著者
田村 類 高橋 弘樹 生塩 孝則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.2, pp.71-82, 2001 (Released:2004-02-20)
参考文献数
31

有機ラセミ結晶の新しい自然光学分割現象を見いだし,これを優先富化現象と命名した.ラセミ結晶が優先富化現象を示すための必要条件を明らかにし,その機構を解明することを目的として,優先富化現象を示す化合物の誘導体や類縁体を合成し,これらの化合物の分子 · 結晶構造と優先富化現象の相関関係,これらのラセミ結晶の形態(ラセミ化合物,ラセミ混合物,ラセミ混晶の別)について系統的な研究を行った.その結果,X線結晶構造解析と融点相図の作成により,優先富化現象を示す化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の高いラセミ化合物型の鏡像体間の混晶,あるいは中程度の秩序を持つ鏡像体間の混晶であることが判明した.一方,優先富化現象を示さない化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の低い鏡像体間の混晶であることが示された.また,溶液中での鏡像体の会合構造を保持したまま結晶化したと考えられる結晶構造を得ることができたので,この構造を基にして,優先富化現象と密接に関連する結晶多形転移の機構を提唱する.
著者
石川 徳久 杉谷 広元 李 明杰 松下 寛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.6, pp.399-404, 0001-01-01 (Released:2001-08-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

試料溶液のイオン強度調整を必要としない標準液添加法と沈殿反応を利用した陰イオン(または陽イオン)の間接電位差定量を提示する。濃度cxの測定陰イオンBを含む体積Vの試料溶液に,既知濃度crの沈殿剤陽イオンAを含む溶液(反応液)の一定量(Vr)を添加する。このとき,生成した沈殿物の組成をAmBnとすれば,cr≥mcxV/(nVr)の条件を満たす必要がある。この溶液に,Aイオン選択性電極-比較電極対を浸漬したのち,既知濃度cs1のAを含む溶液(標準液1)で滴定し,標準液1の添加体積(vs1)に対する起電力(E1)を測定する(標準液1の最終添加体積をvs10とする)。引き続いて,同一試料溶液をVおよび反応液をVr添加したのち,既知濃度cs2(>cs1)のAを含み,標準液1と同じイオン強度をもつ溶液(標準液2)で再び滴定し,標準液2の添加体積(vs2)に対する起電力(E2)を測定する。この二つの滴定曲線から,vs2=2vs1-vs10を満足するvs1, vs2に対応したE1,E2を読み取れば,Bの濃度cxに関して次式が成立する。y=(ncs1/ncrVr-mcxV)x+gここで,y=10ΔE/S,x=vs1{(cs2/cs1)-y},ΔE=E2-E1, SはAイオン選択性電極の応答勾配,gは定数である。y対xの直線プロットの勾配からcxが決定される。沈殿剤として銀イオンを,指示電極として銀イオン選択性電極を用いて,種々のイオン強度の試料溶液中の1×10-2-5×10-4mol dm-3の濃度範囲のヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを,誤差約±1%以下,相対標準偏差1%以下で定量した。
著者
堀田 和彦 渡辺 昭二 久保松 照夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1982, no.3, pp.352-355, 1982
被引用文献数
1

モノテルペン系不飽和アルデヒドであるジトラール((E)-および(Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール混合物)およびシトロネラール,3,7-ジメチル-6オクテナールの水素化反応を塩化バエルナールトで修飾したRaneyコバルト触媒により,種々の溶媒中,30~65℃,常圧下で行なった。反応の主生成物は,シトラールでは,(E)-および(Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジェシン-1-オールであり,0.2~olの水素を吸収したときにおけるこれらアルコールの収率は,0.92以上であり,1-プロ0パ.3ノm ール中でもっとも高かった。シトロネラールは相当する不飽和アルコールである3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールに選択的に水素化された。これら不飽和アルデヒドの水素化反応速度はヘプタン中にくらべて,アルコール中で顕著に増加し,その順序はつぎのようであった。メタノール>エタノール>1-プロパノール
著者
山本 隆 大村 博 森屋 泰夫 鈴木 信吉 押部 義宏 杉浦 基之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1992, no.11, pp.1269-1278, 1992
被引用文献数
4

新しいタイプの有機過酸化物を用いてラジカル反応による,ブロック,グラフトコポリマーの新しい工業的製法を開発した。<BR>ブロックコポリマーの合成には,分子中に数個のO-O結合を持つポリ過酸化物を使用する。すなわち,ポリ過酸化物で第一モノマーを重合させて,分子中にO-O結合を持つPM,を合成し,このもので第ニモノマーを重合させてPM<SUB>1</SUB>-b-PM<SUB>2</SUB>が得られる。グラフトコポリマーの合成には,O-O結合を分子中に持つモノマーと第一モノマーを,このO-O結合の分解温度以下の温度で共重合させて,O-O結合をペソダントに持つPM1を合成し,このペソダソトO-Oに第ニモノマーを付加重合させてPM<SUB>r</SUB><SUB>9</SUB>-PM<SUB>2</SUB>を合成した。酢酸ビニルとスチレンを同量もちいた場合の生成ポリマーはそれぞれ,PVAc-b-PS,84%,PVAc,6,PS10およびPVAc-9-PS,59,PVAc17,PS,24であった。また,O-O結合をペンダントに持つポリマーとポリオレフィンを加熱混練して,(ポリオレフィン)-g-(ビニルポリ0マー)を合成した。ポリプロピレンにポリスチレン(713wt)をグラフトさせた場合のグラフト効率は59%であった。<BR>得られた種々のブロック,グラフトコポリマーは,すぐれたポリマー表面改質剤,物性改良剤,相溶化剤としての機能を示した。
著者
鍵谷 勤 武本 勝雄 川添 渉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1976, no.6, pp.935-940, 1976
被引用文献数
3

クロロジフルオロメタン(CHCIF<SUB>2</SUB>),クロロトリフルオロメタン(CCIF<SUB>3</SUB>),ジグロロジフルオロメタン(CC1<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>),1,1-ジフルオロエタン(C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>F<SUB>2</SUB>),プロモクロロジフルオロメタン(CBrCIF<SUB>2</SUB>),プロモトリフルオロメタン(CBrF<SUB>3</SUB>),2,2-ジフルオロエチレン(C<SUB>2</SUB>H<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>),クロロトリフルオロメタン(C<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>)あるいはテメラフルオロエチレン(C<SUB>2</SUB>F<SUB>4</SUB>)などの各種フルオロカーボンを1000ppm含有する空気に,室温で水銀灯の光を照射した。空気中に存在するCCI<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>およびC<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>の光分解反応は,アルゴン中に存在するときより速くなった。CCI<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>を含有する空気に100Wの高圧水銀灯を照射すると,光照射後の気体中に一酸化炭素および二酸化炭素が認められた。フルオロカーボン類,クロロフルオロカーボン類,不飽和フルオロカーボン類および不飽和クロロフルオロカーボン類の初期分解度(単位時間あたりの分解率)は,紫外線の波長の短いほど大きくなり,プロモフルオロカーボン類の場合には波長の長いほど大きくなった。高圧水銀灯(100W)の光を照射したときの,C<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>の初期分解度はCCI<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>の場合の約1000倍であり,CBrCIF<SUB>2</SUB>の場合の約50倍であった。また,C<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>は太陽光線の照射によっても分解し,3日間の屋外曝露で約60%分解した。しかしながら,CC1<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>の分解は1週間の屋外曝露によってもまったく起こらなかった。C<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>の光酸化分解反応は塩素やオゾンによって促進されるが,CCI<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>およびCBrCIF<SUB>2</SUB>の分解反応は,いずれの場合にも促進されなかった。一方,CF<SUB>4</SUB>やC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>F<SUB>2</SUB>などはオゾンの分解反応に影響を与えなかったが,C<SUB>2</SUB>CIF<SUB>3</SUB>およびCBrCIF<SUB>2</SUB>はオゾンの分解反応を促進した。オゾンとCl<SUB>2</SUB>F<SUB>2</SUB>の両方を含有する空気に高圧水銀灯の光を照射した場合のオゾンの初期分解度とCCI<SUB>2</SUB>F<SUB>3</SUB>の初濃度の対数との間に直線関係がなり立った。
著者
平山 忠一 松本 高志 本里 義明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1984, no.5, pp.732-738, 1984

ペルオキソニ硫酸カリウム水溶液を含浸させたコンニャクマンナン顆粒に酢酸ビニルをグラフト共重合させてペンダントポリ(酢酸ビニル)鎖の重合度が約2000,グラフト率が54,71,84mol%のグラフト共重合体を合成した。グラフト共重合体のアセチル化物のジグロロメタン溶液を水溶液系に懸濁させて球粒子化し, さらにけん化, 橋かけしてマンナン-ポリ(ビニルアルコール)(PVA)グラフト共重合体球状ゲル粒子を調製した。得られたゲルの水系ゲルクロマトグラフィーを行なった結果,グラフト共重合体から得られたゲルのキャパシティー比,排除限界分子量はPVAゲルにくらべて大きくなった。これはPVAゲルマトリックス中にに高親水性コンニャクマンナンミクロゲル相が存在するためと考えられる。<BR>これらのゲルは水溶性のオリゴマー分離に有用であると考えらる。
著者
秋山 文紀 寺島 清隆 松田 実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.1, pp.61-65, 1977

4種のジクロロシクロヘキサン,すなわち,かtrans-1,2-体,cis-1,2-体,trans-体,およびcis-1,4-体を塩化アンチモソ(V)と反応させたところ,cis-1,2-体では原料は消失するが,異性体は生成せず,他の3種の異性体では異性化が起こることを見いだした。このさいの異性化率は1,4-ジグロロ体の反応の方がtrans-1,2-体の反応より高いことがわかった。異性化で得られる異性体のうち1,3-ジクロロ体と1,4-ジクロロ体の合計中のcis-1,3-体,cis-1,3-体,cis-1,4-体,およびcis-1,4-体の分率は出発物質や反応時間に依存しないが,反応温度および溶媒には依存することがわかった。異性化の機構としてはクロロニウムイナン中間体を経る機構よりカルボニウムイオソを経る機構の方が妥当と考えだ,以上の異性化の結果をシクロヘキセンの塩化アソチモン(V)による塩素化で副生する1,3-および1,4-ジクロロ体の分布と比較した。
著者
山本 統平 山本 忠弘 山元 俊文 広田 正義
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1980, no.4, pp.618-624, 1980
被引用文献数
2

α,α&prime;-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)およびα,α&prime;-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)を用いてメタクリル酸メチル(MMA)の熱および光増感重合を行なった。熱重合速度(<i>R</i><sub>pth</sub>)は,1,1,1-トリクロロエタン < トルエン < ベンゼン < エチルベンゼン < 1,2-ジクロロエタン < クロロベンゼン < アニソール < ブロモベンゼン < <i>o</i>-ジグロロベンゼン < ベンゾニトリル < 1,2,4-トリクロロベンゼン < 1,1,2,2-テトラクロロエタン < ベンジルアルコールの溶媒の順に増大した。重合開始速度(<i>R</i>i)は溶媒によりあまり変化しなかったのに対し,2<i>k</i><sub>t</sub>/<i>k</i><sub>p</sub><sup>2</sup>値が大きく変化した。<i>R</i><sub>pth</sub>と光増感重合速度(<i>R</i><sub>pph</sub>)の間には比例関係があった。回転セクター法によりラジカル寿命(τ)をもとめ2<i>k</i><sub>t</sub>/<i>k</i><sub>p</sub>値を算出した。2<i>k</i><sub>t</sub>/<i>k</i><sub>p</sub><sup>2</sup>と2<i>k</i><sub>t</sub>/<i>k</i><sub>p</sub>の値から2<i>k</i><sub>t</sub>と<i>k</i><sub>p</sub>の値を算出した。<i>k</i><sub>p</sub>は溶媒の種類によりわずかに変化したが,<i>R</i><sub>p</sub>の変化に比して小さいものであった。一方,2<i>k</i><sub>t</sub>は重合系の粘度に反比例的に変化し,この変化により<i>R</i><sub>p</sub>の変化が生じることがわかった。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1995, no.7, pp.540-543, 1995

6-O-カルボキシメチルキチソ(以下,CM-キチンと略す)は,金属イオンの吸着剤として注目され,吸着した金属イオンとの親和性により系のレオロジー的性質が変化する.また,CM-キチン水溶液は適当な三価の金属陽イオンによりゲル化し,このゲルは医用高分子材料として注目されている.しかしながら,ゲル化に及ぼす添加陽イオン種の影響は明らかでない.本研究では,その影響をレオロジー測定を通して研究した.レオロジー測定は10wt%CM-キチン水溶液に種々の濃度で塩化アルミニウム,塩化ガリウム(III),塩化インジウム(III)を添加した系について,円錐-円板型レオメーターを用いて測定温度25℃ で行った.ゲル化するに要する添加塩の量は,塩化イソジウム(III),塩化アルミニウム,塩化ガリウム(III)の順に増加した.これは,水溶液中におけるこれら三価金属イオンのCM-キチン分子を拘束する力が,In<SUP>3+</SUP> > Al<SUP>3+</SUP> > Ga<SUP>3+</SUP>の順に低下するためと考えられる.
著者
竹田 一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.2, pp.280-287, 1974

電気回路を簡略化したガスクロマトグラフ用簡易型エレクトロニック ディジタル インテグレーター試作を行ない,その精度,使いやすさなどにつき検討を加えた。<BR>ガスクロマトグラフよりの信号電圧は,μA-741型演算増幅器で100倍に反転増幅されたのち,μA-709型演算増幅 器,およびユニジャンクシ ントランジスターによる電圧-周波数変換回路により,入力電圧に比例したパルス列に変換される。そのパルス列は集積回路による計数回路で計数後,ニキシー管で表示される。<BR>また,入力信号電圧の微分値が一定の水準を越えたとき,ピークが溶出したとみなす自動ピーク検出回路に連動して,直前のピーク計数値の記憶表示,および計数部の帰塁を行ない,測定が容易に行なえるよう配慮した。本積分器は,市販品のほぼ1/20の費用で製作でき,実際のガスクロマトグラフ測定では,測定者が計数値を記録しなければならない不便もあるが,かなりの高精度で測定可能であった。また,本積分器の機能を向上した中級型積分器についても一部述べた。
著者
吉田 久良 亀川 克美 有田 静児
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.3, pp.387-390, 1977
被引用文献数
14

活性炭によるニクロム酸カリウム水溶液(6価クロムの濃度110ppm)からの6価クロムの吸着について,pHの影響,活性炭に吸着されたクロムのNaOHまたはHCl水溶液による溶離などについて検討した結果,つぎの結論が得られた,(1)6価クロムはpH4~6.5で活性炭に容易に吸着される。(2)6緬ク揖ムは活性炭にHCrOぺおよびCrOのような6価クロムの形で吸着される。(3)酸性側では6緬クロムは活性炭により容易に3価クロムに還元される。(4)3価クロム(クロム(III)イオン)は活性炭にほとんど吸着されない。(5)6緬クロムを吸着した活性炭を0.1N以上のNaOH水溶液で処理すると,吸着されたク律ムの100%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては6価クロムであった。(6)6価クロムを吸着した活性炭を1NHClで処理すると,吸着されたクロムの90%が溶出し,溶出したクロムのほとんどすべては3価クロムに還元されていた。
著者
藤井 知 杉江 他曾宏 村長 潔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.5, pp.867-873, 1974-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

硫酸鉄(II)と硫酸クロム(III)混合水溶液に水酸化カリウム溶液を加えて生成した水酸化鉄(II)を空気酸化して析出する四酸化三鉄を乾燥後,真空(10-5Torr)およびH2-H20混合ガス(H20/H2=2)の雰囲気下,200~500℃で加熱処理を行ない,粒子径,表面積および細孔構造(分布,細孔径,全細孔容積)の変化について,X線回折,電子顕微鏡ガス吸着により検討した。その結果,つぎのことが認められた。まず,四酸化三鉄沈殿を生成するさいは,クロム(III)を増加すると四酸化三鉄粒子の成長を抑制し,表面積をいちじるしく増大させた。沈殿物の加熱処理によって,1)四酸化三鉄の粒成長は400℃以上の温度でわずかに起こった。2)加熱にともなって含水量,表面積,細孔構造に変化が起こった。表面積は300℃までの温度で加熱脱水により増加するが,それ以上に加熱するとシンタリソグにより減少した。3)粒子径,表面積,細孔構造の変化は加熱雰囲気にも影響された。
著者
岡本 佳男 毛利 晴彦 中村 雅昭 畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.435-440, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

光学活性なポリ(メタクリル酸トリフェニルメチル)(PTrMA)を3種の異なる方法で大孔径シリカゲルに化学結合させ,高速液体クロマトグラフィー用のキラルな充填剤を調製した。その結果,メタクリル酸トリフェニルメチルとメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルとのブロック共重合体を用いるともっとも多量のPTrMAをシリカゲルに化学結合できることが明らかになった。メタノールを溶離液に用いた場合の種々のラセミ体に対する光学分割能は,従来までのPTrMA担持型充填填剤と類似していた。また,この化学結合型充填剤ではPTrMAが溶解するテトラヒドロフランやクロロホルムといった溶離液も使用可能であった。クロロホルムを溶離液に用いて,(±)-PTrMAを(+)体と(-)体に部分的に光学分割することができた。また,ラジカル重合で得られたポリ(メタクリル酸ジフェニル-2-ピリジルメヂル)も光学分割でき,このポリマーがらせん構造を有していることがわかった。化学結合型充填剤はGPC用の充填剤としての性質も有していた。分子量数千から百万までの単分散ポリスチレンを分析すると,分子量の対数値と溶出時間との間によい直線関係が得られた。
著者
作道 栄一 吉村 敏章 神田 美夏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.202-207, 1987
被引用文献数
1

S-エチル-S-フェニル-N-トシルスルフイミド(SN[1]),S-エチル-S-2-ピリジル-N-トシルスルフイミド(SN[2])および2-(N-トシルエタンスルフィンイミドイル)ピリジン=1-オキシド(SN[3])の熱分解反応に対するプロトン性溶媒(メタノール)の影響について検討した。SN[1]の熱分解反応に対する非プロトン性溶媒(ベンゼンおよび1,4-ジオキサン(DO))とプロトシ性溶媒との速度比はベンゼン:DO:メタノール=8.5:5.5:1(100℃),となり,メタノールの反応抑制効果はかなり大きい結果を示した。またSN[1]の活性化パラメーターはメタノール中でE<SUB>a</SUB>=115.1kj/mol,およびΔS<SUP>≠</SUP>=-41.OJ・K<SUP>-1</SUP>mol<SUP>-1</SUP>であり,ΔS値はSN[3]の約1/5であったお。メタノール溶媒の同位体効果はSN[1]ではk(メタノール)/k(メタノール-d)≒0.82であり,SN[2]SN[3]では重水素の効果は認められなかった。SN[1]の置換基効果はベンゼン中ではρ=+0.792,DO中ではρ=+0.809およびメタノール中ではρ=+0.851であり,溶媒の種類によるρ値の差異はあまり認められなかった。SN[3]め熱分解に対するメタノールの反応抑制効果は小さかった。得られた結果から,スルフイミドの熱分解に対するプロトン性溶媒の影響として,基質の原系に対して水素結合を形成するが,その形成箇所によって反応が抑制または促進されると考えられた。
著者
吉井 善弘 伊東 昭芳 平嶋 恒亮 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1986, no.8, pp.1117-1121, 1986
被引用文献数
2

Friedel-Crafts反応によるo-キシレン,インダンとテトラリンのフェニルスルホニル化を行ない,反応温度と配向比(3-位/4-位)の関係を調べた。その結果,インダンの配向比は高温になるほど増加するが,o-キシレンとテトラリンでは減少した。log(3-/4-)と1/Tの関係から,o-キシレン,インダンとテトラリンの3-位と4-位の活性化エネルギー差およびエントロピー差はそれぞれ,-O.39kcal/mol,2.Oe.u./mol;0.16,-O.2;-O.31,-1.5であった。また,o-キシレンとテ- ドラリンには等速温度があり,それぞれ-81,-62℃ であった。これらの結果はo-キシレンとテトラリンのフェニルスルポミニル化は求めた配向比は等速温度より高い温度であること,インダンでは低い温度であることがわかった。また,o-キシレンとテトラリンの3-位にくらべ4-位の大きい反応性は塩化アルミニウムの強い酸触媒作用と3-位の脱プロトン化の塩基触媒作用の協奏反応機構で説明できることを明らかにした。
著者
中山 哲男 中村 悦郎 小口 勝也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.2, pp.250-257, 1977-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

2種あるいは3種の遷移金属塩と臭素化合物とからなる多元系触媒を用いて,酢酸中で酸素加圧下1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を酸化し,活性な触媒種を検索するとともに酸化度およびピロメリト酸生成率におよぼす酸素圧,触媒濃度およびTMB濃度などの影響を調べた。さらに,それぞれの酸化段階における生成酸組成を詳細に分析し,TMBからピロメリト酸にいたる生成酸組成の分布および酸化反応経路を明らかにした。ピロメリト酸生成活性の高い触媒として,Co-Mn-Br,CoCe-BrおよびCo-Mn-Ce-Br系触媒を見いだした。臭化物存在下におけるCo-MnおよびCo-Ceの相乗効果は,Coに対して0.01molのMnあるいはCe,Mnに対して0.1molのCoの微量添加によっても出現することを明らかにした。Co-Ma-BrあるいはCo-Mn-Ce-Br系触媒を用いた酸素圧20kg/cm2におけるTMBの初期酸化反応速度はTMB濃度に0次であった。しかし,酸化度およびピロメリト酸生成率はTMB濃度が低いほど増大した。酸化度に対する各種生成酸の分布図はピロメリト酸の選択率が非常に高いことを示した。
著者
宮嶋 孝一郎 稲荷 恭三 中垣 正幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.2031-2034, 1974-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

タンパク変性と関連してグアニジニウムイオンの水構造に与える影響を調ぺるために,比較的低濃度ま領域で,対イオンと測定温度をいろいろかえてグアニジニウム塩水溶灌の粘度を測定し,得られた結果をJones-Doleの式にしたがって解析した。その結果,グアニジニウムイオンのB係数は測定温度領域(10,25,35℃)ではすべて正の値を示し,かつ温度の上昇とともに増大する(粘性流の活性化エネルギーへの寄与,4礎u,は-120bal/mol)という相反する結果を得た。しかしイオンの体積に基づくいわゆる"障害効果"をEinsteinの粘度式から見つもり,この効果を差し引くことにより,β係数はセシウムィオンと同程度の負の値となり,B係数の温度依存性から得られる結論と-致した。これらの結果からグアニジニウムイオンは水構造破壊イオンであると結論した。
著者
藤永 太一郎 竹中 亨 室賀 照子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.9, pp.1653-1657, 1974
被引用文献数
1

號珀(コハク)は古代から装身具として用いられ,わが国においても遣跡や古墳から発掘されている。本研究においてはこれら発掘品の原産地の同定法の検討を行なった。資料は地質学的標準資料として,原産地の明らかな久慈,銚子,瑞浪,神戸のわが国主要産地0ものと比較のため撫順,バルティック,ニュージランド産出のものを,考古学的資料は京都府長池古填のもの2種と奈良県東大寺出古墳群のもの7種を用いた。融点測定を行なったが,発掘品をますべて3QO℃以上であり,完全に化石化していた。元素分析の結果はlC:耳:Oは久慈;33二52:4,銚子;91:142:4,瑞浪;184:3O<sup>2-</sup>:4,神戸;60:39:4とばらつきがあるが,東大寺山;22:32:4,長池;22:34:4とほぼ同様の比を示した。赤外吸収スペクトルは全波長領域にわたって産地特有のパターンを示した。とくに久慈産の褐色のものと黄色のもの,および撫順産の2種は同-のパターンが得られた竃これらの事実から,日本産號珀についても赤外吸収スペクトルによって産地の同定を行ないうることが判明した。東大寺幽12号古墳の6種および長池古墳の2種はいずれも同-の産地であり,久慈産のものと同定された。このことから古墳時代においてすでに東北地方と近畿地方の間で交易のあったことが推論される。
著者
平山 良一 山岸 敬道 三田 勝久 北島 三郎 飛田 満彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.11, pp.1684-1687, 1977
被引用文献数
3

1,4-ナフトキノンを窒素下で塩化ロジウム(III)と20時間煮沸すると,暗赤色のクロロジウム錯体とともに白色の生成物[1]が得られた。[1]は酸化鉛(W),塩化鉄(III)あるいは酸素などの比較的おだやかな酸化剤によって青色の色素[2]を与えたスペクトルおよび元素分析の結果,[1]は4,4'-ジエトキシー1,1しジヒドロギシー2,2'-ピナフタレンであることがわかった。[2]は別途合成によって得られた4,4,-ジエトキシー2,2'-ビナフチリデン-1,1'-ジオン(Russigue)と-致した。
著者
深川 由紀子 香西 博明 香西 保明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.415-419, 2002

和紙抄造などに利用されているアオギリの粘質物を採取し,物理化学的特性や構成成分について研究を行った.<br> アオギリの若葉や幹に被覆する酸性多糖類は,イオン交換水にて抽出した後メタノールで精製する.多糖類は,<FONT SIZE="-2">D</FONT>-ガラクツロン酸,<FONT SIZE="-2">D</FONT>-ガラクトース,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-アラビノースおよび<FONT SIZE="-2">L</FONT>-ラムノースから構成されている.さらに粘質液を数日間放置すると粘度が低下する.アオギリ粘質物の酸による加水分解からアミノ酸である<FONT SIZE="-2">L</FONT>-グルタミン酸,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-アラニン,さらには<FONT SIZE="-2">L</FONT>-イソロイシン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-バリン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-リシン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-チロシンおよびグリシンを得た.これらの結果は,アオギリに含まれる多糖類がきわめて複雑な構造を有し,その結果特有な物理的性質を与えていることと示唆している.