著者
阿部 利徳 氏家 隆光 笹原 健夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.172-176, 2004-03-15
被引用文献数
5 11

エダマメ9品種および普通大豆5品種を用いて,開花後35日の未熟子実の遊離アミノ酸含量および糖含量の品種間差異,およびこれらの成分がゆで操作により加熱した場合にどのように変化するかを調べた.未熟子実の全遊離アミノ酸含量には顕著な品種間差異が認められた.おいしいエダマメとして知られている白山ダダチャは全遊離アミノ酸は新鮮重1g当たり,11mg含有し,最も多く,含量の少ない品種の約3倍量含有していた.遊離アミノ酸の中で,特に呈味性アミノ酸のグルタミン酸,アスパラギンおよびアラニン含量が多く,この3種の遊離アミノ酸で全遊離アミノ酸の約50%を占めた.白山ダダチャの他,サッポロミドリ,青ばた,かほりが比較的高く,その他のエダマメ品種や普通大豆品種は低い含量であった.また,3分間煮沸水中でゆでた場合,多くのアミノ酸は含量がやや減少した.平均して全遊離アミノ酸は74%に減少した.全糖およびショ糖含量の品種間差異をみると,白山ダダチャが最も多く,新鮮重1g当たり全糖で約47mg,ショ糖では約30mg含有していた.白山ダダチャに次いで,青ばたと秘伝が多く含有していた.3分間煮沸水中でゆでた後のショ糖含量の増減は認められなかったが,全糖含量は平均して1.5倍に増加した.
著者
王 桂云 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.307-311, 1998-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

無農薬・無化学肥料栽培(有機栽培)および慣行栽培した水稲白米の全窒素・アミロース含量およびアミノ酸含量・組成を検討した.白米の全窒素含量は供試した2品種(コシヒカリ, ひとめぼれ)とも無農薬・無化学肥料栽培に比較して, 慣行栽培で有意に高くなった.しかし, アミロース含量は無農薬・無化学肥料栽培米と慣行栽培米とで2品種間に有意の差異が見られなかった.一方, 白米粉末のアミノ酸含量についてみると加水分解アミノ酸は, 慣行栽培の場合の全窒素含量の増加傾向を反映して, 検出できた16のアミノ酸はむしろ慣行栽培で高まる傾向を示した.遊離アミノ酸含量は加水分解アミノ酸含量の1/100ないしそれ以下であった.しかし, 遊離アミノ酸のうちアスパラギン酸, グルタミン酸, アスパラギン, グルタミンがコシヒカリおよびひとめぼれ2品種とも, 慣行栽培に比較して無農薬・無化学肥料栽培で有意に高くなった.以上の結果は, 無農薬・無化学肥料栽培で白米の窒素含量が低下し, 遊離のグルタミン酸, アスパラギン, グルタミン含量が増加することを示している.今後, これらの結果と炊飯米の食味との関係を検討する必要がある.
著者
田澤 一二 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
日本植物細胞分子生物学会
雑誌
植物組織培養 = Plant tissue culture letters (ISSN:02895773)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.7-14, 1996-04-01
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究では, シオデの節間由来のプロトコーム様体 (PLB) を液体培養することによって大量に形成させ, シオデの大量増殖を可能にした. すなわち, NAAを含む液体培地でシオデのPLBを液体振盈培養することによって, 1個のPLBから大量のPLB (クラスター) を形成させ, これらが幼芽に生長したのち, 一定期間の前培養を行い, ホルモン・フリーの固体培地に移植して発根させ, 大量の植物体を順化させた.<br>さらに, 液体培養したPLB-クラスターから人為的に切り取ったPLBを再度液体培地に移植した. この二次増殖系では, ホルモン・フリーの固体培地に移植することによってより多くのPLB-クラスターおよび幼芽・幼根が形成された. この手法によって, 多循環的にPLB-クラスターおよび植物体の再生・増殖が可能となった.<br>なお, 固体培地と異なり, 液体培地は褐変し, PLBおよびクラスターも褐変し枯死する結果となった. また, 褐変とともに液体培地のpHが低下した. この褐変とpHの低下は, 液体培地を2ないし3日間隔で新鮮培地で交換することによって緩和することができた.
著者
田沢 一二 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要 農学 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-401, 1997-01

【摘要】一般にアスパラガス(Asparagus officinalis L.)では雄株の方が雌株より生産性が良いことが知られている.このことは同じ雌雄異株植物である山菜のシオデ(Smilax old hami Miq.)でも経験的に認められている.本研究は,雌雄異株植物であるアスパラガスとシオデにおけるアイソザイムパターンの差異を調べ雌雄の判定ができるかどうかの基礎的知見を得ようとしたものである.幼植物の茎葉部から抽出用の緩衝液で粗タンパク質を抽出した後2種類の電気泳動によってタンパク質を分離し,その後それぞれの活性染色を行って差異を調べた.ネティブポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後に,エステラーゼ,リンゴ酸脱水素酵素,酸性ホスファターゼ,およびグルコース6-リン酸脱水素の活性染色を行った結果,アスパラガスおよびシオデの雌雄間で差異が認められた.等電点電気泳動後に各種酵素の活性染色を行った結果では,エステラーゼおよび酸性ホスファターゼにおいて,雌雄間で差異が認められた.以上のことから,これらアイソザイムは雌雄異株植物であるアスパラガスおよびシオデの雌雄識別の基礎資料になると推察される.
著者
阿部 利徳
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2011 (Released:2011-03-11)
参考文献数
13
被引用文献数
4 1

ダダチャマメ系の10品種の特性を2007年および2009年の両年にわたり解析した.ダダチャマメ系品種は夏ダイズ型に属し,ほとんどの品種は胚軸の色が緑で白花であったが,2品種は胚軸の色が紫を帯び紫花であった.成熟期のダダチャマメ系品種の種皮は褐色であり,粒形は扁楕円体で種皮に皺があるが,皺の程度には品種間差異が認められた.エダマメの調査は開花35日後(100粒重は成熟期の55日後)に行ったが,2007年と比較し2009年は開花が5~6日遅れ,また,収量に関係する形質は2009年の方が良好であり,さらに顕著な品種間差異が認められた.開花までの日数と収量に関係する形質,すなわち全重,莢付き重,1株莢数および1株莢重などの形質と高い有意な正の相関があった.また,主茎節数と全重や1株莢数などの形質との間にも有意な相関が認められた.中生の代表的な品種である白山ダダチャの1株莢重は140~185 g程度であった.食味に関係する成分として,エダマメ中の遊離アミノ酸および糖を分析した結果,遊離アミノ酸として, γ-アミノ酪酸(GABA),α-アミノ酪酸(AABA)およびオルニチンを含めて23種の遊離アミノ酸が検出された.分析に用いたダダチャマメ系品種のエダマメにはいずれの年にも,全遊離アミノ酸が新鮮重100 g当たり800 mg以上含まれ,ダダチャマメ系以外の2品種より多かった.遊離アミノ酸に占めるグルタミン酸,アスパラギンおよびアラニンの3種のアミノ酸の割合は55%であった.またエダマメに含まれる糖には,スクロース,グルコース,フルクトースおよびイノシトールの4種が認められた.このうちスクロースは平均して全糖の85%を占めた.ダダチャマメ系品種は,両年ともに新鮮重100 g当たり約4~5 gを含有していたが,ダダチャマメ系品種以外のエダマメの2品種は,3 g前後であり明らかな品種間差異が認められた.また,全遊離アミノ酸および全糖含量の間には高い正の相関が認められた.