著者
内田 浩昭 吉見 晃 徳永 英明 小倉 興太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1997, no.4, pp.276-282, 1997

磁気記録用バリウムフェライトの効率的な合成を目的として,合成反応に及ぼすフラックスの添加と焼成試料の粉砕の影響について検討した.フラックスを添加しない場合,例えば1130℃,70分間焼成しても,試料の保磁力はサイバネティック規格に適合しない不十分なものしか得られなかった.しかし,フラックスとして塩化バリウムを1.2から2.9wt%添加することにより,1080℃,40分の焼成で,反応率,保磁力とも実用的レベルの値(97.1%,2510-26200e)に達した.さらに,遊星ボールミルで粉砕することによって,焼成試料の段階ではその保磁力が規格外にあったバリウムフェライトでも,その保磁力が改善され,実用的レベルに調整することができた.また,遊星ボールミル粉砕の効果として,保磁力の分布すなわちSFDが小さくなることを明らかにした.
著者
大井 隆夫 掛川 一樹 小坂 知子 本多 照幸 垣花 秀武
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.5, pp.543-548, 1993-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

草津白根山の火口湖である湯釜について,二つの湖水試料,二つの湖底泥試料および一つの固体火山噴出物中のランタノイド元素を中性子放射化分析法により定量した。その結果,水試料では11~14元素がppbのオーダーで,固体試料では8~10元素がppmレベルでそれぞれ定量された。すべての試料において,定量された元素でみる限り元素の存在量に関するOddo-Harkins則が成り立っていた。各試料中のランタノイド元素濃度をLeedeyChandrzte中の対応する濃度で規格化して得られるランタノイド元素パターンを求めたところ,固体試料では軽ランタノイドで左上がり,重ランタノイドでほぼ水平の傾きをもった,岩石でよく見られる,互いによく似たパターンが得られた。水試料のパターンは,全体にわずかに左上がりのものであった。固相と液相との間でのランタノイド元素の分配係数をイオン半径に対してプロットしたところ,中程度のイオン半径(90~95pm)のところでピークをもつ特徴的な曲線が得られた。これより,閉鎖系の酸性環境下においては,三価イオンの場合このあたりのイオン半径を持つ元素が最も液相側に分配しやすいことが示唆された。
著者
重松 俊男 工藤 洌
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.1, pp.103-109, 1981-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

従来,不足当量法は,その歴史的な経緯から不足当量同位体希釈法と不足当量放射化分析法にわけられていたが,不足当量分離の観点から新たに分類した。それにそって,放射化した試料について直接法,担体量変化法および比較法によりリンの定量を行なった。リンの不足当量法は,,モリブドリン酸のイソブチルメチルケトン(MIBK)抽出を用いた。担体量変化法については,従来の照射試料を二分する方法に加えて比較試料を用いる方法を検討した。NBS標準試料のオーチャードリーブス中のリン濃度を,直接法,担体量変化法の従来法および比較試料を用いる方法で定量したところ,それぞれ0.23±0.01%,0.22±0.02%および0.21±0.01%の値を得た。これらはNBSの保証値0.21±0.01%と一致しており,精度を含め定量法の正確さが確認された。その後,比較法でケイ素半導体中のリンを定量したところ,見かけの値として10.5,5.7ppbを得た。さらに,ケイ素の二次核反応で生成する32Pの量を補正したところ,ケイ素中のリン濃疫として7.9および3.1ppbを得た。