著者
須藤 浩 内田 仙二 三宅 一憲
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.40, pp.25-33, 1972-10

エンバクをサイレージに調製する場合の刈取適期を知るため,穂孕(5月16日),出穂(6月1日),開花(6月14日),乳熟(7月1日)の4期に刈りとり,その収量を調査し,その成分を調査すると同時にサイレージを調製し,約3ヵ月後にこれを開き,品質を調査し,ヤギにより消化試験を行ない,飼料価値を査定した. 結果の要約はつぎのようである. 1)収量調査の結果,乾物の収量は,生育期が進むにつれて増大した. 粗タンパク質の収量は出穂開花の頃が最大になり,その後減少した. 2)各期収穫における材料のサイレージの品質は,いずれも良質のものが得られなかった. しかし穂孕・出穂期刈りとりのものが,開花・乳熟期のものに比較して多少良質の傾向にあったが,いずれも酪酸を相当含み,アンモニア態窒素率も高かった. 3)ヤギによる有機物の消化率は,穂孕期66%,出穂期56%,開花期41%,乳熟期サイレージ42%で,また粗タンパク質・粗繊維の消化率は,生育期が進むにつれて典型的に減少した. 消化率はサイレージの発酵的品質に支配されるが,材料草の生育時期が第一次的に支配因子になることが推定された. 4)エンバクをサイレージにした場合,単位面積あたりのDCPの収量は,穂孕期から開花期までは余り差がなかったが,乳熟期にはかなり減少した. TDNの収量は出穂期まで増加したが,その後の増加は余りなかった,出穂期またはその前後が収量・土地利用の両面から経済的で有利と思われる. 5)エンバクは一般には晶質良好なサイレージのできにくい材料であるので,調製上の基本的条件の充実,材料の混合埋蔵,添加物の工夫が必要であることが推定された。
著者
久保田 尚浩 田中 孝 島村 和夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-20, 1980

ブドウ樹の生育と地温条件との関係を明らかにするために,接ぎ木1年生の鉢植えMuscat of Alexandria(H,F、台)について,新しょう伸長期にあたる4月4日から5週間、室温を16℃以上に保ったガラス室内で地温を6段階(12,15,20,25,30,35℃)に調節し,樹体各部の生長および数種の体内養分含量に及ぼす地温の影饗を調査した. 1)新しょう伸長は25,30℃の両区で最もすぐれ,処理終了時の伸長量は約150cmであった. 一方,12,15,35℃各区の生長は処理開始直後から著しく劣り,40~50cmの伸長量であった. 2)葉,茎および新根を合計した新生部分の生体および乾物重は25,30℃両区で最も多いのに対して,12,15,35℃の各区では著しく少なく,前者の1/3以下であった. とくに,12,15℃両区の新根発生量は極めて少なかった. 旧根の乾物重は20℃以下の地温区よりも生長のすぐれた25,30℃の両区で少なく,またその乾物率(乾物重/生体重)も低かった. 3)N含量は葉では地温が高いほど,また葉以外の茎,新根および旧根では25℃区で最も低かった. P含量は葉では25℃以上の区で低く,旧根では30℃以上の区で高かった. K,Ca,Mgは地温が高いほど新根での含量が高く,一方,葉のCa,Mg含量は35℃区でとくに低かった. 葉におけるこれら各養分の総含量(含量X乾物重)は25,30℃の両区で最も多かった. 4)新根の全糖およびデンプン含量は25℃区で最も高く,これ以上の地温区において低かった. 30℃以上の区では旧根のデンプン,全糖ともに少なかったが,12℃区ではデンプン含量が著しく高いのにくらべて全糖が低かった。
著者
本多 昇 岡崎 光良
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.5, pp.10-19, 1954-09

1,栗を含む14種果樹の葉汁のPH及び緩衝能を測定し植物生理上二三の考察を行つた. 2, initial PHが5.2~6.2の間にあつて最も普通の酸度を示すもの8種, PH6.54~7.13のものは菓子胡桃,ペカン,無花果の3種,PH3.21~3.69のものは欧州葡萄,間生葡萄,梅の3種である. 3,果樹は作物に比し緩衝能が極めて大である.PH4.6~4.8とPH6.4~6.6に於けるBuffer-indexと反応抵抗性との相関は認められない. 4, initial PHを中心として酸性側に於て日本栗が14種果樹中最も緩衝力が弱いが initial PHから0.2PH単位の巾の酸性側の Buffer-index(A)に対するアルカリ性側の同様なBuffer-index(B)の比較(B/A×100)は最も大である. 5,14種の果樹を Buffer-index curveにより酸性側の緩衝能の最も強い第Iグループ(L型カーブ)に属する夏橙,温州及び梅,第IIグループ(ほぼL型カーブ)に属する欧州葡萄,枇杷,桃,無花果,間生種萄葡及びオリーブと酸側緩衝能は最も弱いがアルカリ側の緩衝能が大で-U型カーブを示す第IIIグループに属する果樹即ちペカン,菓子胡桃,日本栗,柿,支那栗とに大別出来る. 6,日本栗と支那栗,間生種葡萄と欧州葡萄,温州と夏橙に於ける如くPH3.5~4.0と3.0~3.5に於けるカーブの型により各種間に大差が見られる. 7,アルカリ側に於ても日本栗と支那栗の Buffer-indexに大差がある.又日本栗がPH7.0~7.5にて14種果樹中最大の緩衝能をもち,且つPH6.83及び7.46に於てTitration curve上特異な変曲点をもつ.8,以上の諸事実は種によるメタボリズムの特性を示唆するものである。
著者
本多 昇 岡崎 光良
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.37, pp.17-26, 1971-03

1.高地温が光合成におよぼす抑制的効果について研究するために,1966年にコイトトロンに入れた鉢植えのブドウの地温を,流水によって冷却することより,たとえば気温は35℃にかかわらず地温を約28℃とした. さらに,第1日目には25℃区と40℃(鉢冷)区として処理した両ポットを翌日は25℃のコイトトロンに入れ高温が光合成におよぼす後作用について評定した. 2.Campbell Earlyの25℃:30℃:35℃(鉢冷)区の光合成能は533.8mg/㎡/h(100):209.7(39):367.1(70)であり,Muscat of Alexandriaについては同じ順序で,それぞれ497.8mg/㎡/h(100):202.8(40):312.2(65)であった. 3.Campbell Earlyの初日の25℃:40℃(鉢冷)区の光合成能比数は100:32であり,翌日の同順序の光合成能比数は100:75であるから高温の後作用が判然した. Campbell Earlyと同様に処理したMuscat of Alexandriaについては,初日の光合成能比数が上述の順序で100:14であるが,翌日は25℃区の光合成能が,Campbell Earlyの場合を考慮すると,期待に反して低かったために100:143となった. 4.高温の光合成に対する抑制作用を緩和するために,試験の前週にアスコルビン酸1,000ppm,アデニン20ppm,ビタミンB12100ppmの混合水溶液を4回散布したところ,この期待はCampbell EarlyならびにGros Colmanについてかなり満足された. (第3表) 5.ガラス室のMuscat on Alexandriaの地植えされたもの(90×180×45cm)では,対照区と散布区で,晴天で極めて暑い3日間の平均では,光合成能比数が100:324であったが,曇ったかなり暑いある1日には同様の比数が100:109であった. 前述の混合水溶液(Vitamin B12を除く)を土壌施与することは散布法よりも効果が劣るようである。
著者
安田 勳 横山 二郎
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.13, 1959-03

ダリヤを短日処理することによつて開花の状態,地上部の生育,特に地下部(球根)の生育が如何なる影響を受けるかを知ろうとして,1958年の春から夏にかけて実験を行つた.実験に用いた品種は中輪デコラチーブ咲の"花笠"という切花用のもので,短日処理の設計は次のようであつた.7時間日長区午前10時より午後5時まで浴光10時間日長区午前7時より午後5時まで浴光13時間日長区午前6時より午後7時まで浴光標準区自然日照のまま1区当りの球根数は12個,1球の重量は平均して100gのものを用いた.定植は4月15日で,遮光期間は6月1日より7月31日の2ヵ月とした.9月1日に圃場の全球根を掘上げ,9月6日より調査を行つた結果は次の通りであつた.1.9月1日までの総開花数は13時間区が最大で7時間区が最も少なかつたが,草丈と節数は各区とも大差がない.2.掘上げた根の重さの平均は10時間区,7時間区,標準区,13時間区の順に小さくなるが,球根が地上部の風乾重に対する比率では10時間と7時間の両区がはるかに大きく,13時間及び標準区は小さい.3.球根とならなかつた繊維根の数量及び重量は日照時間の少ない区ほど少なく,日照時間ののびるに従つて大となる.4.新球根の数は日長処理の時間数と特別関係はないようである.これは何か他の原因によるのではなかろうか。
著者
原 勝己 田辺 昭 川下 辰広 角山 宏 鳥海 徹
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.55-61, 1976

1.産卵鶏にEMCを投与し,同時にpenicillamineあるいはsodium selenate (SS)を投与して,水銀の卵への移行に対するpenicillamineとSSの影響をみた. 2.penicillamine投与は水銀の卵への移行,全血中濃度に影響しなかった. 実験終了時(31日目)の組織中水銀濃度にもpenicillamineの影響はほとんど認められなかった. 3.penici11amineはEMCによる産卵率の低下をやや改善した. 4.SS投与によって卵への水銀移行量は1/2~1/5に減少した. また全血の水銀濃度は約1/2に低下した. 実験終了時(32日目)においてSS投与2群の肝の水銀量はそれぞれ対照群の15倍,28倍であった. 一方腎,脳組織では対照群の約2倍,浅胸筋では殆んど差がなかった. 血漿では逆にSS投与群は対照群の約1/2,血球ではそれぞれ1/3,1/5,羽毛では1/9,1/6であった. 5.SS投与は産卵を低下させ,またSS投与期間中はかなり激しい緑色下痢便が認められた。
著者
久保田 尚浩 三村 博美 島村 和夫
出版者
岡山大学
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.17-21, 1988-02
被引用文献数
2

モモ果実の渋味と土壌水分との関係を明らかにするために,コンテナ植えモモ樹の果実肥大,屈折計示度及びフェノール含量に及ぼす乾燥ならびに湛水の影響を調査した. 1)野性モモ台`武井白鳳'について果実発育第Ⅱ期(前期)と第Ⅲ期(後期)に2週間乾燥処理した.果実肥大はいずれの処理時期とも対照区より劣り,特に後期乾燥区で著しく劣った.屈折計示度は後期乾燥区で最も高かった.全フェノール,不溶性フェノール含量ともに対照区よりも両乾燥区で多かった. 2)寿星桃台,ユスラウメ台及びニワウメ台`山陽水蜜'について果実発育第Ⅲ期に約2週間,乾燥及び湛水処理した.果実肥大は各台木いずれの処理区でも対照区より劣った.屈折計示度は,乾燥処理区では対照区に比べて共台とユスラウメ台で高く,ニワウメ台で差がなかった.湛水処理区ではユスラウメ台で差がなく,ニワウメ台で低かった.全フェノール及び不溶性フェノール含量は,共台とニワウメ台では対照区よりも乾燥処理区で多く,ユスラウメ台では乾燥処理区で少なかった.湛水処理区ではユスラウメ台,ニワウメ台ともに対照区よりも多く,特にニワウメ台で多かった。