著者
柴原 弘明 戸倉 由美子 伊勢呂 哲也 惠谷 俊紀 池上 要介 神谷 浩行 橋本 良博 岩瀬 豊 植松 夏子 今井 絵理 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.514-517, 2012 (Released:2012-05-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【緒言】ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)で, 5-HT3受容体拮抗作用をもち, 嘔気を改善する先行研究が報告されている. 【症例】38歳, 女性. 遠隔転移を伴う進行腎がんに対し, スニチニブとオキシコドンを投与した. 経過中に出現した難治性嘔気・嘔吐に, ミルタザピン1.875 mg/日を開始した. 開始翌日に嘔吐は消失し, 2日目に3.75 mg/日へ増量したところ, 3日目には嘔気も消失した. 消化器症状でスニチニブとオキシコドンを中止することなく治療を続行できた. ミルタザピン15 mg/日の投与量では眠気が出現することがあるが, 今回の低用量投与で眠気はみられずに消化器症状の改善が得られた. 【結論】ミルタザピンの低用量投与は, スニチニブとオキシコドン併用時の難治性嘔気・嘔吐に対して, 有効な選択肢の1つであると考えられる.
著者
植松 夏子 柴原 弘明 今井 絵理 吉田 厚志 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.343, 2011 (Released:2012-02-13)

【背景】がん患者には様々な苦痛症状が出現する。原発部位や基礎疾患により投与できる薬剤が限られ、副作用により投与中止となる場合もみられる。また各症状に対し個々に薬剤を使用することは薬剤の相互作用や内服負担増の面で患者に苦痛を与えることもある。ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類されH1受容体拮抗作用、5-HT3拮抗作用を有するため、緩和医療領域では抗うつ作用以外の効果も期待されている。 【目的】がん緩和医療における苦痛症状へのミルタザピンの有用性を明らかにすること。 【対象と方法】2010年10月から2011年5月までに緩和ケア科でミルタザピンが処方された24例。自覚症状の変化を「著効(症状の消失)」「有効(症状の軽快)」「無効」「中止」の4段階に分けretrospectiveに評価した。なお当研究調査には十分な倫理的配慮を行った。 【結果】性別は男性11例 女性13例、原疾患は膵癌7例、胃癌5例、乳癌3例、胆管癌2例、大腸癌2例、肺癌1例、肝癌1例、前立腺癌1例、リンパ腫1例、GIST1例であった。ミルタザピンは不安・吐き気・食欲不振・掻痒感・疼痛・せん妄のいずれかまたは複数の症状がみられた患者に処方されていた。全24例のうち著効11例、有効6例、無効3例、中止4例で、中止理由は4例とも眠気であった。至適投与量は15mg 2例、7.5mg 9例、3.75mg 10例、1.875mg 3例であり、7.5mg以下の低用量投与が92%であった。 【考察】ミルタザピンはがん患者の苦痛症状に対し有効で、低用量で十分な効果がえられていた。本研究は少数例であり,さらなる症例を蓄積したうえでの検討が今後必要であろう。 【結語】ミルタザピンは低用量で各苦痛症状の緩和をもたらす。
著者
柴原 弘明 今井 絵理 植松 夏子 木下 早苗 眞野 香 山本 絢子 青山 昌広 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.104-108, 2011

症例は80歳台女性。肺癌の骨転移による疼痛に対し緩和ケアチームに依頼があった。オピオイド,ロキソプロフェンナトリウムに加えて,鎮痛補助薬としてガバペンチン,イフェンプロジル酒石酸塩投与の追加,さらにオピオイドの増量・変更を行なったが,疼痛の著明な改善はなかった。そこで,ガバペンチンをプレガバリンへスイッチしたところ,疼痛の著明な改善がみられた。プレガバリン内服以前は,疼痛が強いときには臥床していることが多かったが,プレガバリン内服以降は疼痛の改善が得られたため,元気に車いすを押して歩行する姿がみられ,日常生活の活動は改善し,笑顔が多くみられるようになった。ガバペンチンからプレガバリンへのスイッチは,癌性疼痛に対する鎮痛補助薬を考慮するにあたり有効な選択肢のひとつである。
著者
柴原 弘明 安藤 啓 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.507-510, 2013 (Released:2013-05-02)
参考文献数
22

【緒言】従来の一般的な内服や外用薬に対して治療抵抗性の皮膚掻痒感をもつがん患者では, 症状緩和に難渋する. 【症例】72歳, 女性. 肺がん膵転移に伴うがん性疼痛に対してオキシコドン徐放剤を投与し, また閉塞性黄疸に対して内視鏡的胆道ドレナージを行った. 皮膚掻痒感がみられたため, 外用薬・内服(ミルタザピンと漢方)の投与を行ったが改善しなかった. 難治性皮膚掻痒感と診断しプレガバリンを投与した. 低用量で開始後増量し, 投与3日目に改善効果がみられた. 最終的には皮膚掻痒感のNumerical Rating Scaleは投与前8/10から投与後0~1/10となり, 症状緩和が得られた. 【考察】プレガバリンが皮膚掻痒に有効であるという海外の先行研究がみられている. 自験例でも, プレガバリンにより難治性皮膚掻痒感の症状緩和を得ることができた. 【結論】プレガバリンは, 難治性皮膚掻痒感に対する有効な治療の選択肢の1つと考えられる.
著者
加藤 活大 西村 大作 佐野 博 片田 直幸 杉本 吉行 野場 広子 芳野 充比古 佐守 友康 三谷 幸生 武市 政之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1829-1836, 1990 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25

アルコール性肝障害271例の長期予後を検討した. 生命予後は肝硬変が最も悪かつた (10年生存率: 23.8%). とくに多飲酒を続けた肝硬変は消化管出血死が多いことを反映して, 予後不良であつた. 肝細胞癌発生は肝硬変にほぼ限られ, その5年発生率は16.3%であり, 禁酒群の方が高い発生率を示した. 多飲酒継続の非硬変66例には反復肝生検を行い, 平均4年弱の経過で肝硬変移行率は30.3%であつた. 以上より, 多飲酒継続はアルコール性肝障害を進展させ, 生命予後の悪化をもたらすといえる. 肝硬変のみの検討でも禁酒は生命予後を全体的に改善したが, 肝細胞癌発生の危険性も高めるので, 肝硬変に移行する前に禁酒に導くことが大切である.
著者
鈴木 和広 加藤 活大 西村 大作 鈴木 夏生 矢口 豊久 池内 政弘 神谷 泰隆 平松 武幸 水野 志朗 三宅 隆
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.275, 2006

<b><緒言></b> 愛知県厚生連では、傘下9病院の医局長が幹事となって、愛知県厚生連医師会が運営されている。毎年、幹事会で決定された活動テーマに沿って各病院から現状報告と問題提起がなされ、幹事会での議論を経て、医師会総会で幹事会活動報告としてその総括がされている。2003年度の活動テーマは「救急医療」と決定されたが、これは、今後ますます救急医療に対する地域からの要請が高まり、その重要性が増すであろうことから、各病院の現状を把握の上、病院間で情報を交換し、それぞれの救急体制の整備に役立てることが目的であった。<BR><b><方法></b> 各病院の幹事を通じて、2002年度の救急来院患者数、救急車搬入数、救急入院患者数などの統計および人員配置と教育体制に関してアンケート調査を行った。さらに、各病院が抱える問題点を列挙し、幹事会で報告の後、対策について議論を交わした。<BR> 救急来院患者数などの各統計量については、Mann-WhitneyのU検定を用いて解析を行った。<BR><b><結果></b> 9病院全体で、年間約16万名の救急患者を診療し、2万3千台以上の救急車を受け入れていた。施設数では県全体の3.6%に当たる病院群が、出動救急車の10%強に応需している計算となった。救急来院患者の7.4%が入院を必要としており、全入院患者の1.05%を占めていた。立地別に見ると、都市型に分類される病院群のほうが郡部型に分類されたそれらよりも、救急来院患者数、救急車搬入数および救急入院患者数が有意に多かった。配置人員については、診療時間内は多くの病院が各科での対応となっており、研修医を含めた医師および看護師が、救急外来に常駐している施設は少数であった。休日の日直体制での平均配置人数は医師が3.1名、看護師が3.2名であり、当直では、それぞれ3.1名と2.9名であった。教育については、定期的な講習会、講演会あるいは症例検討会が行われている施設は少数であった。問題点として、もっとも重視されたのは人員不足であり、医師、看護師のみならず、診療協助部門、事務部門の各部門でも、多数の救急患者への対応には職員数が十分でないとの指摘がされた。<BR><b><考察></b> 立地条件による差異はあるが、各病院ともその規模に応じた救急患者の受け入れを行っており、愛知県下の病院群のなかでも救急医療への寄与は大きいと考えられた。しかし、人的資源の不足および救急医療の質の確保が問題点としてあげられており、救急医療向上のためには、職員の啓蒙のみならず、厚生連の病院間あるいは地域の医療機関の間での取り組みが必要になると思われた。
著者
植松 夏子 柴原 弘明 岡本 妙子 木下 早苗 眞野 香 青山 昌広 西村 大作 伊藤 哲 吉田 厚志
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.764-769, 2012

直腸癌術後仙骨転移による坐骨神経痛に対し緩和ケアチームが介入した。娘の結婚式を控え,早急な疼痛緩和と,レスキューの人工肛門からの投与経路変更が必要であった。投与していたフェンタニル貼付剤25.2mg/72hrを16.8mg/72hrへ減量し,モルヒネ注射薬3.6mg/hrを新たに併用した部分的オピオイドローテーションと,患者自己調節鎮痛ポンプによる経静脈的経路へのレスキュー投与経路の変更により,患者は疼痛なく,家族も安心して結婚式に参加することができた。今回行なった部分的オピオイドローテーションは,①比較的短時間に行なえる,②異なるオピオイドを新たに加えるため鎮痛が期待できる,③オピオイド変更による副作用が全量オピオイドローテーションより少ない,といった利点がある。癌患者の疼痛緩和での薬剤調整は,患者と家族の視点で立案することが肝要である。
著者
柴原 弘明 世古口 英 竹下 祥敬 鈴木 伸吾 森本 美穂 稲熊 幸子 森 陽子 工藤 壽美代 太田 由美 西村 美佳 植松 夏子 今井 絵理 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.523-528, 2013 (Released:2013-06-29)
参考文献数
10

【緒言】フェンタニル貼付剤による色素沈着の報告は現在までにみられない. 【症例】43歳, 男性. 直腸がん術後再発に対して, セツキシマブ+イリノテカン療法後, パニツムマブ+FOLFIRI療法を施行した. がん疼痛に対して, フェンタニル貼付剤(フェントス®)投与し, 再発部位に後方からの放射線療法を行った. 経過中, 胸部と腹部のフェンタニル貼付剤の貼付部位に色素沈着がみられた. 貼付中止後, 4カ月でほぼ消失した. 【考察】色素沈着の機序として, フェンタニル貼付剤による接触皮膚炎後の炎症後色素沈着である可能性が高い. 正確な機序の解明のためには, パッチテスト・皮膚生検が望ましい. 【結論】フェンタニル貼付剤投与時には, 色素沈着に留意する必要がある.