著者
野村 貴美 氏平 祐輔 松島 安信 小嶋 隆司 菅原 陽一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1980, no.9, pp.1372-1380, 1980
被引用文献数
8

リムド鋼を亜鉛系リン酸塩溶液に浸漬して化成処理レ,その表面皮膜中に形成された鉄化合物の物理・化学的状態が,転換電子M&ouml;ssbauerスペクトロメトリー, X線回折法および電子顕微鏡写真によって研究された.<BR>Bonderite 3008による処理で形成した亜鉛系リソ酸塩皮膜には高スピンの鉄(II)化合物(I.S.:1.26mm/s, Q.S.:3.40 mm/s)であるホスホフィライト[Zn<sub>2</sub>Fe(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・4H<sub>2</sub>O]と非晶質の鉄(III)化合物がホープアイト[Zn<sub>3</sub>(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・4H<sub>2</sub>O]の下層に存在していた。鉄(II互)/鉄(III)の比は,浸漬時間の増大にともなって増加したが,H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>, NaCIO<sub>3</sub>+NaNO<sub>2</sub>, NaNO<sub>2</sub>, NaNO<sub>2</sub>+NaNO<sub>3</sub>の酸化剤をリソ酸塩浴に加えると,この順に鉄(II)/鉄(III)の比が減少した。高濃度の亜鉛イオンとニッケルイオソを含んだリン酸溶液で処理した場合にはホスホフィライトの生成が抑制され,ホープアイト皮膜の下にFe<sub>3</sub>・(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>3H<sub>2</sub>Oであると考えられる鉄(III)化合物が形成された。カルシウム-亜鉛リン酸溶液(X<sub>ca</sub>=Ca/(Ca+Zn)=0.8)で処理した場合には鉄(II)化合物(I.S.:1.26 mm/s, Q.S.=2.06 mm/s)がショルツァイト[Zn<sub>2</sub>Ca(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・2H<sub>2</sub>O]層の下に存在していることがわかった。この鉄(豆)化合物の電場勾配の主軸は素地鋼表面に対して約60°に配向していた。リン酸塩処理鋼の皮膜の下にある素地鋼面の内部磁場は,浸漬時間が増大し,または皮膜が厚くなると表面に平行な配向からラソダムな配向に変わってゆくことがわかった。
著者
坂井 徹 大井 信一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.3, pp.421-426, 1977
被引用文献数
2

懸濁気泡塔における気-液接触反応の物質移動抵抗を評価する目的で,パラジウムーアルミナ触媒によるα-メチルスチレンの液相水素化反応を行なった。<BR>物質移動抵抗のうち,気-液間抵抗(1/kLah)は単独に評価できるが,液-固間抵抗(1/ksaa)は反応抵抗を含む総括抵抗から分離しなければならない。水素の触媒表面濃度が化学反応速度と総括速度の比によって,ま塵反応抵抗と総括抵抗の比によって,ともに水素の気-液界面濃度に関係づけられるので,1/kLabの値と,通気ガキマゼ糟を用いて反応過程律速のもとであらかじめ求めた表面反応速度の値を用いて1/ksaa,を単離して評価できる。<BR>このようにして,両抵抗を別個に評価し,それぞれ懸濁気泡塔の操作変数(通気速度および触媒濃度)との関係を定量的に示した。また総括抵抗に寄与する各抵抗の割合と操作変数とめ相関性を求あた。ざずらに,ガスホホールドアップ,気泡径,気-液界面積および物質移動係数などと操作変数との関係を検討しほぼ妥当な結果を得た。
著者
木原 博 岡本 郁男 大森 明 中野 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.4, pp.713-718, 1973-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

はんだ付けにおける金属ステアレートなどの金属塩のフラックス作用を,金属の種類を変えて,金属塩とSn-Pb共晶はんだ間の反応がはんだの銅板上におけるぬれに対していかに作用しているかを研究した。その結果,金属塩のフラック作用機構はつぎのとおりであることが明らかにされた。まず,金属塩はSn-Pb溶融共晶はんだ中のスズと反応し,金属およびスズ塩を与える。その生成した金属ははんだ中へ溶解し,その結果はんだが母板上をぬれていくものと思われる。そして金属塩と溶融Sn-Pb共晶はんだとの反応は,金属の酸化還元電位および金属ステアレートの生成標準自由エネルギーに支配されるのではないかと思われる。
著者
小倉 興太郎 右田 たい子 山田 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.817-821, 1989
被引用文献数
2

メタンは化学的に不活性な化学種であるが, CH<SUB>4</SUB>-NH<SUB>3</SUB>-H<SUB>2</SUB>O系の光化学反応によって付加価値の高い化合物に転化することができた。主生成物は, メチルアミン, エチレンジアミン, メタノール, エタン, 水素である。これらの化合物の生成において, もっとも重要な化学種は ・CH<SUB>3</SUB>であるが, このラジカルは水の光分解 (185nm) によって発生する ・OH のメタンからの水素引抜反応により生成する。また, NH<SUB>3</SUB>は 185nmの光を吸収して・NH<SUB>2</SUB>と・Hに分解する。CH<SUB>3</SUB>NH<SUB>2</SUB>, CH<SUB>3</SUB>OH, C<SUB>2</SUB>H<SUB>6</SUB>, H<SUB>2</SUB> の生成は, ・NH<SUB>2</SUB>,・CH<SUB>3</SUB>,・OHラジカル,・H原子の相互カップリングによるものである。ESR-スピンドラッピング法によれば, CH<SUB>4</SUB>-NH<SUB>3</SUB>-H<SUB>2</SUB>O系の光化学反応において, ・CH<SUB>2</SUB>NH<SUB>2</SUB>の存在を確認することができたので, エチレンジアミンは・CH<SUB>2</SUB>NH<SUB>2</SUB> の二量化によるものと結論した。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.10, pp.1184-1187, 1993-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

アルギン酸は,β-1,4結合したD-マンヌロン酸とα-1,4結合したL-グルロン酸から構成される酸性高分子多糖である。アルギン酸ナトリウム水溶液は,適当な二価金属イオンを添加するとゲル化することが知られている。しかしながら,ゲル化に及ぼす添加イオン種の影響は明らかでない。本研究では,その影響をレオロジー測定を通して研究した。レオロジー測定は10wt%アルギン酸ナトリウム水溶液に種々の濃度で塩化カルシウム,塩化ストロンチウムを添加した系について,円錐-円板型レオメーターを用いて測定温度25℃で行った。ゲル化するに要する添加塩量は,塩化ストロンチウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウムの順で増加した。これは,アルギン酸に対する二価金属イオンの親和性が,Sr2+>Ca2+>Mg2+ の順で低下するためと考えられる
著者
蒔田 桂 畔柳 和士 安藤 文雄 纐纈 銃吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.2001, no.10, pp.573-579, 2001
被引用文献数
3

簡便でかつアジドやリンのジハロ誘導体を用いることなく安全にイミノホスホランを合成する目的で,アルキルアミノホスホニウム塩の電解還元を行った.等モルの電気量を通電することにより一電子還元が起こり,<i>&alpha;</i>位の水素ラジカルが引き抜かれ,リンイリドおよびイミノホスホランが生成することを見いだした.この系にアルデヒドを共存させて得られる反応生成物を単離,同定した.アルキル置換基が電子供給基であるMe基ではイミノホスホランが定量的に得られた.一方,電子求引基を有するアルキル置換基の場合は,定量的にイリドのみを与えた.ベンジル基を有するホスホニウムイオンではWittig反応とAza-Wittig反応の両経路が進行し,相当する混合物を与えた.<br>
著者
飯田 武揚 飯田 武夫 野崎 弘 鋤柄 光則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1976, no.5, pp.837-844, 1976
被引用文献数
3

アイソタクチックポリプロピレンを常圧下,380℃で熱分解し,室温で液状の炭化水素の熱分解生成物を得た。この分解油のガスクロマトグラムには微量な成分を含めて40本以上のピークが現われる。それらの中で分解油重量に対して3wt%以上の成分である8本のピークを選び,それらを精密分留装置で分取した.これらの成分の構造決定は主として<SUP>13</SUP>C NMRスペクトル順量スペクトルによった。その結果ペンタン,2-メチル-1-ペンテン(プロピレンの二量体オレフィン),4-メチルヘプタン(三量体パラフィン),2,4-ジメチノレ-1-ヘプテン(三量体ナレフィン),4,6-ジメチルノナン(四量体パラフィン),2,4,6-トリメチル-1-ノネン(四量体オレフィン),4,6,8-トリメチルウンデカン(五量体パラフィン),2,4,6,8-テトラメチル-1-ウンデセン(五量体オレフィン)の八つの成分の構造を決定することができた.四量体パラフィンから五量体オレフィンにかけて<SUP>13</SUP>CNMRスペクトルにはダイアドとトライアドの立体規則性によるシグナルの多重性が現われる。これらのシグナルのタクチシティーを含めての帰属と成分の構造決定から,熱分縦成物の72wt%は分枝モノオレフィンであり,21wt%は分枝パラフィンであること,さらにポリプ・ピレンのアイソタクチックな構造が熱分鰍こよって変化し,ヘテロタクチックな構造をもつ熱分解生成物ができていることがわかった。
著者
松井 博 橋詰 源蔵 足立 吟也 塩川 二朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.959-963, 1988-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

CaS:Ce 蛍光体に水蒸気を作用させたときの CaS:Ce の加水分解過程を調べた。CaS:Ce を 25℃, 40% RH の雰囲気中に置くと, CaS 結晶の表面は初期の段階ですでに SO4と SO3 が生成している。そこへ, まず水蒸気が CaS の構造中に OH の形で取り込まれ, つぎに分子状の水として入ってゆく。さらに CaS と水蒸気と接触しつづけると, あらたに Ca(OH)2 が生成し, これが空気中の二酸化炭素と反応して CaCO3 が生成する。加水分解の初期から CaS:Ce の表面にはすでに CaSO4, CaSO3 の存在が認められ, また試料に水が吸着しやすく その結果 Ca(OH)2 が生成した。生成した Ca(OH)2 は炭酸化が徐々に進行し CaCO3 も一部生成した。さらに, 25℃ の飽和水蒸気雰囲気にしたデシケーター中に放置すると, 一部, II・CaSO4 が生成するものの最終的には CaSO3・1/2H2O に変化した。これは試料を飽和水蒸気雰囲気にデシケーター中に放置した結果, 酸素が不足したため II・CaSO4 が生成しにくくなったものと思われる。
著者
神谷 信行 星野 謙一 太田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.140-146, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ヘキサクロロ白金(IV)酸(塩化白金酸)の熱分解過程をTG,DTAを用いて調べ,熱分解法で作製した白金被覆チタン電極の電極性能との関連を検討した。H2PtCl6・6H20,PtCl4・5H20の結晶および水溶液はほぼ同じ温度でPtCl2,Ptへと熱分解し,それぞれの生成する温度は330,530℃ であった。これに対してブチルアルコール(n-BuOH)を溶媒として熱分解を行なうと約400℃ でPtまで還元される。H2PtCl6のn-BuOH溶液をチタン基体に塗布,熱分解する方法により,低温(300℃)でも粗度係数の大きな電極をつくることができるが,高温で焼成するほど粗度係数は小さくなった。白金とチタン基体との接合部の焼結,露出したチタン表面の封孔処理の程度は焼成温度が高いほどよく,高温処理の方が耐久性はよい。n-BuOHのほかにも種々の有機化合物を使い熱分解を調べた結果,Pt(II)に有機物が配位した状態(錯体)を経て酸化還元が進みやすくなり低温でPtoまで分解されるものと思われる。
著者
森 川豊 中 洋- 尾 崎葦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1023-1028, 1972-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

-重促進鉄(Fe-Al203)上における窒素ガスの同位体交換反応の速度を280~330℃で求めた。この速度は,吸着窒素の脱離速度と-致したので,-重促進鉄上に吸着した窒素は大部分解離型であると推定された。-重促進鉄上での同位体交換反応は純鉄上,二重促進鉄上でのそれにくらべてきわめて速い。また同位体交換反応に対する共存水素の効果は,二重促進鉄の場合には促進効果であったのに対し-重促進鉄では阻害効果を示した。純鉄にK20を添加したFe-K20上でこの共存水素の効果を調べたところ,明らかな促進効果を示した。これらの事実から,アンモニア合成触媒におけるAl203は,窒素の解離に対する活性をきわめて増大する効果を有するが,その活性は水素が共存すると減少する。また,促進剤K20は,水素が共存する系でN2=2NHなる過程を促進することにより,窒素の解離吸着をいちじるしく速くすると推定した。
著者
瀬尾 邦昭 猪川 三郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.11, pp.2215-2215, 1973

酢酸ビニル(VAc)系ポプコン重合について研究した。以下の実験で,ポプコン重合は窒素気流中55Cで行なわれた。<BR>VAcは橋かけ剤(エチレングリコールジアクリラート(EGDA),エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA))の量が5%以上でポプコン重合した。いろいろのポプコン重合物からつくった種を用いて,VAcのポプコン重合性を検討した。溶媒中で加熱処理したVAc-EGDA系の種を用いて,n一ブチルメタクリラート(n-BMA)のポプコン重合速度を測定した。 VAc-,プロピオン酸ビニルー,酪酸ビニルー,バレリアン酸ビニルーEGDA系,VAc-EGDMA系, VAc(n-BMA-EGDMA系の種)系,n-BMA(VAc-EGDA系の種)系ポプコン重合物を10%NaOH,水溶液-アセトン中で加水分解し,水-アセトンに不溶な部分を分離した。<BR>以上の実験結果から,つぎのことを考察した。すなわち,(1)ポプコン重合の開始は,種中に埋蔵されている微量のラジカルで起こる。(2)種中および重合中にできる橋かけがポプコン重合に重要な役割を演じている。(3)VAc系ポプコン重合では,主鎖および側鎖ヘラジカルが連鎖移動し,そこから橋かけができる。
著者
富永 健 巻出 義紘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1991, no.5, pp.351-357, 1991
被引用文献数
2

近年,人間活動から放出される物質が地球環境に重大な影響をおよぼしつつあるが,中でもフロンなど長寿命のハロカーボンは成層圏のオゾン層破壊や地球の温暖化をもたらすことが明らかとなった。大気中の極微量のフロン・ハロカーボンの平均濃度を精密に測定し,10年以上にわたってそれらの経年変化を研究した。フロン11やフロン12の濃度は毎年約4%ずつ,またフロン113の濃度は10~20%ずつ増加を続けている。世界的にフロン規捌が実施されると大気濃度の動向も変化が現れるはずである。大気球を用いたグラブサンプリソグ法およびクライオジェニックサンプリング法により成層圏の大気を採取し・フロンやハロカーボンの成層圏における濃度をしらべた結果,垂直分布はこれらの物質の成層圏の紫外光による分解の様子を反映することが明らかとなった。
著者
広井 満 高岡 大輔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.4, pp.762-765, 1974
被引用文献数
2

樟の一品種セスキテルペン樟の葉から不揮発牲セスキテルペノイドとして,9-オキソネロリドール〔1〕,cis- およびtrans-3, 7, 11-トリメチルドデカ-1,7,10-トリエン-3-オール-9-オン〔2〕,〔8〕,9-ナキソファルネゾール〔4〕および酢酸9-オキソファルネジル〔5〕を単離,同定した。このうち〔1〕は主成分で,その絶対配置は(+)-ネロリドールとの関連で決定した。構造決定は,物理的,化学的手段で行ない,単離は主として吸着クロマトグラフィーによって行なった。
著者
八嶋 建明 堀江 成 斎藤 純子 原 伸宜
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.1, pp.77-81, 1977
被引用文献数
12

複合金属酸化物を触媒に用いて,シクロヘキサノンオキシムから気相接触転位反応により.ε-カプロラクタムを合成する方法を研究した。各種の複合金属酸化物触媒を検討した結果,シリカーアルミナに担持した亜鉛一タングステン,ビスマスータソグステンの組み合わせが有効であることを見いだした。両触媒の最適調製条件を検討した結果,亜鉛一タソグステンでは,亜鉛対タングステンの原子比が1:2,担体1gあたり全量で1.5mg-atomの金属を担持させ,これを空気中800℃で2時間ずつ焼成したときに最大活性を示し,一方ビスマスータングステンでは,ビスマスとタングステンの原子比が2:1・焼成温座ば700℃のときに最大活性を示した。最適反応条件は・両触媒とも反応温度325℃・W7F3009.hr/molで,ε-カプロラクタムの最大収率は亜鉛-タングステン触媒で87%ピスマスータングステソ触媒で82%であった。
著者
高橋 一正 畔 和夫 奈良部 幸夫 今井 昭生 小西 優介 天田 巌 宇田川 毅 草葉 義夫 村松 岳彦 天野 壮泰 谷岡 慎一 市野 富雄 中野 清志 村上 一方
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1571-1575, 1989

波長可変レーザー装置を用いてcis-ビタミンK2(cis-VK<SUB>2</SUB>)→trans-ビタミンK<SUB>2</SUB>(trans-VK<SUB>2</SUB>)の光異性化反応を試みた。cis-VK<SUB>2</SUB>またはtrans-VK<SUB>2</SUB>の溶液に紫外から可視領域のレーザー光を照射し,それぞれの異性化量を測定した。その結果,cis-5-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化に有効な波長は280~460nmであり,とくに435と355nmが高い異性化率を示した。trans-VK<SUB>2</SUB>→cis-VK<SUB>2</SUB>の異性化反亦も同時に進行するがその速度は遅く,光平衡組成はtrans-VK<SUB>2</SUB>/cis-VK<SUB>2</SUB>7/3となった。また異性化反応は溶媒の影響を受け極性溶媒よりも無極性溶媒が有効であった。cis-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化はテトラプレニル側鎖中のナフトキノン骨格にもっとも近い二重結合で起こり,他の二重結合部では起こらず選択的反応である。窒素雰囲気下でのおもな副生成物はメナクロメノロ一ルであった。これらの結果から異性化反応過程を推定した。
著者
飛弾野 哲宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.2156-2162, 1974-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

D-グルコースにはα型とβ型の光学異性体が存在するbD-グルコースは結晶中ではα型として安定である。それを水に溶解すると溶けたα-D-グルコースの-部が変旋光をしてβ-D-グルコースへ転化してゆく。グルコースのこのような性質は,結晶グルコースの溶解速度に関して興味ある現象を示す。本研,究では,その溶解機構を速度論的に考察し,変旋光速度定数との関係,および速度を表わすに必要なパラメーターを明らかにした。そしてα-D-ンルコース飽湘後のD-グルコースの溶解遠度理論式を導いた。この式からいままで測定されていなかったα-D-グルコースの溶解度が明確にされた。理論式の正当性は結晶グルコースの溶解実験によって確かめた。またα-D-グルコースの溶解度も溶解実験によって求めた。考察の結果得られた理論式をつぎに示す。Tゼ時間fにおける全D-グルコース濃度,κ:直線化した相互溶解度曲線の勾配,β。;平衡点におけるβ。D7グルコースの溶解度,ゐ:年方向の変旋光速廉定数,海:潭方薗の変旋光速度定凱う:直線でヒした相互溶解度曲線の切片。
著者
樋口 精一郎 藤本 智 田中 誠之 鄭 澤根
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1984, no.8, pp.1268-1272, 1984

数種のオルト位アルキル置換ニトロベンゼンおよびパラ置換ニトロベンゼンの1600cm<sup>-1</sup>付近のバンドとパラ置換体に特徴的な1120,860cm<sup>-1</sup>のバンドのラマン散乱強度を検討した。1600cm<sup>-1</sup>のバンド強度の検討から,置換基効果による強度の挙動が局所的な電子密度の変化によるのではなく,分子内電荷移動に関係する電子雲の空間的広がりによることが示唆された。このことは,あつかったバンドに共鳴ラマン効果がかかわっていることを示唆する。そこで,パラ置換ニトロベンゼンの3本のバンドの強度について励起波長依存性を検討した。励起光が短波長になるにしたがい強度はほとんどの場合に増大するが,1600,1120cm<sup>-1</sup>のバンドの強度増大はそれほど大きくないのに対して,860cm<sup>-1</sup>の方は,置換基の電子供与性が強くなり分子内電荷移動型のUV吸収が長波長側ヘシフトするといちじるしく大きくなることが明らかにされた. このように強度を置換基および励起波長という2点から見ることにより,置換基による1120および860cm<sup>-1</sup>バンドの相対強度の逆転というスペクトルパターンの変化,強度のいちじるしい大きさなどの問題を解釈し得ることが示された。
著者
原田 久志 太田 誠 林 泰宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.8, pp.1229-1231, 1988-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

A methanol fuel cell combined with a photocatalytic reaction apparatus is proposed. This new type cell works as a methanol fuel cell in the dark and as a hydrogen-oxygen fuel cell under illumination. Methanol is reformed into hydrogen by the photocatalytic reaction using Pt/TiO2, and evolved hydrogen is provided for the anode of the fuel cell. The performa nce of this cell under illumination is better than that of the methanol fuel cell.
著者
森川 尚 安達 千波矢 筒井 哲夫 斎藤 省吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.962-967, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
3 32

種々のフタロシアニン(Pc)とベリレン誘導体(PTC)を用いて,(ITO(インジウム-スズ酸化物)/PTC/Pc/Au)構造の素子を作製した。これらの素子はすぺて遮光状態において・.Au電極に正電圧を印加したとき順方向となる整流性を示し,光照尉によってAu側が陽極になる光起電力を示した。短絡光電流は光量に対してほぼ比例して増加し,解放端光起電力の大きさは光量の対数に対して比例して増加した。また,これらの素子は光電流の波長依存性に,組み合わせたPTCとPcの吸収特性の違いによると思われる差が生じた。この光電流スペクトルの結果から,PTCおよびPcの両方で光電変換が行われていると考えられる。また,組み合わせたPc・PTCの種類によって・光電変換効率の大きさに明確な差が現れた。