著者
越智 敏夫
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-12, 2022-04-01

政治社会における公共性はどのように発生し、維持されるのか。市民の多数派の投票をもとに構成された政治権力(与党)によって形成された政府の主張のみが公共性を意味するのであれば、公共性とは単に多数派の意見のことを意味することになり、少数者の意見は公共とは無縁のものとなってしまう。また公共性が国家単位のみで議論されるのであれば、国家内の地域や各種集団のもつ公共性が否定されることになる。本稿では公共性のありかたを多層的な視点からとらえ、そのあるべき姿を論じる。そのための中心的事例として問題対象としたのは新潟県全域を送信対象としていた民間FM 放送局の停波、閉局という事象である。
著者
向山 恭一
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.91-102, 2019-04-01

本稿の目的は、移民の時代における政治哲学の問題状況を、成員資格の観点から浮かび上がらせることである。第1節では、ジョン・ロールズとマイケル・ウォルツァーの正義論において、なぜ移民は語られないのかを検討し、境界線によって画定された共同体のもつ政治的な意味と限界を考察する。第2節では、ロジャース・ブルーベイカーとクリスチャン・ヨプケのシティズンシップをめぐる社会学的分析に目を転じ、近代国家における政治的成員資格(国籍)の包摂と排除の機制を明らかにするとともに、その現代における変容のプロセスについて考察する。第3節では、ジョセフ・カレンズの移民の倫理学を参照しながら、かならずしもシティズンシップの取得を必要とはしない、移民の時代にふさわしい成員資格のあり方を検討し、それが政治哲学にどのような問いを投げかけているのかを考察する。
著者
石田 淳
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.101-107, 2020-04-01

国際政治学分野に教科書は数多あれどもリーディングスは滅多に見かけない。なぜなら、そもそも論争らしき論争がないからである。そしてこの論争の不在は、専門領域ごとの研究者の棲み分けに由来する。この状況は研究の持続的発展を触発するものではない。とは言え、論争がなかった訳ではない。ただし、その意味が正確に理解されなければ、学知の蓄積はない。その論争とは、冷戦期日本の防衛姿勢の「意図せざる結果」をめぐる議論である。高坂正堯の「現実主義者の平和論」は、坂本義和の「中立日本の防衛構想」を、西太平洋におけるアメリカを基軸としたハブ・アンド・スポークスの同盟構造に起因する《同盟のディレンマ》を直視するものではないため、所期の安全保障効果をもたないと評価した。しかし坂本は、同時代のシェリングのコミットメント論を意識しつつ、《安全保障のディレンマ》を直視しない防衛構想は、所期の安全保障効果をもたないと論じていたのである。
著者
岡野 八代
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.89-100, 2020-04-01

本稿では、政治学教育において定着しつつあるフェミニズム理論が、逆に定着することによって、既存の政治学の特徴である公私二元論へと取り込まれてしまっているのではないかという問題提起を行なう。そのうえで、フェミニズム理論が政治学になんらかの貢献をなすには、どのような批判的視座が必要となるのかについて、ケアの倫理による公私二元論批判を経由して、ジョアン・トロントの民主主義論を例示しながら検討する。
著者
藤瀬 武彦
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.97-105, 2021-04-01

In the third report the author presents part of a collection of Olympic memorabiliarelating to the 1924 Paris Olympic Games. The report includes the All Japan AthleticsOlympic Qualifying program, the Olympic official report of the Japanese team, fifteen ParisOlympic official programs brought back from Paris by Shiso Kanakuri, a passport issued toYoshio Sarumaru, a track and field athlete who had withdrawn due to injurty after beingselected for the Japanese team, to enable him to travel to France to watch the Paris Olympics,and the boxing gold medal official diploma of Danish boxer Hans Nielsen along with theoriginal photograph of the Danish Boxing Team. Although the Great Kanto Earthquakestruck in September 1923 causing tremendous damage, the Japanese team, which had toovercome many difficulties in the aftermath of the earthquake in order to participate in theOlympics, achieved impressive results which prepared the way for the following Olympictournament.
著者
神長 英輔
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.53-65, 2022-04-01

この論文は近世後期の蝦夷地におけるコンブ業を概観するものである。具体的には、近世後期のコンブ輸出の拡大、蝦夷地におけるコンブ生産の拡大、アイヌや和人の労働者の移住、彼らが働く労働環境の変化を関係づける試みである。 江戸幕府は1698(元禄11)年に海産物の乾物(俵物と諸色)を中国向けの貿易品として指定し、海産物の貿易体制が公式に成立した。これ以降、コンブは重要な輸出商品になり、主産地である蝦夷地においてコンブ漁業の漁場が拡大した。蝦夷地におけるコンブの産地は、18世紀の末に現在の釧路地方に達し、19世紀前半には現在の根室地方に達した。 コンブ漁業の拡大は労働者としての和人やアイヌの移住を伴った。アイヌの移住は和人の漁場経営者(場所請負商人ら)の強制によるものもあった。コンブ貿易の拡大が蝦夷地におけるコンブ漁業の拡大をもたらし、それが各地のアイヌの生活に深刻な影響を及ぼしたのである。
著者
中原 澪佳
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-14, 2020-04-01

本論の目的は、パウロ・フレイレ(Paulo Freire)の目指した対話的な実践とはなにかを考察し、そのうえで、フレイレの思想をもとにしたワークショップの実践をおこない、その有効性を示すことである。はじめに、これまでの対話型の授業の課題とそれを乗りこえようとした多田孝志の理論と実践について明らかにする。つぎに、同様に真に対話的な教育を目指してきたパウロ・フレイレの思想から真に対話的な実践とはどのようなものなのかを読み解く。フレイレの思想のなかでも、とくに重要な一節である「世界を命名する1」ということばに着目し、フレイレの対話の概念を改めて明らかにする。最後に、フレイレの対話の考えをもとにした実践例を紹介し、その実践の意義を考察する。それをつうじて、フレイレの思想を現代の日本で実践化することにどのような意義があるのかを提示したい。
著者
岡野 八代
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.5, pp.89-100, 2020-04-01

本稿では、政治学教育において定着しつつあるフェミニズム理論が、逆に定着することによって、既存の政治学の特徴である公私二元論へと取り込まれてしまっているのではないかという問題提起を行なう。そのうえで、フェミニズム理論が政治学になんらかの貢献をなすには、どのような批判的視座が必要となるのかについて、ケアの倫理による公私二元論批判を経由して、ジョアン・トロントの民主主義論を例示しながら検討する。
著者
Прасол А. Ф.
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.55-72, 2019-04-01

Основные положения статьиНаиболее сложным в плане преступности периодом для Японии стало рубежное десятилетиена стыке веков, с 1995 по 2005 год. После этого криминальная ситуация в стране начала улучшаться:снизилось общее количество преступлений всех видов и число заключённых, появились тюрьмынового типа, финансируемые и управляемые частными компаниями. Эти благоприятные измененияпозволили снизить расходы на содержание пенитенциарной системы и расширить возможности поеё модернизации и приближению к лучшим мировым образцам.Японская система исполнения наказаний представляет собой любопытное сочетаниенациональных традиций и современных технологий, заимствованных в передовых странах мира.Общее движение в сторону гуманизации системы наказаний просматривается отчётливо, однакоосуществляется крайне медленно и осторожно, с оглядкой на передовой опыт.