著者
平井 良直
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-73, 1995 (Released:2022-06-01)

幕末の横浜に建てられた揚屋建築のうち,最大かつ最も豪華なものが<岩亀楼>であり,そこには《扇の問》という座敷があった。その室内装飾は, [扇面散し]ないしは[扇面流し]といったインテリア・デザインの伝統を引くのみならず,横浜開港直後に幕府の政策に沿って建てられた異人揚屋であるという, <岩亀楼>の歴史的特異性をも反映しているように思われる。
著者
根本 賢 若井 正一
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.15-20, 2010 (Released:2022-06-01)

本研究は,1999年に改訂された学校用家具の新 JIS 規格に基づく教室用の机といすが,順次導入されることを想定して,当該 JIS 規格の教室用机といすを対象に学校の普通教室において児童・生徒の座席周囲に必要な動作スペースに関する人間工学的な実験を行ったものである。 本実験の内容は,以下の通りである。 1)前後の机間でいすに立つ座る動作に必要なスペースに関する計測実験 2)左右の机間で構成される通路幅の通り抜け動作に必要なスペースに関する計測実験 3)机と壁の間に構成される通路幅の通り抜け動作に必要なスペースに関する計測実験 本実験の結果から,学校教室における児童・生徒の座席周囲に必要なスペースに関する計測値を得ることができた。当該計測値は,児童・生徒が日常使用する教室用机・いすの座席数と教室の規模の関係を定量的に把握する基礎資料となることが予期される。
著者
片山 勢津子
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.75-82, 1995 (Released:2022-06-01)

ルイ14世の時代にインテリア様式が成立した要因について,本研究では住様式の観点から考察することを試みた。その結果, ランブイエ邸に始まるサロンという邸宅での私的な社交が,住居のインテリアの発達を促したことが認められた。住居の社交空間は,前編においてみたように,公私へと分化しながら発達していく。この部屋の機能分化が,家具や装飾,室礼などの形式化を促し,個性的なデザインを生み出した。 しかし,ヴェルサイユ宮殿には私的な社交生活は存在しなかった。つまり,公私に分化したうちの公的社交空間のインテリア様式が, ここにルイ14様式として形成されたと考える。
著者
川崎 弘美 元岡 展久
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.121-128, 2018 (Released:2022-06-01)

19−20世紀転換期のウィーンにおいて,コロマン・モーザー(Koloman Moser/1868−1918)は,本来画家でありながら空間デザインで活躍していた。本稿の目的は,モーザーによる空間デザインを彼と同時期に共に活動したヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffman/1870−1956)と比較し,彼らが1903年に設立したウィーン工房の設立以前とウィーン工房時代の変化を考察することである。各々の主導あるいは協働でデザインした住宅を研究対象とし,文献と当時の写真資料をもとに,具体的に壁などの装飾の文様,家具と照明具の形状,色彩を時系列に挙げ,両者の担当を示し分析した。その結果,ウィーン工房設立によって,両者の空間デザインで相互の影響が見られた。
著者
川崎 弘美
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.101-108, 2013 (Released:2022-06-01)

本研究の目的は,世紀末ウィーンにおいて,コロマン・モーザー(Koloman Moser/1868-1918)が提示した革新的に簡素な空間デザインについて,その展示と住宅の空間デザインの関連性を明らかにすることである。文献による当時の写真資料をもとに,まず展示を概観し,その中からモーザーによる最も簡素な空間デザインを抽出する。その後,その空間デザインに影響を与えた住宅を見出す。その際,同時期の空間デザインと比較することで,モーザーの簡素さを確認していく。さらに,彼の簡素な空間デザインの源泉を,建築家チャールズ・レニー・マッキントッシュの空間デザインに見出し,考察する。
著者
森保 洋之 河野 佐知
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-8, 2000 (Released:2022-06-01)

本研究は, インテリア計画についての基礎的研究で,住宅の公的空間であるリビング・ダイニング(LD)空間モデルを用いて, LD空間を把握,構成する際の形態構成と空間意識に関する基礎的な指針を得ることを目的としている。具体的には, LD空間において,準箱庭形式による家具,間仕切りの配置の仕方等を含む形態構成を通して,人が空間を知覚し把握する際に感じる一体性,連続性,方向性の位置付け, その中でも特に連続性が持つ意味の明確化と,その形態構成の仕方と空間意識との関係について解析しており,一定の成果を得ている。
著者
松本 直司 高木 清江 三輪 真裕
出版者
日本インテリア学会
雑誌
日本インテリア学会 論文報告集 (ISSN:18824471)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17-22, 2006 (Released:2022-06-01)

本研究では,住宅居室を対象に,吹抜け空間形状と空間形状意識,印象評価の3つの関係性を求め,上層居室からと下層居室からでそれらがどのように異なるかを明確にすることを目的とする。 実験は,1 /10縮尺模型を用い,居室の印象を11評価尺度による SD 法で評価した。 分析の結果,吹抜け空間を評価する尺度は,上層・下層居室ともに「スケール性」「快適性」「関係性」「特異性」の4軸であった。空間形状意識では,下層居室からは上層居室からに比べ,レベル差に大きく影響された。上層・下層居室からの空間形状意識は,ともに「空間重複型」が最も快適な空間となった。吹抜け空間においては快適な居室を計画するためには,一体的であるより,ある程度の分離感をつくる必要がある。