著者
深川 宏樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.92, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表では、ニューギニア高地エンガ州における呪いの事例から、軋轢の解消と身体の社会的構築の関係について論じる。エンガ州では、ある人が軋轢を理由に他人に悪意を抱いて死ぬと、それが呪いとなって相手を重病におとしいれる。人は重い病にかかると、故人との軋轢を想起し、故人の息子との仲裁で軋轢の解消を試みる。この事例から本発表では、個人の身体の変調や死が、軋轢の解消を導く社会的過程の要となっていることを論じる。
著者
清水 展
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.22, 2011 (Released:2011-05-20)

私の最初のフィールドワークは、友達の紹介をとおした偶然の出会いに導かれ、当初の予定とは別の地域・民族の村で行った。民族誌を上梓した直後、1991年にピナトゥボ火山が大爆発したとき、たまたまフィリピンにいた私は、噴火被災者の救援とその後の復興を支援活動に関わった。この10年は、世界遺産のイフガオ棚田村の住民主導の植林運動の同伴者として、日本のNGOとの連携に尽力している。自身の経験から人類学と支援について考える。
著者
大川 真由子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.11, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表は、本国の植民地化活動に伴い属領の東アフリカに移住したのち、脱植民地化の過程のなかで本国に帰還した入植型帰還移民、アフリカ系オマーン人にとっての帰還およびその後の実践に着目することで、彼らの歴史認識を明らかにすることを目的としている。東アフリカでのオマーン人の歴史を残す作業のなかで彼らが元移住先をどのように語っているのかをみたうえで、その認識を形成する歴史、社会的諸要因について考察する。
著者
太田 好信
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.100, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表は、生涯をとおして先住民言語に深い関心を寄せ、自らもその習得に努めた芸術家ジャン・シャルロー(Jean Charlot, 1898-1979)の作品―とくに、彼がホノルル市に残したフレスコ壁画―を紹介し、彼の芸術活動の中核となっていた思想は何だったのか、という疑問に答える。そして、その解答を模索する中から、文化人類学においても文化を考察する際に有意義と思われる視点を導きだしたい。

1 0 0 0 OA いたぶる快楽

著者
西本 太
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.30, 2011 (Released:2011-05-20)

ラオスの山地民カントゥは、精霊など不可視の存在への供物としてスイギュウを差し出す場合、いたぶりながら殺す。これは他の動物の殺害では見られない特徴である。本発表では、スイギュウをいたぶることが、スイギュウに仮象された闘争状態を再現する契機になっていて、その闘争によって人間とスイギュウと不可視の存在の境界が揺らぐことを指摘する。
著者
中村 八重
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.43, 2011 (Released:2011-05-20)

本報告は韓国人による対馬観光を取り上げる。国境を超える韓国人の対馬観光はどのような行為であるか観光の動機と実態を探ることを目的とする。国境の島としての対馬のアイデンティティはむしろ、近接性や経済性そして韓国で広く共有されている「対馬は韓国の領土であった」という認識のもとに理解されて、韓国人観光客が対馬を訪れる動機になっていることを指摘する。
著者
山崎 幸治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.37, 2011 (Released:2011-05-20)

本発表では、今後のアイヌを含めた文化人類学的日本研究の方法論開発に向けての素地を整えることを目的に、発表者のこれまでのアイヌ研究における実践から、現状における課題を提示し、今後の研究方法のあり方を展望する。日本の先住民族であるアイヌに関する研究の実践事例は、分科会副題『「日本人」がどのように日本を調査して日本語で語るか』に内包されている様々な問題を顕在化させよう。
著者
渡部 瑞希
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第45回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.117, 2011 (Released:2011-05-20)

カトマンズの観光市場における宝飾商人の間では、商品の品質・相場に関する情報が非対称であるにも関わらず、騙しの告発は稀で顧客関係も維持されている。本発表では、こうした状況がいかにして可能であるかに関し、買い手による情報探索と、市場に情報を提供する人々の情報操作を詳細にみていくことで明らかにする。