著者
植松 夏子 柴原 弘明 今井 絵理 吉田 厚志 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.343, 2011 (Released:2012-02-13)

【背景】がん患者には様々な苦痛症状が出現する。原発部位や基礎疾患により投与できる薬剤が限られ、副作用により投与中止となる場合もみられる。また各症状に対し個々に薬剤を使用することは薬剤の相互作用や内服負担増の面で患者に苦痛を与えることもある。ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類されH1受容体拮抗作用、5-HT3拮抗作用を有するため、緩和医療領域では抗うつ作用以外の効果も期待されている。 【目的】がん緩和医療における苦痛症状へのミルタザピンの有用性を明らかにすること。 【対象と方法】2010年10月から2011年5月までに緩和ケア科でミルタザピンが処方された24例。自覚症状の変化を「著効(症状の消失)」「有効(症状の軽快)」「無効」「中止」の4段階に分けretrospectiveに評価した。なお当研究調査には十分な倫理的配慮を行った。 【結果】性別は男性11例 女性13例、原疾患は膵癌7例、胃癌5例、乳癌3例、胆管癌2例、大腸癌2例、肺癌1例、肝癌1例、前立腺癌1例、リンパ腫1例、GIST1例であった。ミルタザピンは不安・吐き気・食欲不振・掻痒感・疼痛・せん妄のいずれかまたは複数の症状がみられた患者に処方されていた。全24例のうち著効11例、有効6例、無効3例、中止4例で、中止理由は4例とも眠気であった。至適投与量は15mg 2例、7.5mg 9例、3.75mg 10例、1.875mg 3例であり、7.5mg以下の低用量投与が92%であった。 【考察】ミルタザピンはがん患者の苦痛症状に対し有効で、低用量で十分な効果がえられていた。本研究は少数例であり,さらなる症例を蓄積したうえでの検討が今後必要であろう。 【結語】ミルタザピンは低用量で各苦痛症状の緩和をもたらす。
著者
小柳 浩子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.470, 2011 (Released:2012-02-13)

<はじめに>リンクナースは、臨床現場(以下現場)において、感染対策の実践モデルとなるとともに現場の現状を把握し問題提起を行うなどの感染対策を推進するうえで重要な役割がある。その役割を担うためには、感染対策の基礎知識の習得が不可欠であり、リンクナースへの教育は院内感染対策上重要である。当院では、リンクナースの感染対策の知識の習得は、自己学習など本人の努力に任せている。そのため、感染対策の知識に個人差がみられた。そこで、「感染対策の実践モデルとなる」、「現場の現状を把握し問題提起できる」を目指し、リンクナース育成教育(以下勉強会)を開始した。その試みを報告する。 <方法>1.月1回開催する看護部感染対策委員会の時間を活用し、15分間の勉強会を実施 2.講義内容は、感染対策の基礎知識が習得できるよう10回に系統だて構成 3.毎回の資料に前月の復習問題をつけ、講義前に解答する 4.10回の勉強会終了後、小テスト、アンケートを実施 <結果>勉強会は、委員会の時間を活用したことで、ほぼ全員参加。アンケートでは、全員が「リンクナースとして勉強会は役にたった」、「今後も勉強会を続けた方が良い」と回答。また、半数が、「勉強会の内容を部署のスタッフへ時々伝達していた」と回答しているが、「他のスタッフへの伝達が難しい」という意見もあった。事前に資料を配布していたが、予習や復習問題の取り組み率が低いことも明らかになった。 <結論>1.系統だてた教育により、感染対策の基礎知識が得られた。2.基礎知識を習得することで、リンクナースとしての責任感や役割を認識するきっかけになった。3.得た知識を実践に活かせるように継続的な教育と活動のサポートが必要である。以上のことが再確認できた。今後も、知識の向上を目指し勉強会を継続していきたいと考えている。
著者
古本 恭子 高原 真理子 荒木 耕生 植田 恵介 井手 義顕 山本 敬一 米丸 亮 高畑 武司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.40, 2011 (Released:2012-02-13)

マイコプラズマ肺炎は学童期に多い肺炎の一つで, マクロライド系抗生物質が第一選択とされてきた. しかし, 近年, マクロライド耐性肺炎の報告が増加している. その一方で, マクロライド感受性肺炎の流行期であるにも拘わらず, 治療に難渋する症例を経験することがある. 今回, 我々は, 臨床的に判断したクラリスロマイシン(CAM), ミノサイクリン(MINO)感受性マイコプラズマ肺炎患者において, CAM, MINO投与にも関わらず, 発熱が遷延した4例を報告する. 症例は, 平成22年12月から1月において当院に入院した6歳から11歳の肺炎4例である. 聴診所見, 胸部単純X線, 入院時のイムノカードおよび, ペア血清でのMp抗体価の上昇からMp肺炎と診断した. 4例中3例は入院前からCAM, MINO, アジスロマイシン(AZM)を内服していた. 発熱期間は, 入院前の内服期間を含めて, 7~8日間と遷延していた. これらの症例では, AST・LDH・フェリチンの高値から, 遷延する発熱の要因の一つに高サイトカイン血症の関与を考えて, メチルプレドニゾロン(mPSL)投与を3日間行なった. 全例でmPSL投与の12~24時間後より解熱傾向を認めた. 1例ではmPSL中止後に再発熱を認めたため, 再投与を行なったところ, 12時間後に解熱した. 発熱の遷延は, IL-2, 4, 12, 13, 18, IFN-γなどの炎症性サイトカインの臨床上の指標となる. マイコプラズマ肺炎において, 抗菌薬投与後も3~4日間解熱しない場合, 耐性マイコプラズマだけでなく, 高サイトカイン血症の関与を疑い早期のステロイド投与が望ましい.
著者
小島 順子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.62, 2011 (Released:2012-02-13)

多くの認知症患者が入院する当療養病棟では、毎日の食事、おやつを兼ねたレクレーション、個別リハビリ以外ではベッドに休んでいることが多く、刺激が少ない入院生活を送っているのが現実である。 今回、長谷川スケール1点の重度認知症患者A氏に対し、変化のない入院生活の中でも、居心地がよく、笑顔が見られることを目的とした絵本の読み聞かせを1日15分程度、間隔をあけることなく7回実施した。この読み聞かせを行なう事によって、A氏の表情や普段は聞かれない言葉、認知症になってしまったA氏自身の気持ちをうかがわせる言葉を聞くことが出来た。又、家族の中で娘さんしか認識できず、面会時のみ「おねえちゃん」と呼んで笑顔を見せていたA氏であったが、絵本の中の場面を繰り返し読み進めるうち、娘さんが絵本の中に出てくるような言葉が聞かれ、面会時だけでなく何かのきっかけを与えることにより、家族を思い出すことが出来、それを表現する能力が残っていることに気づいた。 この研究を通して、重度の認知症患者であり、単調で刺激の少ない入院生活であっても、本人にとって快適な環境に置いてあげることや、興味があることを繰り返し行なう事で良い結果が得られたので報告する。
著者
高野 慎也 平間 紀子 長島 敏代 須藤 礼子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.446, 2011 (Released:2012-02-13)

〈はじめに〉ナースコール(以下NCと略す)が頻回に鳴り、業務が進まないことがある。また、忙しい業務のためNCに十分対応できていない現状がある。その結果、患者が看護師に対して不信感・不満感を抱くケースは少なくないと考えられる。看護師がNCについてどのような認識をもち、使用しているかを明らかにするために研究に取り組んだので報告する。 〈研究方法〉期間:2010年7月~10月 対象:病棟看護師24名 データ収集法:選択・一部記述式のアンケート調査 内容1.NCの果たす役割 2.NCの考え方について データ分析法:アンケートは単純集計、自由記載はカテゴリー化した 倫理的側面の配慮:研究内容を説明、理解・同意を得た 〈結果〉回収率は100%であった。NCの果たす役割は、23名(96%)が患者や家族が看護師を呼ぶ手段であると回答した。「NCはコミュニケーションパターンの一つであるか」は「はい」11名(46%)、「いいえ」9名(37%)、「どちらでもない」4名(17%)。「NCは看護業務を効率良くするか」は「はい」14名(58%)、「いいえ」5名(21%)、「どちらでもない」5名(21%)。「NCは患者のニードを満たすか」は「はい」20名(83%)、「いいえ」1名(4%)、「どちらでもない」3名(13%)。「NCが無くてもニードを満たす看護はできるか」は「はい」7名(29%)、「いいえ」8名(33%)、「どちらでもない」9名(38%)。「NCを使用せずに行動できるか」は「はい」7名(29%)、「いいえ」10名(42%)、「どちらでもない」7名(29%)であった。 〈考察〉NC の役割について氏家は「コミュニケーションの一つ・患者と看護師の連絡手段・看護業務を効率良くするもの・患者のニードを満たすもの・用がある時に呼ぶもの」と述べている。 今回の調査でNCは患者が用事のある時に必要であり患者と看護師との連絡手段とは考えていないことが明らかになった。また患者が使用することでニードを満たすことができると捉えている。しかし、コミュニケーションとしては十分ではなく、直接関わることに意味があると考えられる。さらにNCが業務に与える影響は、必ずしも効率を良くするものではないと思われる。
著者
大塚 隆信
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2012-02-13)

日本においては平均寿命が延び,急速に高齢化社会が到来している。男性のほぼ5人に1人,女性の4人に1人が高齢者である。それにともなって介護を必要とする要支援・要介護者は約450万人と増えている。その原因として「関節疾患」「転倒・骨折」などの「運動器」の障害が20%を超えている。ロコモティブシンドロームという言葉は日本語で「運動器症候群」と訳され『ロコモ』という通称が使用されている。運動器の障害により日常生活での自立度が低下し,要介護の状態や要介護の危険のある状態をいう。これは運動器のことをロコモティブオルガン(locomotive organ)ということから派生している。またロコ モティブには「機関車」という意味もあり人生を機関車のようにアクティブに生きようという意味が込められている。 ロコモティブシンドロームの徴候・症状 関節や背部の痛み,関節や脊柱の変形,関節や脊椎の可動域制限,下肢・体幹の筋力低下,バランス能力の低下がポイントとしてあげられる。 日常生活でチェックすべき項目 1.家のやや重い仕事が困難である。 2.家の中でつまずいたり滑ったりする。 3.15分くらい続けて歩けない。 4.横断歩道を青信号で渡りきれない。 5.階段を上がるのに手すりが必要である。 6.片脚立ちで靴下がはけない。 7.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。 ロコモティブシンドロームの判定基準 1)開眼片脚起立時間:15秒未満 2)3m Timed up and go test:11秒以上 運動機能低下をきたす疾患 脊椎圧迫骨折及び各種脊柱変形(亀背,高度脊柱後弯・側弯),下肢の骨折(大腿骨頚部骨折など),骨粗鬆症,下肢の変形性関節症(股関節,膝関節など),脊柱管狭窄症,脊髄障害,神経・筋疾患,関節リウマチおよび各種関節炎,下肢切断,長期臥床後の運動器廃用,高頻度転倒者 予防と治療・ロコモーショントレイニング ロコモ対策の基本は運動器局所の治療と歩行機能の維持改善の2本立てである。 これらの項目の解説と運動機能低下をきたす主なる疾患(骨粗鬆症,下肢の変形性関節症,脊柱管狭窄症)の診断・治療などについて述べる。 参考文献: 日本整形外科学会編;ロコモティブシンドローム診療ガイド2010,文光堂
著者
榊原 香代子 村元 雅之 藤田 恭明 上原 恵子 金原 真紀 佐藤 由美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.331, 2011 (Released:2012-02-13)

症例は78歳男性。上行結腸癌、十二指腸浸潤に対し平成22年8月16日に結腸右半切除術、十二指腸合併切除術が施行されている。組織学的進行度が_III_bと進行していたため、FOLFIRIによる術後補助化学療法を継続中であった。嘔気嘔吐の副作用はなく食事摂取は良好に保たれていたが徐々に低アルブミン血症が進行し、ついに2.0g/dlとなり下肢浮腫を伴ったため平成23年1月11日に栄養介入目的で入院となった。投与カロリーは軟食1000cal、免疫強化経腸栄養剤750cal、PPNで210cal、脂肪乳剤200calに加え、L-グルタミン製剤2.7gを併用した。1月12日に測定した血清Zn値は17μg/dlと著明に低下しており、亜鉛欠乏症から蛋白合成不全を引き起こしていたと考え、Zn含有胃潰瘍治療剤の投与を1月18日から開始した。血清Zn値の上昇に伴い徐々に血清アルブミン値は上昇し、浮腫も消失して1月29日軽快退院となった。 今回我々は亜鉛欠乏症が原因と思われた低アルブミン血症の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
著者
沖田 英人 村元 雅之 藤田 恭明 上原 恵子 榊原 香代子 金原 真紀 佐藤 由美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.409, 2011 (Released:2012-02-13)

アルブミンとCRPの関係について<BR>知多厚生病院NST<BR>沖田英人・村元雅之・藤田恭明・上原恵子・榊原香代子・金原真紀・佐藤由美子<BR>褥瘡治療の大きな壁は誤嚥性肺炎である。感染症でCRPが増加する際にはアルブミン(以下Alb)も低値を示しやすく、一般には感染により増加したストレス係数の分だけ投与エネルギーを増量する。逆に近年は、AlbとCRPは負の相関にあり、CRPの増加する感染時には宿命的に内因性エネルギーが産生されているため、overfeedingにならないよう外因性エネルギー投与量は控えるべき、との意見がある。そこで我々は、スキンケア委員会(褥瘡委員会)とNSTで半年以上観察した重度褥瘡患者11名を対象にAlb、CRP、投与エネルギー量を検討し相関性を調査した。AlbとCRPの相関関係数はほぼ全例で負となり、うち負の相関が得られたのは1例で、その相関係数は-0.86であった。また投与エネルギー量との相関は、ほぼ全例でAlbよりも希薄であった。<BR>今回の調査では、予想していたほどはAlbとCRPの逆相関は得られなかったが、感染や浸襲時には骨格筋が崩壊して肝はCRPを作るためAlb合成がおろそかとなり、この時外因性にエネルギーを投与しても蛋白異化抑制できず、従って感染の消退までエネルギー量を控える、とする考え方は妥当であると思われた。