- 著者
-
大塚 隆信
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- pp.5, 2011 (Released:2012-02-13)
日本においては平均寿命が延び,急速に高齢化社会が到来している。男性のほぼ5人に1人,女性の4人に1人が高齢者である。それにともなって介護を必要とする要支援・要介護者は約450万人と増えている。その原因として「関節疾患」「転倒・骨折」などの「運動器」の障害が20%を超えている。ロコモティブシンドロームという言葉は日本語で「運動器症候群」と訳され『ロコモ』という通称が使用されている。運動器の障害により日常生活での自立度が低下し,要介護の状態や要介護の危険のある状態をいう。これは運動器のことをロコモティブオルガン(locomotive organ)ということから派生している。またロコ
モティブには「機関車」という意味もあり人生を機関車のようにアクティブに生きようという意味が込められている。
ロコモティブシンドロームの徴候・症状
関節や背部の痛み,関節や脊柱の変形,関節や脊椎の可動域制限,下肢・体幹の筋力低下,バランス能力の低下がポイントとしてあげられる。
日常生活でチェックすべき項目
1.家のやや重い仕事が困難である。
2.家の中でつまずいたり滑ったりする。
3.15分くらい続けて歩けない。
4.横断歩道を青信号で渡りきれない。
5.階段を上がるのに手すりが必要である。
6.片脚立ちで靴下がはけない。
7.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。
ロコモティブシンドロームの判定基準
1)開眼片脚起立時間:15秒未満
2)3m Timed up and go test:11秒以上
運動機能低下をきたす疾患
脊椎圧迫骨折及び各種脊柱変形(亀背,高度脊柱後弯・側弯),下肢の骨折(大腿骨頚部骨折など),骨粗鬆症,下肢の変形性関節症(股関節,膝関節など),脊柱管狭窄症,脊髄障害,神経・筋疾患,関節リウマチおよび各種関節炎,下肢切断,長期臥床後の運動器廃用,高頻度転倒者
予防と治療・ロコモーショントレイニング
ロコモ対策の基本は運動器局所の治療と歩行機能の維持改善の2本立てである。
これらの項目の解説と運動機能低下をきたす主なる疾患(骨粗鬆症,下肢の変形性関節症,脊柱管狭窄症)の診断・治療などについて述べる。
参考文献:
日本整形外科学会編;ロコモティブシンドローム診療ガイド2010,文光堂