著者
佐治 重豊
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.614-618, 2001-12-01

科学情報倫理の中で医学雑誌に関連する問題として, 医学と言う特定分野での基本倫理を紹介した上で, 編集・査読者と執筆者からの倫理問題を概説する.基本倫理では医学雑誌は医療関係者を対象に執筆・出版されるため, 特定の購読者に対する相互理解と啓蒙が主目的である.しかし, 出版後は医療行政面や医療行為の適切性の評価にも用いられ, インターネットを通じて患者や患者の家族も情報入手が可能となり, 新たな倫理が生じている.編集・査読者としては審査機構の質が問題となるが, 採用・不採用の判定段階で「不良論文を見逃すエラー」と「新しいアイデアと独創性に満ちた論文を不採用にする危険」, 査読上のsingle blindとdouble blind制の是非などがある.著者の倫理として基礎・臨床研究段階での倫理, 高度先進医療や臨床研究での学内倫理委員会, 医薬品臨床試験でのIRBとGCPの遵守, 投稿段階での二重投稿の禁止などである.さらに, 標準的な邦文誌として著者の属する日本消化器外科学会雑誌での現状を紹介する.
著者
岡田 英孝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.589-593, 2006-12-01
被引用文献数
1

MEDLINEでは1980年代より訂正記事情報に対する取り組みがされているが,その現状について東京医科大学図書館分館で受け入れた2003年出版の冊子体の訂正記事データを用いて調査した。調査対象は114タイトル901件で,これらのデータとPubMedのデータを比較した。訂正記事の収録率は約80%で,著者名など書誌データに関わる訂正では書誌データ自体訂正されている例も見られた。収録率は過去の研究と比べても上がっており,また訂正記事情報に容易に到達できるように様々な工夫もされているが,未収録の訂正記事の存在や書誌データ自体の表記のゆれといった問題も見られたため,利用の際は注意が必要である。
著者
竹井 弘樹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.26-33, 2007-01-01

韓国では図書館サイトヘインターネットを通じてアクセスし,いつでもどこからでも無料で電子ブックを貸出・返却できる図書館サービスが行われている。これはブロードバンドに対応できる国民の情報化において,地域差やIT習熟度による情報格差を解消する目的で,国家主導で始められた図書館サービスである。21世紀知識情報化時代の中心的役割を担う利用者の便宜を中心とした図書館の新しい姿として登場した韓国のデジタル図書館。そのねらいとそれを実際に利用しているケースなど,現地のインターネット事情および環境的な背景,利用状況などと照らし合わせながら紹介をする。
著者
豊田 恭子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.300-303, 2001-05-01

前回は主に紙媒体のコレクションをどう選んでいくかを考えました。でも今やコレクションは紙だけでは語れませんよね。そう, データベースです。たとえ資料室が小さく, 予算が限られていたとしても, データベースで武装すれば百人力! キーボードをたたいて世界中の情報を一気に手元に集められたら, インフォプロとしての貴方の評判もうなぎ登り!とはいうものの, これが結構くわせもの。まず今回は, データベースにどんなものがあるのか, その全体像をつかみましょう。その中から自分の資料室にあったデータベースを選ぶにはどうすればいいのか, 一緒に考えていきましょう。
著者
佐藤 和代
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-16, 2010-01-01

企業におけるライブラリーサービスは,電子ジャーナルに代表されるインターネットを通じた情報流通の拡大に伴い変化し,従来の資料の保管・管理から情報の流通をマネジメントする機能へと変化している。このライブラリー部門にもとめられる機能の変化について,アサヒビール(株)研究開発センターにおける運営の事例とともに,2008年に実施したライブラリー設計のコンセプトを紹介する。新ライブラリーは建物の吹き抜け部分への移動であったため,書架の配置などデザイン的に制約が多かったが,「オープンな図書室」をコンセプトに,調査研究とコミュニケーションを両立できるスペースを提案した。また,これからのライブラリー機能に必要とされる機能について,現在進行形の取り組みについても述べる。
著者
左田野 渉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.218-221, 2000-04-01

出版大手取次である日販は積年に渡って書籍注文品の流通改善に, 流通面から取り組んできた。しかし, 商品寿命の短サイクル化による「品切」の増大だけは, 卸機能の中では改善にも限界があった。このような中, デジタル印刷機の登場により, 小ロットの重版が経済的・技術的に可能となった。一冊からでも, 受注生産を可能とするオンデマンド出版である。日販は有志出版社29社と, 昨秋, (株)ブッキングを設立して, オンデマンド出版による書籍の流通改革に第一歩を踏み出した。一方で, WEBに存在するコンテンツや, 可変印刷の技術などを, オンデマンド出版のニューウェイブとして育くむことを新しい可能性として見出している。
著者
佐々木 克彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.238-244, 1997-05-01

企業図書館のアウトソーシングは本当に可能なのだろうか. アウトソーシングの導入を難しくしている原因を探り, 新しい方向性として, 書店をパートナーとしたマルチソーシングの提案を行う.
著者
檜山 正幸
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.206-211, 2000-04-01

この記事では, マークアップ技術の観点から電子出版の現状と今後について述べる。マークアップ技術の一般論を解説し, いくつかの応用例を紹介する。さらに, 電子出版への実際の応用としてOpen eBook, JapaXの活動を紹介し, 最後にXHTMLにも触れる。
著者
山地 康志 北島 由紀子 重田 有美
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.177-181, 2002-03-01

21世紀とともに始まったこの連載も,とうとう最終回になりました。かつての新人さんも「すでに優秀なINFOPROに成長したわ!」と自負している人も多いのではないでしょうか?しかし何か忘れていませんか?そうです,法律や制度です。企業図書館は公共図書館と異なり,あまり法制度についてうるさくいわれませんが,知らないうちに法律をおかしていたのでは,優秀なINFOPROとは言えません。最後に図書館にまつわる法制度について学び,胸を張ってINFOPROへ「JUMP!」しましょう。
著者
山本 順一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-14, 2001-01-01

本稿は, Eコマースのなかでも, とくにB to C(企業と消費者との間)のEコマースを対象として考察を加えた。このB to CのEコマースの多くは, インターネット利用の"通信販売"の姿をとっているところから, 通信販売を規律する訪問販売法の適用対象とされている。しかし, ネットショップは"出店""閉店"が容易でトラブル発生も多くなっており, 安全な取引の確保に向けていくつかの新たな試みがなされている。インターネット上のB to CのEコマース成約への手続きは, ビジネスモデル特許の対象ともなりうる。また, Eコマースの対象商品がソフトウェア, データベース, デジタルコンテンツ等の場合は著作権法や不正競争防止法でも保護され得る。最近, アメリカでは, このようなデジタル情報商品を提供する契約を規律する州法の制定を促す"統一コンピュータ情報取引法"(UCITA)が作成された。その問題点についても論じた。
著者
豊田 雄司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.336-343, 1998-06-01

学協会が行う学術的会議の開催にともなって発行される会議予稿集(以下, 予稿集と表記)は, 灰色文献の一つとされる会議資料のなかでも, 特に入手の難しい資料である。この種の資料は一般に査読がなされないにも関わらず, 雑誌論文と並び頻繁に参考文献として掲げられることが多い。本稿では, 理工系大学職員を対象としたアンケートの結果, 特に工学分野において, 予稿集の利用が顕著である結果を紹介し, 国内主要情報機関での同資料の収集や, データベースの現状にも触れている。さらに, 国内における予稿集の流通経路確立の可能性をも模索している。
著者
肥田 康
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.467-474, 2004-09-01

写真を専門に処理するプロフェッショナル・ラボとしては,業界で初めて,1999年にデジタルアーカイブの専門部署を創設した。次世代に継承すべき歴史的な資料や文化財を恒久的に記録・保存・運用するために,これまで様々な機関のデジタルアーカイブ構築に携わってきた。本稿ではこれまでの経験をもとに,デジタルアーカイブで制作された電子画像情報の保存について考える。さらに,画像情報のより積極的な利用のために開発した研究支援ソフトウェア「iPalletnexus^<TM>(イパレットネクサス^<TM>)」について解説し,画像情報の「利用」と「保存」の相対的な関係についても考察する。