著者
相田 満
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.460-464, 2011-11-01

多くの古典籍を擁する国文学研究資料館において,分類・主題検索の実現は,長い間の課題となっている。特に,極めて早い時期にコンピュータを実現した当館において,汎用機時代から取り組まれてきたユニオンカタログとも称するべき『日本古典籍総合目録』データベースの存在は,分類に対する関心を,常に喚起する存在でもあった。その分類・主題検索を実現する道のりは遠いが,その実現のためのインフラと取り組みは少しずつ進んではいる。本稿では,どのような取り組みが行われているか,その一端を紹介する。
著者
蔵川 圭
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.447-452, 2011
参考文献数
46
被引用文献数
1

様々な学術情報がWeb上に展開されるようになって以来,著者に対する典拠の重要性は,昨今増しているように思われる。少なくとも著者や機関の識別子が重要視され,様々なデータベースを背景としたそれら識別子がWeb上に展開されるようになってきている。本稿では,こういった著者のデータベースと識別子に焦点を当て,どのようなデータベースと識別子がWeb上に公開されているのかを整理して概観する。まず,著者データベースの類型について述べる。そして,それらのデータベースからWeb上に著者識別子が公開され,Web上の著者識別子のリンケージをとり,コミュニティ形成によってリンケージ精度を向上していく展開となることを述べる。さらに,様々な人名検索サービスを眺めながら,著者データベースの位置づけを明確化する。最後に学術情報基盤としての重要性を指摘する。
著者
神崎 正英 佐藤 良
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.453-459, 2011-11-01

国立国会図書館(NDL)は,書誌データの開放性・利用可能性を向上させる取り組みの1つとして,書誌データ提供におけるセマンティックウェブ技術への対応を進めている。この一環として,2010年6月には「ウェブ版国立国会図書館件名標目表(Web NDLSH)」,2011年7月には提供範囲を全典拠レコードに拡大し,システムの機能を拡張した「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版をリリースした。「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版では,典拠データをRDFモデルにより表現し,Linked Dataのスキームに準拠する等,セマンティックウェブ技術に対応した形式により提供している。本稿では,当サービスの概要,提供する典拠データの内容,RDFモデルの設計等について紹介をする。
著者
武田 英明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.441-446, 2011-11-01
被引用文献数
1

インターネット時代において情報の同定のために識別子や典拠といったメタデータが重要になっている。本稿ではWebにおける情報の識別,構造化という問題を概観する。まず情報の識別にはWebで利用できる識別子が必要である。Webでの識別子はURIを持ち,関連情報を提供する仕組みが必要である。既存の識別子ではISBNはWeb上の識別子にならないが,DOIは該当する。情報の構造化には,キーワード・用語,統制語彙・典拠,タキソノミー,シソーラス,オントロジーと構造化の程度の違う仕組み(概念のシステム)が現在用いられている。統制語彙・典拠のレベルでは図書館からの件名標目や典拠の公開が盛んになっている。タキソノミーの例としては生物分類を挙げ,Webに適応する部分としない部分があることを指摘した。オントロジーとしては汎用な上位オントロジーや分子生物学で用いられるGene Ontologyなどを挙げた。全体的にはより構造化を強める方法へ進んでいる。今後は,識別子も概念のシステムもよりいっそう進み,競争が激しくなるであろう。
著者
松下 茂
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.421-424, 2011-10-01

国内における企業向けのドキュメントデリバリーの件数は,近年大きく減少している。その理由は,米国サブプライムローン破綻に端を発したグローバルな金融危機とリセッションの影響による研究施設の予算削減が大きい。また企業における電子ジャーナルの利用もドキュメントデリバリーサービスに影響を与えている。一方,グローバルなドキュメントデリバリーサービスはインターネットを通じて文献を提供するe-DDS(electronic Document Delivery Service)へと変化してきているが,ドキュメントデリバリーサービスの市場を拡大していない。むしろプレイヤーの寡占化が進み,市場に参入する新たなプレイヤーは見られない。e-DDSは,出版者が提供するPay Per Viewサービスと競合しており苦戦を強いられている。長期的に見れば,論文単位での流通はe-Articleの流通として拡大していくと予想されるが,その流通の担い手は,利用者の要望をよく理解して柔軟に対応することが可能で,Pay Per Viewやe-DDSをも統合した単一のプラットフォームによるサービスを実現できるプレイヤーに主権が移っていくであろう。
著者
小山 憲司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.393-400, 2011-10-01

図書館間相互貸借(ILL)の概念モデルを用いて,国内の文献複写の現状を検討し,今後の課題について考察した。その結果,大学では文献需要が高まっているが,ビッグ・ディール契約に基づく電子ジャーナルの導入や機関リポジトリによる一次資料の電子化など,文献利用の可能性の向上により,ILLへの依存度が縮小した。一方,企業では文献需要自体が収縮したために,文献複写が減少したことが示唆された。学術雑誌の電子化が学術情報へのアクセス環境を改善した一方で,その恩恵を享受できない機関,利用者がいることから,国内全体で安定的な文献供給体制モデルを早急に確立する必要がある。
著者
石田 孝夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.523-528, 1998

私は青年海外協力隊の隊員として2年間, ブータン王国の医療学校の図書室で司書として活動してきた。これはODA(政府開発援助)の一環となる国際協力である。ブータンはインドと中国の間にある小国で九州ほどの国土に60万人が住む, 世界の発展途上国の中でもさらに貧しい国のひとつである。国としての図書館政策をまだ持っておらず, 出版文化もほとんど存在しない。そこで関ったのはブータンのモデルとして図書館の管理, 運営と人材の養成, さらに学生たちに図書館の利用法を教えることであった。それは「図書館とは何か」という原点からのライブラリアンとしての再発見の活動でもあった。ブータンはいままさに近代化と図書館活動のスタートをきったところである。
著者
林 賢紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.361-367, 2011-09-01

農林水産研究情報総合センターにおける1984年から今日に至る文献検索サービスについて概説する。まず,2000年より提供を開始した横断検索サービスAGSEARCH構築の経緯とこの運用で得られた課題を整理する。さらにこれらの課題を受け,内外で保有する各種の文献データベースを包括的に検索し,既存製品であるMetaLib,X-ServerおよびオープンソースソフトウェアXerxesを組み合わせて開発した統合検索サービス,Database Quick Searchの導入と現状の運用について紹介する。また,今後は,より多くのデータベースを利用可能にして情報源を広げるか,あるいは「入手」「所在確認」を重視し利用者を情報源に確実にナビゲートできる機能を強化するか,利用者の探索行動を分析・把握しつつ検討したい。
著者
小泉 公乃
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.294-299, 2011-08-01

本稿の目的は,1)経営戦略という概念,2)営利企業を対象とした経営戦略論と図書館経営,3)図書館固有の経営特性という観点から,図書館経営における経営戦略論とは何かについて論じることにある。まず始めに,経営戦略は経営の各領域を統合する概念であることを述べる。次に,1)営利企業を対象とした経営戦略論の中でも,複雑あるいは急進的に組織を変える理論を図書館に適用すると問題が生じやすいこと,また,2)特に図書館はマーケティングの領域が不得意であるが,一方で,3)組織に漸進的な変化を求める経営戦略論は比較的成果を上げていることを説明する。そして最後に,図書館固有の経営特性を経営の各領域に触れつつ経営戦略の観点から論じる。
著者
木部 徹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.61-67, 2010-02-01

近代の紙を媒体とした記録物は酸性化,酸化等の化学的な原因により著しい傷みが生じており,図書館やアーカイブに所蔵されている膨大な書籍や文書の多くが,利用できない状態になっている。本稿ではこうした紙媒体記録資料の劣化メカニズムを解説し,現段階での現物を対象にした保存修復技術,特に群としての資料を対象にしたマス・コンサベーションと,傷ませないことを優先させるプリベンティブ・コンサベーションの技術を概観するとともに,こうした技術を図書館等が導入する際の論理的かつ効果的な方策を提示する。
著者
金子 敏幸
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.425-428, 2011-10-01

商用データベース,Espacenetなどを利用することにより,多くの国の情報が得られるようになっている。しかし,収録期間が充分でなかったり,得られる情報が少ないなどで各国の特許庁からより多くの情報を得たいことがある。その際に,どのようにすれば特許庁のWebサイトから欲しい情報を得られるかについて台湾特許局を例に紹介する。台湾特許局の検索システムは日米欧のそれに引けをとらない充実したシステムで,言葉の壁がなければ他では得られない多くの情報を得ることができるのでぜひ活用したい。
著者
生越 由美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.477-482, 2007
参考文献数
4

日本政府は知的財産(<特集>知財)立国の構築を目指している。最も重要なことは知財人材を育成することである。これまでは,政府は大学や大学院における教育を通して知財に関して幅広い知識を有する専門家の養成を図ってきた。現在,国民に対する知財教育の方法について検討しているところである。このような背景から,知財の本質を理解している知財教育に適する人材を情報関係部署,すなわち図書館や検索会社で育成することが今後重要になるものと考えられる。
著者
井出 明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.446-451, 2006-10-01

本稿では,技術論として語られがちなフィルタリングを,社会制度の一環として捉えている。フィルタリングソフト導入の理念は青少年の健全育成のためであり,十分に合理性を持つ。しかし,無限定なフィルタリングシステムの導入は,社会に新たなる検閲制度を持ち込むことに他ならない。考察の方向性としては,インターネットを民主主義実現のためのインフラと認識した上で,フィルタリングが民主主義システムの根幹を支える"表現の自由"という価値概念を破壊しかねないという観点から批判的な考察をくわえたい。そして最終的には,今後のフィルタリングシステムをどのように運営していくべきかという視点から提言を行う。
著者
鈴木 良雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.46-51, 2006
参考文献数
8
被引用文献数
1

神奈川県立川崎図書館は公立図書館でありながら, 自然科学, 工学, 産業関係の専門的資料を有する図書館として知られている。昭和33年の図書館設置時に図書館の目的として, 「自然科学および工業」に関する資料の収集を位置付けられた。開館後は自然科学・工学・産業関係資料の重点を置いた収集を進めた。これがアイデンティティの基本としてその後も大いに影響を与えた。ユニーク資料として特許資料を整備するとともに, 社史などを鋭意収集し全国的なコレクションを構築した。平成10年には「科学と産業の情報ライブラリー」としてリニューアルを実現し, 発展を続け, 平成17年には「ビジネス支援室」を開室させ公立図書館を取り巻く環境変化の中, 新たな時代への挑戦を続けている。
著者
細野 公男
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.108-113, 2005-03-01

電子ジャーナルの購入に係わる活動を協力して行うための組織であるコンソーシアムは, 近年その重要性が強く認識されている。こうした活動が学術情報の流通基盤の一部を構成するようになったからである。そのため欧米の先進的な諸国ではコンソーシアム活動が積極的に展開されているが, わが国ではまだ参加館が少なく揺籃期にある。したがって, 今後どのように発展させていくかが図書館界にとって焦眉の問題となっている。そして海外の先進的・特徴的なコンソーシアム活動の実態を知り, それらをわが国の事情に照らして適宜参考にすることが求められている。コンソーシアムの定義・意義, 特徴, 目的, 形態, 種類, 方針は, それぞれの時代や国・地域によって異なる。そこで本稿では近年の状況について述べ, 西欧を中心に欧米における例を紹介する。さらにわが国におけるコンソーシアムの特徴と課題の一端を明らかにし, その今後について言及する。