著者
松田 澄子
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.21-36, 2018-03-15

「大陸の花嫁」の役割は、満洲支配を強固かつ永続させるため、日本民族の子どもを産み育てることであった。そのため、日本国内から大量の花嫁を送り込んだのであった。また、寮母の役割は、満蒙開拓青少年義勇軍の隊員たちの母性的養護及び指導であったが、屯墾病を防ぐ有効な手立てとはならなかった。北朝鮮や満洲方面からの引揚げ女性の中絶手術は、非合法のもと極秘に行われたが、他民族の血を国内に入れないためであり、民族防衛思想がはたらいていたことを明らかにした。岐阜県の旧黒川開拓団における「性の接待」については、開拓団内の男性支配の下で、女性が「出征兵士の妻」と「未婚女性」とに分断されて、未婚女性が犠牲になったこと、引き揚げ後も元開拓団幹部による暴言や偏見に被害女性は長年苦しめられてきたが、そこに支配と服従の関係と女性差別の構造があることを明らかにした。
著者
髙橋 永行
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.9-20, 2018-03

宮崎駿監督作品 ' 風の谷のナウシカ ' は登場人物に典型的な役割語を使わせて描かれている。私たちが現実世界で行う言語運用のメカニズム(語用論)と対比しながら作中の台詞と言語行動について考察した。現実世界でみられることばの位相がどのように創作物に投影されているか、二人のヒロイン、ナウシカとクシャナを中心にポライトネス理論のフェイス概念に基づき、談話単位で用例を示し検討する。ナウシカは女性語と男性語を併用する話体である。「風の谷の姫」という立場で積極的フェイスを保持し、やわらかいことば遣いと毅然としたことば遣いを場面ごとに切り替えるが、16 歳という年齢に相応したステレオタイプ的な言語行動がみられる。一方、クシャナは男性語専用の話体である。トルメキア王国の姫であるとともに侵略軍の司令官という立場で消極的フェイスを守ろうとするため、聞き手のフェイスを否定的に評価する方略を多用し、高圧的な印象を見る側に与えるが、随所に周囲への配慮がみられる。登場人物たちは互いの人間関係に向き合って言語行動を選択していると言えよう。
著者
松田 澄子
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.21-36, 2018-03-15

「大陸の花嫁」の役割は、満洲支配を強固かつ永続させるため、日本民族の子どもを産み育てることであった。そのため、日本国内から大量の花嫁を送り込んだのであった。また、寮母の役割は、満蒙開拓青少年義勇軍の隊員たちの母性的養護及び指導であったが、屯墾病を防ぐ有効な手立てとはならなかった。北朝鮮や満洲方面からの引揚げ女性の中絶手術は、非合法のもと極秘に行われたが、他民族の血を国内に入れないためであり、民族防衛思想がはたらいていたことを明らかにした。岐阜県の旧黒川開拓団における「性の接待」については、開拓団内の男性支配の下で、女性が「出征兵士の妻」と「未婚女性」とに分断されて、未婚女性が犠牲になったこと、引き揚げ後も元開拓団幹部による暴言や偏見に被害女性は長年苦しめられてきたが、そこに支配と服従の関係と女性差別の構造があることを明らかにした。
著者
鈴木 久美
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.95-108, 2018-03-15

1990 年代後半、日本長期信用銀行の破綻など、金融機関の破綻が相次いだ。そのため、この時期には金融システムの安定化のための議論や提案が多くなされた . そもそも、部分準備制度のもとでは健全な経営をしている銀行でさえ、銀行取付にあい破綻する可能性を持っている。この経営が健全な銀行でさえ破綻する可能性を理論的に示した Diamond and Dybvig(1983)モデルでは、効率的な均衡と非効率的な均衡のどちらが達成されるかはサンスポットであるとしていた。本論文では、実験経済学の手法を利用し、Diamond and Dybvig(1983)モデルの検証を行った。結果、銀行破綻回避策がない場合は、非効率的な均衡が達成される、すなわち、銀行破綻が生じやすいことが確認された。また、消費者(預金者)のタイプの割合がわかっている場合、支払停止条項は有効な銀行破綻回避策となりうることが、消費者のタイプの割合がわからないときは、政府による預金保険が有効な銀行回避策であることがわかった。
著者
亀ヶ谷 雅彦
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.37-52, 2018-03

本論文では、山形県においてフィールドワークを行って参院選の投票来場者を観察・記録し、三世代同居と投票率の関連性について実証的研究を行った。その結果、マクロデータでは両者の間には正の相関関係がみられるものの、実際に観察してみると、三世代同居による直接的な投票動員効果は、ほとんど見られなかった。今後さらに、他の市町村でのフィールドワーク結果の比較検討や、間接的な投票動員効果についての検討が必要であろう。
著者
山本 淳
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-14, 2012-03

山形大学附属博物館後藤文庫が持つ、近世村山地方の郷土本『老の寐言』を国語学的に検討した。文章語体を旨として書かれながらも、聞き手を意識した箇所での断定辞ジャの使用、あるいは助辞ニの脱落や助辞イの使用が観察され、音韻面でも促音や撥音の使用といった口頭語性が諸処に発現している。さらに連接母音こと ai・oi におけるイからエヘの交替、チからツへの交替、カタ行有声化などの方言的事象も色濃く観察され、さらに同系統の江口本では、音韻現象において後藤本とは異なる現れ方をしていることが判った。 キーワード:近世村山地方郷土本, 口頭語性, 音韻表記, 村山方言資料