクレータサイズ頻度分布(CSFD)やクレータ崩壊消滅直径(DL)などを元にした再解析を試みるなどして、月のごく小さなユニットを含めた地質地域の年代推定法の研究を行った。その結果、年代推定精度向上が確認され、その結果を利用して、これまで十分な解像度では得られていなかった地域を含む月の海ほぼ全域の年代について、新たに再推定することが出来た。
著者
春山 純一 Haruyama Junichi
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)
雑誌
宇宙環境利用シンポジウム 第31回: 平成28年度 = Space Utilization Research, Vol. 31 2016: Proceedings of The Thirty-first Space Utilization Sysmposium
巻号頁・発行日
vol.31, 2017-01

第31回宇宙環境利用シンポジウム (2017年1月16日-17日. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)), 相模原市, 神奈川県
著者
大竹 真紀子 廣井 孝弘 中村 良介 武田 弘 荒井 朋子 横田 康弘 春山 純一 諸田 智克 松永 恒雄 宮本 英昭 本田 親寿 小川 佳子 平田 成
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.23, 2009

マルチバンドイメージャは月周回衛星かぐや観測機器の1つであり、高度100kmの軌道から可視・近赤外波長域、合計9バンドの月面分光画像を取得する。本研究では、MIの高い月面空間分解能とS/Nを生かして月上部地殻の組成を推定した。解析対象として、月全球のクレータ約70個を直径や年代等の条件により選定・解析し、詳細な鉱物含有量比推定を行った。結果、最終選別した約30箇所のうち高地地域の直径30km以上の全クレータ(20箇所)で、極端に斜長石に富んだ(斜長石含有量が98vol.%程度以上の)岩層の分布が観測された。また、これら岩層は深さ4から30kmに分布する。月高地地域の上部地殻は、この極端に斜長石に富んだ層で構成されると考えられ、このような組成の地殻を形成するために非常に効率的なマグマからの斜長石結晶の分離プロセスが必要となることを示唆している。
著者
櫛田 果鈴 齋藤 優里 菅原 佳城 坂間 清子 春山 純一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<p>This paper describes behavior of the jump robot which is connected by tether. The internal environment of the hole existing on the moon is not clear and is expected to be investigated. For research of the unknown environment, exploration is planned using a rover with umbilical tether connecting a mother rover near the hole. Then, it is important to study how tether influences jumping behavior of the rover. Equation of motion and differential algebraic equation is formulated by the use of Absolute Nodal Coordinate Formulation (ANCF) and multibody dynamics. Rover is regarded as two bodies with slider joint. Telescopic motion of spring expresses effect of jump. Numerical analysis reveals the relation of jumping behavior and parameters, and is compared with experimental result.</p>
著者
三箇 智二 春山 純一 大竹 真紀子 大嶽 久志
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.135-145, 1998-09-25
被引用文献数
1

資源開発を行うにあたり対象地域の地理情報システム(GIS)が作成され, これらにリモートセンシング画像が加えられることが多い.対象地域の広域的な地質構造の把握には, 複数の画像からなる地域を解析することが必要である.複数の画像を接合した広域モザイク画像では幾何学(地理)的位置が一致することや統一された輝度補正画像であることが要求される.しかしながら発展途上国や惑星では画像上の位置を地形図で正確に求めることができない場合が多く、必然的に画像間で相対的な位置関係を精度良く求める必要がある.筆者らは広域のモザイク画像作成手法と輝度補正手法について開発を行ってきた.この技術の応用例として, クレメンタイン探査機によって撮影された月面画像の解析例を紹介する.この解析では月の画像特性の解析・画像処理を進める上での障害事項の抽出とその検討を行い, 新たな放射量補正手法と幾何歪みの蓄積しない広域画像接合手法を開発した.