- 著者
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白勢 陽子
桑原 希望
中本 幸太
木曽 波音
国分 貴徳
村田 健児
金村 尚彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0624, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】脳由来神経栄養因子(以下BDNF)は,シナプスの可塑性に関与し,記憶や学習の形成において重要な役割を果たす分泌タンパク質である。また,BDNFは,Synaptophysinなどのシナプス関連タンパクの産生を促進し,神経伝達効率を改善すると報告されている。成人期ラットに対する運動介入では,脳内の様々な領域や骨格筋でのBDNFの発現を高めることが報告されている。しかし,老齢・中年齢ラットを対象とした長期的な運動介入が神経栄養因子に与える影響は不明である。そこで,本研究では,老齢・中年齢の2群の異なる週齢のラットに対する長期的な運動介入による運動療法の効果について,脊髄におけるBDNF,Synaptophysinの発現への影響を解明することを目的として行った。【方法】Wistar系雄性ラット20匹(老齢,中年齢各10匹)を対象とし,各群を走行群5匹,非走行群各5匹と無作為に分類した。走行群は小動物用トレッドミルを使用し,60分を1日1回,週5回,4週間の運動を行った。実験終了後,脊髄(L3-5レベル)を採取し,凍結包埋し厚さ16μmで切片作製を行い,一次抗体としてBDNF,Synaptophysin,二次抗体としてDylight488,Alexa546を使用し,蛍光免疫組織化学染色を行った。観察した切片は画像解析ソフトで解析を行い,脊髄横断切片の単位面積当たりの積算輝度を算出した。算出された値を比較するために一元配置分散分析を用い,Tukey法による多重比較を用いた(有意水準5%未満)。【結果】BDNFの単位面積当たりの積算輝度は,老齢群の走行群(8.69),非走行群(9.20),中年齢群の走行群(13.89),非走行群(7.93)であり,老齢群では両群に差はなかったが,中年齢群では,走行群は非走行群と比較して増加傾向であった。Synaptophysinの単位面積当たりの積算輝度は,老齢群の走行群(2.22),非走行群(1.79),中年齢群の走行群(4.26),非走行群(0.84)であり,中年齢群では,走行群が有意に増加した(p<0.01)。老齢群では,走行群が非走行群に比べ増加傾向であった。【結論】老齢群では,運動によるBDNFの増加はみられなかったが,Synaptophysinは増加傾向であった。中年齢群では,運動によってBDNFは増加傾向となり,運動によりSynaptophysinが有意に増加し,神経伝達効率が高まり活性化が図られた。週齢の影響では,加齢に応じて神経活性化の程度が異なり,中年齢群のほうが老齢群に比べて,神経活性化の度合いが高かった。Synaptophysinは神経小胞体の中にあり,神経伝達に関与している。運動により,Synaptophysinが増加することで,神経の伝達効率が高まったと考えられる。しかし,週齢により,運動による神経活性化の度合いの違いが明らかとなり,個別的運動介入の必要性が示唆された。