著者
大宮 秀明 佐々木 克典 西田 清作 松本 安広 林 久喜 坂井 直樹
出版者
筑波大学農林技術センター
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-8, 1999-03-31

本研究では、茨城県南部地域における青果用サツマイモの代表的な3品種、ベニアズマ、ベニコマチ、関東83号について、筑波大学農林技術センター圃場で栽培した1989年-1996年の収量データを解析すると共に、1997年度に要因実験を実施して、収量、品質に及ぼす挿苗時期および収穫時期の影響を明らかにした。生育日数140日での上いも収量はベニアズマが最も多く、ベニコマチと関東83号は同等であった。また、上いも収量および全収量は品種にかかわらず5月挿苗で多く、挿苗時期が遅れるに従い減少した。生育日数は全収量、屑いも収量および上いも収量のすべてに影響を及ぼし、上いも収量は品種にかかわらず180日以上で多く、161日以下で少なかった。以上の結果から、品種ごとの挿苗適期および収穫適期は、ベニコマチでは5月中~下旬の挿苗で9月下旬~10月下旬の収穫、関東83号では5月上・中旬の挿苗で11月上~中旬の収穫がそれぞれ望ましいと考えられた。一方、ベニアズマの場合は6月上・中旬の挿苗でも比較的高い収量が得られ、また、5月中旬に挿苗すれば9月中旬からの早期収穫が可能となることが明らかとなった。
著者
片桐 孝志 軽部 潔 菅原 慶子 福田 直也
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2000-03

茨城県が育成したイチゴ新品種'はやみのり'を供試材料にロックウール栽培を行い、'女峰'を標準品種として比較しながら、その生育および収量特性を調査し、養液栽培における適応性を検討した。両品種とも1997年9月18日に非循環型ロックウール栽培システムのスラブ上に定植した。定植後は大塚ハウス水耕用培養液A処方(EC=0.6~1.2dS/m)をかん液した。培養液はマイクロチューブにより与え、マイクロチューブの数により2段階の給液量を設定した。草勢は、気温の高くなる春期には、'はやみのり'が旺盛であった。ロックウール栽培法で'はやみのり'は、'女峰'と比較して開花、収穫開始が早く、早期収量、総収量、一果重ともに上回ったが、収量の時期別変動が大きかった。給液量を2倍にした場合、さらに開花、収穫開始は早まり、早期収量、総収量ともに上回ったものの、収穫の中休み現象を生じ、さらに収量の変動が大きくなった。また、'女峰'では見られなかった裂果が、給液量には関係なく多く発生した。以上の結果から、'はやみのり'は'女峰'と比較して、特に早期収量が多い点や、一果重が大きい点で、収益性からも有望な品種と思われる。しかし、収量に時期的な変動が見られ、'女峰'より安定性は見られなかった。また、給液量の増加により生育はより早まり、収量も増加したが、収穫の中休みが生じたことから、給液量の調節を十分に行う必要がある。さらに'はやみのり'には裂果の症状が多く見られ、品質的にも問題が残り、今後さらに、培養液管理、栽培方法などについて調査研究することが必要と思われる。
著者
樋口 篤志 近藤 昭彦 杉田 倫明 機志 新吉
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-32, 1999-03

水田は農業的な側面のみだけではなく、モンスーンアジアを代表する土地被覆という観点から、水文学的・気候気象学的側面でも重要な土地被覆である。また、リモートセンシング技術は非接触で地表面の状態を連続的にモニターできる唯一のツールである。本研究では水田の大気-陸面過程のより深い理解のために、地表面フラックスと分光反射特性の連続的な観測を行った。地表面フラックスはボーエン比熱収支法を用いて算出し、分光反射特性に関しては近赤外波長域まで撮影できるビデオカメラを用いて"面"的な観測を行った。結果は以下に要約される; 1)地表面フラックスは、日変化レベルでは成長期には有効エネルギーの多くを水体の貯熱量変化に使われ、成長後はそのほとんどが顕熱に消費されていた。 2)地表面フラックスの季節変化では、稲キャノビーの成長期に有効エネルギー(Qn=Rn-G:RnとGはそれぞれ正味放射、地中熱流量)中、顕熱(IE)に消費される割合(IE/Qn)に明確な上昇傾向がみられ、"Ageing effect"(植物体の成長期の違いによって気孔コンダクタンスが変化する)に伴う、植物生理学的な要因が影響していると考えられた。 3)分光反射特性の季節変化は、近赤外波長域のそれはアルベドのそれに類似し、赤色域は成長初期に減少、収穫期に増加傾向が認められた。植生指標の季節変化は稲の活性度を比較的反映していた。