著者
片桐 孝志 軽部 潔 菅原 慶子 福田 直也
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学農林技術センター研究報告 (ISSN:09153926)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2000-03

茨城県が育成したイチゴ新品種'はやみのり'を供試材料にロックウール栽培を行い、'女峰'を標準品種として比較しながら、その生育および収量特性を調査し、養液栽培における適応性を検討した。両品種とも1997年9月18日に非循環型ロックウール栽培システムのスラブ上に定植した。定植後は大塚ハウス水耕用培養液A処方(EC=0.6~1.2dS/m)をかん液した。培養液はマイクロチューブにより与え、マイクロチューブの数により2段階の給液量を設定した。草勢は、気温の高くなる春期には、'はやみのり'が旺盛であった。ロックウール栽培法で'はやみのり'は、'女峰'と比較して開花、収穫開始が早く、早期収量、総収量、一果重ともに上回ったが、収量の時期別変動が大きかった。給液量を2倍にした場合、さらに開花、収穫開始は早まり、早期収量、総収量ともに上回ったものの、収穫の中休み現象を生じ、さらに収量の変動が大きくなった。また、'女峰'では見られなかった裂果が、給液量には関係なく多く発生した。以上の結果から、'はやみのり'は'女峰'と比較して、特に早期収量が多い点や、一果重が大きい点で、収益性からも有望な品種と思われる。しかし、収量に時期的な変動が見られ、'女峰'より安定性は見られなかった。また、給液量の増加により生育はより早まり、収量も増加したが、収穫の中休みが生じたことから、給液量の調節を十分に行う必要がある。さらに'はやみのり'には裂果の症状が多く見られ、品質的にも問題が残り、今後さらに、培養液管理、栽培方法などについて調査研究することが必要と思われる。