著者
若林 秀隆
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-9, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
19

末梢動脈疾患患者では,サルコペニアやフレイルを認めることが多く,下肢切断や死亡のリスク因子である.そのため,サルコペニアやフレイルの評価と治療が重要である.サルコペニアの原因は,加齢,活動,栄養,疾患に分類され,入院中の不適切な活動制限や栄養管理,医原性疾患が原因の場合,医原性サルコペニアと呼ぶ.フレイルには,身体的,精神・心理的,認知的,社会的がある.身体的フレイルのおもな原因は,サルコペニア,低栄養,ポリファーマシーであり,ポリファーマシーは医原性フレイルである.医原性のサルコペニアやフレイルを予防することが重要である.サルコペニアやフレイルに対しては,リハビリテーションと栄養の視点で生活機能やQOLを最大限高める,リハビリテーション栄養の考え方が有用である.末梢動脈疾患の治療と同時に,早期からサルコペニアやフレイルの存在を疑って診断し,リハビリテーション栄養の視点で介入してほしい.
著者
寺部 雄太 市岡 滋
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.74-78, 2017

序文:下肢慢性創傷治療においてLimb salvageのみならずFunctional salvageを見据えての治療が重要となる.小切断後の足部は,内反変形をきたすことが多い.長期の経過で変形は高度となり,変形により創傷を発生させることがある.その際に外科的除圧(Surgical off-loading)を図ることがある.今回三関節固定術によるSurgical off-loadingを行ったため報告する.方法:Surgical off-loadingは創傷の発生予防もしくは治療のために変形した足部のアライメントを整える治療である.今回リスフラン関節離断術後の48歳女性が内反変形により足部外側に創傷を発生.装具調整も含めた保存的治療を行っても改善しないため,創傷治療のため三関節固定術を施行した.結語:術後新たな短下肢装具を作製し,歩行を開始した.1年経過時点で明らかな問題なく経過している.三関節固定術は,適応を考慮すれば有用な方法となると考えられる.
著者
永松 正代 綾部 忍
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.69-76, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
1

要旨:壊死性筋膜炎は早期診断が重要である.鑑別疾患である蜂窩織炎の治療は抗生剤の全身投与であるが,壊死性筋膜炎の治療の根幹は早期の外科的デブリードマンであり,治療方針が異なるからである.2011 年10 月から2013 年6 月までの1 年9 カ月の間経験した壊死性筋膜炎9 症例について検討を行った.発症年齢は37 歳から86 歳に及び平均年齢は69.2 歳であった.4 例が基礎疾患に糖尿病を認めた.初診時に壊死性筋膜炎と診断されたのは3 例にすぎなかった.8 例にデブリードマン手術を行った.その結果,死亡率は33.3%であった.
著者
宮本 明
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-59, 2012

重症虚血肢(CLI)を救肢するには,血行再建が必須である.CLI 患者は心血管疾患を高率に合併するため,外科バイパス術より低侵襲の血管内治療(EVT)が注目されている.CLI は,重症膝下動脈(BK)病変を高率に合併するため,足部までの血流を確保するにはBK のEVT が必要であるが,BK は,血管径が細く,長区域の完全閉塞病変が多いため,EVT には挑戦的な領域である.近年,ガイドワイヤーやバルーンの細径化,エコーガイドの応用や両方向性アプローチの導入により,EVT の初期成功率は著しく向上し,救肢に関しては,遠位バイパス術に劣らないと報告されている.しかし,EVT の長期開存率は未だ不良であり,CLI を再燃させる可能性は否定できない.最近,BK 病変に対する薬剤溶出ステントやバルーンの有効性が報告され,EVT の長期開存率の向上が期待されている.今後,BK 領域においてもEVT が血行再建術の第一選択となる可能性が高い.
著者
大平 吉夫 上口 茂徳
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.8-16, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
6

要旨:機能するフットウェア(足底装具,靴型装具)や短下肢装具を提供するためには適切なアセスメントが重要であり,神経障害や血流障害の有無以外にも関節可動域やポジション,動きの質などの機能的評価が必要とされる.それらアセスメントの情報が少なければ機能するフットウェアの作製は困難である.フットウェアを機能させるためには治療プログラムが重要となる.フットウェアは適切に装着して使用することで効果を得ることができ,適切な装着と使用を促す環境が必要とされる.本邦は糖尿病足病変に対するフットウェアの総論(前編)に続く後編であり,より機能的なフットウェアを提供すること,フットウェアが機能する治療プラグラムを中心にまとめている.
著者
久保 和也 松本 純一 村田 健児 大橋 聡子 井澤 克也 山崎 知美 寺部 雄太 大平 吉夫 安藤 弘
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.81-84, 2013-06-28 (Released:2013-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

【目的】糖尿病・末梢動脈疾患患者における足底部創傷部位と足関節背屈可動域との関係を明らかにすることとした.【対象と方法】糖尿病・末梢動脈疾患患者15例27肢(男性18肢,女性9肢,平均年齢69.9±9.4歳)を対象とした.年齢,糖尿病・人工透析の有無,足関節可動域,膝関節可動域,足底部創傷部位,機能的自立度評価表(FIM)移動項目,足関節上腕血圧比,皮膚灌流圧をカルテより後方視的に抽出した.足底部創傷部位は横足根関節より遠位を前足部とし,前足部・後足部に分類した.足関節背屈可動域0°以下を制限あり群とし,なし群との2群間比較を行った.【結果】制限あり群に前足部創傷を有する者が有意に多かった(p<0.01).【結語】前足部に創傷を有する患者の足関節背屈可動域訓練の関連性が示唆され,創傷予防・治療の一貫として足関節背屈可動域拡大は十分な介入効果を認める可能性がある.
著者
小浦場 祥夫 浦澤 一史 戸島 雅彦 内山 英祐 本田 耕一 佐藤 勝彦 本間 之子 越田 亮司 高村 雅二
出版者
日本下肢救済・足病学会
雑誌
日本下肢救済・足病学会誌 (ISSN:1883857X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.111-116, 2010
被引用文献数
1

要旨:年々増加する重症下肢虚血の救肢のため,さまざまなチームアプローチが全国で試みられている.時計台記念病院は2006 年に開設されたまだ新しい病院であるが,早くより形成外科による創傷治療と循環器内科による血行再建のコラボレーションが実現し,積極的に重症下肢虚血の治療を行ってきた.これに加え「自分の足で歩いて帰る」ことを目標に早期より積極的なリハビリテーションを組み入れ,良好な集学的治療体制が構築されている.院内連携ならではの潤滑でタイムラグのないわれわれのCLI 治療体制・方針に関し報告する.