著者
岡本 五郎 山本 恭子 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
5 4

4倍体ブドウの巨峰系品種の中で, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’の果房には多くの無核小粒果が混入するが, これに比べて‘紅瑞宝’, ‘紅伊豆’, ‘レッド•クイーン’, ‘ハニー•レッド’ではより多くの有核果が着粒し, 無核果の混入は少ない. このような無核果の着生原因を知るために, 各品種の花器の完全性と胚珠への花粉管の伸長を比較した.‘巨峰’及び‘ピオーネ’では, 胚珠の形態的異常や胚のうの未発達が他の品種より多くみられた. 生殖核と栄養核のない花粉も両品種で特に多かったが, 寒天培地上での発芽能力とは一定の関係がなかった. 子房内に伸長した花粉管の数は, いずれの品種でも子房組織の中央部または下部で著しく減少したが, ‘巨峰’と‘ピオーネ’ではその減少が特に著しく, 胚珠へ到達する花粉管も極めて少なかった.これらのことから, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’で有核果の着生が少ないのは, 胚珠の発達が十分でないこと, 及び花粉管の子房内組織での生長が不活発であるために胚珠が不受精になりやすいことが原因であると考えられる. これらの品種では, 不受精に終った子房の多くがそのまま生長を続けて無核果になるものと思われるが, その機構は不明である.
著者
島村 和夫 三善 正道 平川 利幸 岡本 五郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.422-428, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

ユスラウメ台及び共台 (寿星桃) の‘山陽水蜜桃’を王幹形で育て, ほぼ成木期に達した6年生及び8年生時に新梢, 根, 果実の生育を比較調査した.1. ユスラウメ台では10cm以下の新梢の比率が共台よりも高く, これらは着葉密度が高く, 伸長が5月中に停止した. 20cm以上の新梢は共台の方がユスラウメ台より多く, これらは6月以降も伸長を続けた.2. ユスラウメ台の新根生長は4月下旬から5月上旬にかけて活発で, 6月中旬にはほとんどが褐変し, 白根は消失した. 共台の新根生長はユスラウメ台より約1か月遅く始まり, 7月中旬まで多くの白根がみられた.3. ユスラウメ台の果実は硬核期中も活発に肥大を続け, 共台よりも大果となり, 4~5日早く完熟した. 果汁の糖度は1983年はユスラウメ台の方が高かったが, 6月下旬から7月上旬に降雨が続いた1985年は共台の方が高かった.4. 以上のように, モモの主幹形仕立にはユスラウメ台が適していると考えられるが, 共台でも幼木期から積極的に着果させ, 夏季せん定を十分行うなど樹勢安定を図れば, 主幹形で栽培することは十分可能であると思われる.
著者
小野 俊朗 平松 竜一 久保田 尚浩 依田 征四 高木 伸友 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.779-787, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
24
被引用文献数
7 5

ブドウ'ピオーネ'の無核果栽培において,同一園で毎年着色が良好な樹と不良な樹を用いて,着色に違いが生じる原因を新梢生長や果実発育の面から検討した.新梢伸長,新梢当たりの葉面積および葉のクロフィル含量には着色良好樹と不良樹の間に差はほとんど認められなかった.単位面積当たりの収量は着色不良樹よりも良好樹でわずかに多かった.果粒肥大にも両者に大きな差はなかったが,不良樹では果粒軟化日が良好樹よりも約5日遅かった.果皮色は,果粒軟化後から成熟時まで常に着色良好樹で優れ,とくに軟化後2~3週間以降の差が顕著で,成熟時のアントシアニン含量は着色良好樹が不良樹の約2倍であった.屈折計示度は,成熟期間をとおして着色良好樹で高く,とくに果粒軟化後約3週間以降に両者の差が大きく現れた,果肉の糖含量の変化もほぼ同様であったが,その組成比には良好樹,不良樹間に差がなかった.
著者
久保田 尚浩 田中 孝 島村 和夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-20, 1980

ブドウ樹の生育と地温条件との関係を明らかにするために,接ぎ木1年生の鉢植えMuscat of Alexandria(H,F、台)について,新しょう伸長期にあたる4月4日から5週間、室温を16℃以上に保ったガラス室内で地温を6段階(12,15,20,25,30,35℃)に調節し,樹体各部の生長および数種の体内養分含量に及ぼす地温の影饗を調査した. 1)新しょう伸長は25,30℃の両区で最もすぐれ,処理終了時の伸長量は約150cmであった. 一方,12,15,35℃各区の生長は処理開始直後から著しく劣り,40~50cmの伸長量であった. 2)葉,茎および新根を合計した新生部分の生体および乾物重は25,30℃両区で最も多いのに対して,12,15,35℃の各区では著しく少なく,前者の1/3以下であった. とくに,12,15℃両区の新根発生量は極めて少なかった. 旧根の乾物重は20℃以下の地温区よりも生長のすぐれた25,30℃の両区で少なく,またその乾物率(乾物重/生体重)も低かった. 3)N含量は葉では地温が高いほど,また葉以外の茎,新根および旧根では25℃区で最も低かった. P含量は葉では25℃以上の区で低く,旧根では30℃以上の区で高かった. K,Ca,Mgは地温が高いほど新根での含量が高く,一方,葉のCa,Mg含量は35℃区でとくに低かった. 葉におけるこれら各養分の総含量(含量X乾物重)は25,30℃の両区で最も多かった. 4)新根の全糖およびデンプン含量は25℃区で最も高く,これ以上の地温区において低かった. 30℃以上の区では旧根のデンプン,全糖ともに少なかったが,12℃区ではデンプン含量が著しく高いのにくらべて全糖が低かった。
著者
久保田 尚浩 三村 博美 島村 和夫
出版者
岡山大学
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.17-21, 1988-02
被引用文献数
2

モモ果実の渋味と土壌水分との関係を明らかにするために,コンテナ植えモモ樹の果実肥大,屈折計示度及びフェノール含量に及ぼす乾燥ならびに湛水の影響を調査した. 1)野性モモ台`武井白鳳'について果実発育第Ⅱ期(前期)と第Ⅲ期(後期)に2週間乾燥処理した.果実肥大はいずれの処理時期とも対照区より劣り,特に後期乾燥区で著しく劣った.屈折計示度は後期乾燥区で最も高かった.全フェノール,不溶性フェノール含量ともに対照区よりも両乾燥区で多かった. 2)寿星桃台,ユスラウメ台及びニワウメ台`山陽水蜜'について果実発育第Ⅲ期に約2週間,乾燥及び湛水処理した.果実肥大は各台木いずれの処理区でも対照区より劣った.屈折計示度は,乾燥処理区では対照区に比べて共台とユスラウメ台で高く,ニワウメ台で差がなかった.湛水処理区ではユスラウメ台で差がなく,ニワウメ台で低かった.全フェノール及び不溶性フェノール含量は,共台とニワウメ台では対照区よりも乾燥処理区で多く,ユスラウメ台では乾燥処理区で少なかった.湛水処理区ではユスラウメ台,ニワウメ台ともに対照区よりも多く,特にニワウメ台で多かった。