著者
宮澤 彰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.302-306, 2006
参考文献数
10

情報標準の必要性と,ネットワーク情報化の時代でのその役割を,図書館等のサービス,システムの開発という点から述べる。それらの情報標準化を行っている日本および国際的な団体,JISC, ISO/TC46, NISO, IETFとW3C, DCMI, OAI, SISTについて紹介し,どのような標準を開発しているかを例示する。それらの標準化の枠組みが,グローバル化の時代で変化してきて,特に米国中心の枠組みを強めようとする傾向の見られることを指摘する。また,標準化の問題点として,わかりにくさ,巨大化,使われない標準,メンテナンスコストをあげる。最後に標準化への積極的な参加を呼びかける。
著者
林 博司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.629-633, 2004
参考文献数
2

生命は二つの情報システム,すなわち遺伝情報系と感覚情報系によって支えられている。遺伝情報系では,DNA→RNA→たんぱく質というセントラルドグマに従って,情報の複製,転写,翻訳がなされている。これらの情報はすべて文字で書かれた文章と同じように1次元の情報になっている。したがって,これらの情報はコンピュータを用いて保存し,比較し,特定の文字列を検索することなどが可能である。本稿では,こうした生命情報技術の現状を纏めた。
著者
山川 宏 市瀬 龍太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.514-519, 2012-12-01

21世紀にはいりIT分野の研究者が専門能力の強みのみでキャリア形成をすることは難しくなってきた。我々はこうした背景から,主に若手研究者らの自律的なキャリア形成を支援しうる教材としてHappy Academic Life 2006(HAL2006)というボードゲームを開発し,人工知能学会の20周年記念事業の一環として2006年に全会員に配布し,さらに電子版としてD-HAL2006を開発/公開した。電子版ではプレイログを利用したリフレクションにより自らの経験を大局的に客観視できるため,プレイ中に得られた教訓を各人の多様な将来像に転移しやすい。さらにD-HAL2006におけるプレイヤを学習エージェントとしてモデル化し,知的教授システムと融合した教育支援型ゲーミングシステムの研究も進めている。
著者
松隈 浩之 東 浩子 梶原 治朗 服部 文忠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.520-526, 2012-12-01

九州大学では現在,ゲーム産業の拡大および人材育成を目的とし,シリアスゲームプロジェクトを推進している2010年から2年間にわたり,厳しいリハビリ訓練をゲームの力で楽しくしようというコンセプトで,長尾病院との共同研究にて,起立-着席訓練を支援するゲーム『樹立の森リハビリウム』の開発を行った。制作後,病院および介護老人保健施設にて,利用者を対象にゲームの有用性および安全性についての検証をおこない,それぞれで高い評価を得ている。超高齢化社会の到来を目前に控え,社会において高齢者に対するケア,および関連産業のニーズが高まる中で,現場へ導入する際の具体的な留意点やリハビリ用ゲームの意義について述べる。
著者
飯田 弘之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.527-532, 2012-12-01

本稿では,ゲームの三つの側面(競技性・遊戯性・知的相互作用)に注目し,「ゲーム=知層」の観点からゲーム研究の流れについて概観する。競技性を重視したミニマックス戦略から相手モデル探索への移行,遊戯性の主要因の一つであるスリル感に基づくゲーム洗練度の理論,そして,ゲーム場における知的相互作用として試合中の情報の流れをモデル化するゲーム情報力学を紹介する。ゲームにおける人間とコンピュータの知能の相違に焦点をあてながら,投了に現れる知性の豊かさ,相手モデルにみる人間の知性の賢さ,ゲームのルール変遷に現れるスリル感の変遷,そして,ゲーム情報力学のアプローチによるゲーム場における知的な相互作用の解析例を示す。
著者
黒橋 禎夫 荒牧 英治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.326-330, 2005
参考文献数
12

計算機パワーの増大と計算機ネットワークの発展に伴い, 電子テキストが遍在する時代となった。これに伴い, 人手で翻訳規則を与えるのではなく, 電子的対訳データに基づく統計翻訳, 用例ベース翻訳の研究開発が急速に進展している。これの現状, 差異を議論し, さらに, 機械翻訳の自動評価尺度, 評価型ワークショップなどについても説明する。
著者
下畑 さより
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.331-334, 2005
参考文献数
5

日本に商用の機械翻訳システムが登場してから15年以上経ち, 今日では様々な形態の機械翻訳システムおよび翻訳支援ツールが利用可能になっている。機械翻訳システムによる翻訳については, いぜんとして否定的な意見もあるが, その特性を十分に理解して使用すれば, 非常に有用なツールである。本稿では, ビジネスシーンを対象に, 機械翻訳の有効な活用方法を紹介する。業務における翻訳は, 翻訳者のレベルも, 翻訳の目的も, 翻訳に求められる条件(スピード, コスト, 翻訳品質)も様々である。それぞれの状況に応じてどのようなシステムが最適か, どのような利用方法が有効かについて考察する。また, 急速に需要の高まっている英語以外の言語を対象とする機械翻訳の現状についても言及する。
著者
笹沼 崇
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.50-55, 2004-01-01

公共図書館は,蔵書を中心とした情報提供を行うことにとどまらず,様々な情報発信拠点としても施設を活用することにより,市民の情報活動を活性化させ,それを市の活性化にも繋げることができる。こうした考えに基づいた,茨城県結城市の図書館情報サービス計画と,図書館システムの概要を紹介する。
著者
須賀 千絵
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.384-389, 2007-08-01

本稿では,利用者の視点を導入した図書館評価を,利用者の意見を内部評価に反映させる「意見反映方式」,評価主体として参画した利用者等と図書館が協働で評価を行う「協働評価方式」,市民が独自の評価機構を作って評価を実施する「独立評価方式」に分類した。そのうえで具体的な事例が存在する「意見反映方式」「協働評価方式」の評価方法を概説した。「意見反映方式」の評価方法には,満足度評価,有効度評価,SERVQUAL評価がある。また「協働評価方式」の評価方法には,市民と専門家から構成される評価組織が公共図書館評価に参画する方法がある。合わせてそれぞれの方式の意義と問題点についてまとめた。
著者
村上 祐子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.2-6, 2009-01-01
被引用文献数
1

e-リサーチとは,電子データをネットワークを介して共有し,シミュレーションなどの処理を行って新たなデータを得ることによって,理論を展開する科学研究の方法論である。理工医薬系が主たるフィールドであるように思われているが,人文社会系でも研究データの共有から新たな検索ツールの開発,またGISなど,さまざまな試みが行われている。小論では,日本国内での例をとりあげ,今後の展開を予想するとともに,学術図書館の役割を再考する。
著者
佐藤 翔
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.51-56, 2013-02-01

電子ジャーナル等の電子リソースの普及に伴い,そのアクセスログに基づいた研究が増えている。本文へのアクセス状況を包括的に示すアクセスログの分析は利用者行動を知る際に役立つものであるが,その目的や意図はログからはわからないため,その他の手法と組み合わせることが有益である。また,引用データとは異なる傾向を示すものとしてビブリオメトリクスの中でも注目されているが,研究評価に用いるには水増しが容易である等の問題もある。日本においては,海外で行なわれているような電子ジャーナルの大規模ログ分析が未だ行なわれていないことが課題である。