著者
成田 奈緒子 伊能 千紘 油科 郁佳
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.149-158, 2013-12-01

小学生を対象に学力と学習効率、そして体力という多角的な要因と睡眠動態との関連について実践研究を行った。某小学校全校児童を対象に、2011年5月と7月の2回、計算タスクを行った際の正答率、計算タスク前後でのストレスマーカーである唾液アミラーゼ活性値、さたに文部科学省の定める「新体力テスト」のうち反復横とび20mシャトルランの二種目の記録を測定し、同時に就寝時刻、起床時刻から睡眠時間を計算してその関連を検討した。その結果、睡眠時間が5月、7月とも9時間以上である群はそうでない群に比較して7月の計算タスクの正答率が高くなり、唾液アミラーゼ活性値が低下した。また、体力テストの2種目とも記録が7月に上がった児童は、そうでない児童に比べて、7月に就寝時刻が早まり、睡眠時間が長くなった。このことより、児童の睡眠動態を良好に保つことは、学力向上や学習に対するストレスを低下させ、学習効果を上げ、さらに継続的な体力向上にも効果的に働く可能性が示唆された。
著者
三木 一彦
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.7-24, 2017-12-20

本稿は,筆者が高校での模擬授業時に生徒たちに記入してもらった「自分にとっての原風景」を主題別に提示した上で,その背景や意味について,主に空間的な側面から考察を試みたものである.検討にあたり,高校生の原風景を,①家,②環境,③学校,④非日常・非風景,の大きく4つに分類した.自分が育った家や家族・親戚,あるいは自然環境を記述する回答は多く,それらが原風景の核としての役割を果たしていると推察される.一方で社会環境や学校などをえがく回答もあり,とりわけ学校を取り上げた回答に関しては,教育系の模擬授業受講者という回答者の志向も考慮する必要があろう.今日,高校においては,より早い段階から進路を意識させる指導を行なう傾向が強いが,現在の高校生活を充実させたり,過去の自分の原風景と対話したりするような方向性ももっと重視されてよいと考える.
著者
石井 智恵美
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:08332144)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.298-276, 2019-12-20

名古屋市蓬左文庫所蔵の茶会記『茶会集』を前報告に引き続き、今回は茶会3を評釈する。この茶会は将軍家光が毛利甲斐守秀元に命じて江戸城内の山里御数寄屋で開いたものである。この時の山里は秀忠が将軍であったときに古田織部に命じて作事させたものであるが、この茶会に際して特に作り替えたりはせず、茂った枝を払い、枯れた木を植え替えたりして、そのまま使ったことが『毛利家記』に記されている。この茶会の正客は家光、相伴客は阿部備中守正次、永井信濃守尚政、堀田加賀守正盛、柳生但馬守宗矩であったが、その他、御殿での饗応を受けた御供の衆は一千余人、山里にての振舞を受けた者は三百余人と記されており、大規模な茶会であった。
著者
三木 一彦
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.63-77, 2005-12-01

江戸時代には寺社参詣を目的とする代参講が各地で盛んに結成された.本稿では,そうした代参講による参詣地の一つであった三峰山(武蔵国秩父郡)への信仰について,その関東平野への展開を,とくに武蔵国東部に焦点をあてながら検討した.武蔵国東部では,江戸時代に新田開発の進展がみられ,村落部の三峰信仰は農業に関わる願意をもっていた.しかし,時期が下るにつれて,むしろ火防・盗賊除けといった都市的な願意が表面に出てくるようになった.この理由として,街道沿いの宿場町などが三峰信仰の拠点となり,そこから都市的な信仰が村落部へも浸透していったことがあげられる.また,三峰講の組織形態を他講と比較すると,当該の村や町の地縁との関わりの密接度において中間的な性格を示していた.このように,三峰信仰は都市・村落両面の性格をあわせもちながら,武蔵国東部など関東平野へ展開していった.
著者
島崎 篤子
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.77-95, 2017-12-20

大正期には,音楽文化の面でカチューシャの歌や浅草オペラの流行などによって,それまでとは違う新しい音楽が巷間に広まった.また子どものための文化運動である童謡運動が展開された時代でもある.一方,教育界では欧米の自由教育思想や芸術教育思想が広がる中で,明治以来,ひたすら唱歌教育が行われてきた唱歌科の内容に,初めて創作・鑑賞・器楽という新しい学習活動を加えようとする動きが見られた.本稿は,一部の先導的な教員や研究者によって大正期に始められた創作に着目したものである.大正期および昭和初期の文化状況や教育状況を振り返り,創作教育の黎明期における創作教育の推進者の理論や実践について検討する.
著者
小野里 美帆 川本 拓海
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.189-199, 2017-12-20

怒りの感情調整が困難な7歳のADHD児に対し,通常学級において,行動調整及び怒りの感情調整に関わる支援を実施した.支援においては,行動及び感情の自覚化を目的とし,怒りのイメージの図式化・言語化を促した.また,対象児と決めた1日の目標の遂行結果を振り返ることや,感情が暴発した際に,状況の振り返りを行うことを通して,自発的な感情調整を試みるようになった.大人の援助による行動及び感情の自覚化の重要性と支援可能性が示唆された.

1 0 0 0 OA 仮装と心理

著者
伊地知 美智子
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.55-64, 1998-12-01

実際に「1日仮装」を行った大学生34名に対して仮装後にアンケート調査を実施し、仮装による気分の変化について考察した。調査内容は、何に仮装したか、その理由と衣装および道具、仮装時の気分、性格などである。仮装時の気分については楽しかった、陽気になった、活動的になった、無邪気になったなどへの反応が多く、弱気になった、真面目になった、臆病になったなどへの反応は少なかった。これらの反応の平均評定値を因子分析した結果、陽気、臆病、安心の3つの基本因子が抽出された。各因子の因子得点をもとにクラスター分析を行い、被験者を4つのグループに分け、それぞれのグループの特徴を明らかにした。また各因子の因子得点と性格評定値との間で相関分析を行った結果、陽気の因子と好奇心および情報要求、安心の因子と自己顕示欲の間に統計的な有意性が見られた。
著者
石川 博美
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.177-183, 2015-12-20

脂肪酸やステロールは天然・自然界に広く分布しており,生命維持に重要な役割を果たしている.抗菌効果や抗炎症作用の高いManuka と,生活習慣病予防との関係で注目されている日本茶と,n-3 系の多価不飽和脂肪酸の含有量が多く,抗酸化作用が高いと言われているグリーンナッツについて,脂質組成や脂肪酸組成,ステロール組成を比較検討した.脂質組成ではManuka の葉・樹皮,新茶の茎,秋の茶の茎にフォスファチジルエタノールアミン(PE)が特に多かった.ステロール組成ではManuka の樹皮にβ–シトステロールが62㎎と多い含有量であった.脂肪酸組成ではManuka の葉とグリーンナッツおよび秋の茶の葉に,n-3 系のα-リノレン酸の含有量が多かった.α–リノレン酸は光や熱に弱く酸化されやすいが,グリーンナッツオイルは熱にも強いと言われているので,グリーンナッツオイルを160 ~ 180℃に加熱したところ,ほとんどの脂肪酸は加熱処理により増加傾向を示したが,α-リノレン酸のみ約10% の減少傾向が認められた.Manuka や日本茶,グリーンナッツなど天然植物の脂質組成やステロールは血漿高コレステロール低下作用などの生理作用との関連性が示唆されると共に,天然植物の季節による変化の大きい事が示された.
著者
中村 修也
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.52, pp.332-322, 2018-12-20

現代において行われている四頭行事の概要を、鎌倉の円覚寺、京都の東福寺において検証し、さらに四頭茶礼については建長寺の例も見た。その結果、これらの四頭茶礼が、室町時代の「喫茶往来」に描かれた茶事とほぼ共通していることを確認した。さらに、「喫茶往来」の茶に現れた四種十服は「太平記」の百服茶と同様であることも確認したうえで、両者が室町期の一般的な喫茶との共通性をもっているという学説を紹介した。これらの茶礼が行われる禅院の清規について検証すると、清規が禅院の典型的な生活規範として絶対的な存在感を持っていたことを確認し、そこで実は喫茶が大きなウエイトをもっていることを認識した。また鎌倉時代から禅宗は日本各地に広まり、禅院の影響力が大幅に力をもっていたことがわかった。そして、なにゆえ禅院で喫茶が取り入れられたのかという点については、実はお茶が栄養に偏りのある禅院での栄養補給材料となっていることを明らかにした。
著者
加藤 一郎
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.55-69, 1997-12-01

La Internacia Milita Tribunalo en Nurnbergo komdamnis Naciistan Germanion pro la agresiva milito. Sed tiu Tribunalo mem havis multajn problemojn^, same kiel Tokia Milita Tribunalo. Ekzemple, Tribunalo aplikis la retroaktivan legon al akuzitojn. La jugistoj konsistis nur el membroj de la venkintaj landoj. Tribunalo kondaminis 'krimojn' de Naciista Germanio, sed senkulpigis tiujn de la venkntaj landoj. Tial la Internacia Milita Tribunalo absolute ne estis justa tribunalo, sed venga tribunalo. Pasis duonjarcento post la dua mondmilio kaj Nurnberga Tribunalo. Venis la tempo, kiam ni devas rekonsideri la historikan koncepton bazitan sur tiu maljusta Nurnberga Tribunalo kaj revizi la 'ortodoksan' historion pri la dua mondmilitoEnhavo~:<Antau^parolo : laproblemoj de Nurnberga Tribunalo><Naskigo de la historik^a revizionismo><Disputa punkto (1) : Cu Germanio estis agresiva lando?>
著者
加藤 一郎
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.72-87, 1999-12-01

La ortodoksa historio pri la Holokaŭsto asertis, ke la koncentrejoj de Auschwitz estis la centroj de la ekstermo de la judoj pere de 'gasaj ĉambroj', bazante sin ĉefe sur la postmilitaj atestoj kaj konfesoj. Aliflanke, la Holokaŭstaj revisionistoj kritikas tiun atestoj el la kemia kaj jura-medicina vidpunkto, bazante sin ĉefe sur la konstatoj de la lokoj de "crimoj" kaj materiaj pruvajoj. Frontante kontraŭ tiuj kritikoj de ili, J.C.Pressac (la france studanto) publikis studaĵojn, kiuj iamaniere akceptis iliajn metodo kaj samtempe klopodis defendi la bazan aserton de la ortodoksa historio pri la koncentrejoj de Auschwitz. Sed, en liaj studaĵoj troviĝas multaj eraroj kaj kontraŭdiroj.
著者
加藤 一郎
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.11-27, 2001-12-01

Pasis 12 jaroj de post la publikiĵo de la granda verko de J.C. Pressac "Auschwitz:Tekniko kaj Operacio de la Gasa ĉambro",kiu inkludas multajn dokumentojn kaj fotojn pri la proceso de la konstruado de la koncentrejoj de Auschwitz.Tiu ĉi restas kiel la centro de la disputoj inter la Holokaŭstaj ortodoksaj historiistoj kaj la Holokaŭstaj revizionistoj.\nJ.C.Pressac ne povis eltrovi la rektajn pruvojn,kiuj povus pruvi la ekziston de la "hommortiga gasa ĉambro", sed prezentis "la malrektajn pruvojn" kiel "la kriminalajn postsigonojn". Bazitante sin sur la lastatempaj studoj,mi klopodas rekonsideri pri " la kriminalaj postsignoj".
著者
豊泉 清浩
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.27-38, 2015-12-20

「特別の教科道徳」に対する期待とともに批判もある現状を踏まえ、改めてわが国の道徳教育の歴史について考察し、学校における道徳教育の意義について検討するのが、本稿の目的である。本稿では、明治期の修身科の成立から、第二次世界大戦が終結するまでの期間の道徳教育の歴史を、教科書の歴史と関連づけて考察する。戦前の修身教科書は、翻訳教科書の時代から、検定教科書の時代を経て、国定教科書の時代へと変遷していった。国定修身書にも、近代的社会倫理、基本的な自由の権利、市民的連帯、近代的職業倫理、国際協調、国際平和など、戦後の民主主義や平和主義につながる内容が見られる時期もあったが、一貫してその根底にあったのは、国体重視を基調とする国家主義であった。明治期を経て、大正デモクラシーの時代が過ぎ、やがて軍国主義・超国家主義の時期を迎える歴史の流れを、修身科に焦点を当てて概観する。